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第1部-ファフニール王国・自由編-
018_動揺
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その翌日、さっそく王宮に呼び出されたリリアは、レオファルドの元を訪れていた。部屋に入ってすぐ、訝しげな視線を向けられてリリアは慌てて弁明した。
「一人で来たんじゃないよ。クロウと一緒」
「オズウェルはどうしたんだ?」
「忙しいみたい」
「そうか」
指で呼び寄せられ、小走りでいつもの定位置、ソファに腰かける。すぐさまレオファルドが隣に座ると、リリアの肩に手を回す。至近距離で顔を覗き込まれ、
「ちょっと!」
距離をとろうと、リリアが慌てて伸ばした手は難なく避けられた。その反応に楽しそうに笑い声を漏らしたレオファルドは、抱き着くような形で腕を回したまま、リリアの綺麗に整えられた髪を指先でもてあそぶ。
「昔はさんざんお前のほうから抱き着いてきてただろ。今更気にするなよ」
「だって! レオは王様なんだよ」
「まだそんなこと言ってんのか。忘れろ、そんなこと」
「無茶言わないでよ」
頬を膨らまし怒っているとアピールするリリアだが、雰囲気は普段通り柔らかいまま。
一通りからかってレオファルドも満足したのか、昨日あったことを話すように促し、養子の話になると考え込む仕草を見せてから満足そうに頷く。
「ハミルトン家の養子か。悪くない話だ」
「……これ以上、他の人を巻き込むなんて」
「使えるものは何でも使え。それに、貴族になっておけばいろいろと楽だぞ」
「楽……?」
「俺やオズウェルも口が出しやすいしな。お前もこのままオズウェルのところにいるなら、人脈も教養もあるにこしたことはない。」
「そうかもしれないけど……」
リリアは予想外のレオファルドの言葉に表情を曇らせて俯いた。自分の素性を受け止めたばかりだというのに、それ以上先を見据えた話に困惑を隠せない。
わかっていると唇を歪ませたレオファルド。髪に触れていた手を滑らせ顎に触れると、くいっと顔をあげさせた。
「貴族が嫌なら、妻になるか?」
思いがけないレオファルドの言葉に、息を飲んだ。滅多に見ることのない真剣な表情に気圧されたリリアは、目がそらせない。本気とも冗談ともつかないセリフに言葉をなくしていたリリア。浅い呼吸を繰り返してから、空気を誤魔化すように声を絞り出す。
「贅沢な話だね。妃だなんて」
「そうだろ? 今なら正妻が空いているぞ」
「馬鹿なこと言わないでよ」
軽いノックの音が響き、扉越しにクロウの声が響く。どうやら迎えに来たらしい。
その声にほっと救われた表情を浮かべたリリアに、残念そうなレオファルド。
「割と本気なんだがな」
「え?」
ぼそっとした言葉を聞き逃したリリアは咄嗟に聞き返すが、もうレオファルドの態度はいつものマイペースなものに戻っていた。
「なんでもない。ほら、さっさと帰れ」
「レオ!」
言葉の真意を確かめようとリリアはレオファルドを問い詰めるが、レオファルドはどこ吹く風と素知らぬ顔を崩さなかった。
憮然とした表情のまま屋敷に戻ったリリアは、ちょうど外出しようとしていたオズウェルと出会い、こんな時間からどこに行くのだろうと首を傾げるリリアに、オズウェルはちょうど良いと歩み寄った。
「お戻りですか」
「うん。オズウェル、どこに行くの?」
「所用がありまして。そういえば、ついにレオファルドに上奏文が届いたとかいう話を耳にしたのですが、お聞きになりましたか?」
「なんのこと?」
レオファルドとは政治の話はしなかった、と首を傾げてオズウェルを見上げる。
「レオファルドもそろそろいい年頃ですからね。妃か、もしくは側室を迎えるべきだという声が多いようです。てっきりリリア嬢には愚痴をこぼしたかと思ったのですが」
「特には……」
「意外ですね。お邪魔いたしました。食事は用意させておりますから先にどうぞ」
「うん。気をつけていってらっしゃい」
リリアは素直に見送ったものの、食事の手は止まりがちだった。心配そうに声をかけるアンにも、気の抜けた返事しか返せなかった。
ぼんやりと考え事をするリリア。
レオファルドも今年で19になる。今まで婚約者がいなかったのが不思議なくらいなものの、振る舞いから、これから先も特定の人はいないのだろうとなんとなくそう思っていた。そんなはずがないのに。いずれレオファルドも妻を娶る。側室だって必要になるだろう。それがだれであれ、リリアではない。リリアはその結論に達して、顔を曇らせた。
どうしてレオファルドはリリアに言わなかったのだろうか。その事実も胸の内を騒がせた。
「一人で来たんじゃないよ。クロウと一緒」
「オズウェルはどうしたんだ?」
「忙しいみたい」
「そうか」
指で呼び寄せられ、小走りでいつもの定位置、ソファに腰かける。すぐさまレオファルドが隣に座ると、リリアの肩に手を回す。至近距離で顔を覗き込まれ、
「ちょっと!」
距離をとろうと、リリアが慌てて伸ばした手は難なく避けられた。その反応に楽しそうに笑い声を漏らしたレオファルドは、抱き着くような形で腕を回したまま、リリアの綺麗に整えられた髪を指先でもてあそぶ。
「昔はさんざんお前のほうから抱き着いてきてただろ。今更気にするなよ」
「だって! レオは王様なんだよ」
「まだそんなこと言ってんのか。忘れろ、そんなこと」
「無茶言わないでよ」
頬を膨らまし怒っているとアピールするリリアだが、雰囲気は普段通り柔らかいまま。
一通りからかってレオファルドも満足したのか、昨日あったことを話すように促し、養子の話になると考え込む仕草を見せてから満足そうに頷く。
「ハミルトン家の養子か。悪くない話だ」
「……これ以上、他の人を巻き込むなんて」
「使えるものは何でも使え。それに、貴族になっておけばいろいろと楽だぞ」
「楽……?」
「俺やオズウェルも口が出しやすいしな。お前もこのままオズウェルのところにいるなら、人脈も教養もあるにこしたことはない。」
「そうかもしれないけど……」
リリアは予想外のレオファルドの言葉に表情を曇らせて俯いた。自分の素性を受け止めたばかりだというのに、それ以上先を見据えた話に困惑を隠せない。
わかっていると唇を歪ませたレオファルド。髪に触れていた手を滑らせ顎に触れると、くいっと顔をあげさせた。
「貴族が嫌なら、妻になるか?」
思いがけないレオファルドの言葉に、息を飲んだ。滅多に見ることのない真剣な表情に気圧されたリリアは、目がそらせない。本気とも冗談ともつかないセリフに言葉をなくしていたリリア。浅い呼吸を繰り返してから、空気を誤魔化すように声を絞り出す。
「贅沢な話だね。妃だなんて」
「そうだろ? 今なら正妻が空いているぞ」
「馬鹿なこと言わないでよ」
軽いノックの音が響き、扉越しにクロウの声が響く。どうやら迎えに来たらしい。
その声にほっと救われた表情を浮かべたリリアに、残念そうなレオファルド。
「割と本気なんだがな」
「え?」
ぼそっとした言葉を聞き逃したリリアは咄嗟に聞き返すが、もうレオファルドの態度はいつものマイペースなものに戻っていた。
「なんでもない。ほら、さっさと帰れ」
「レオ!」
言葉の真意を確かめようとリリアはレオファルドを問い詰めるが、レオファルドはどこ吹く風と素知らぬ顔を崩さなかった。
憮然とした表情のまま屋敷に戻ったリリアは、ちょうど外出しようとしていたオズウェルと出会い、こんな時間からどこに行くのだろうと首を傾げるリリアに、オズウェルはちょうど良いと歩み寄った。
「お戻りですか」
「うん。オズウェル、どこに行くの?」
「所用がありまして。そういえば、ついにレオファルドに上奏文が届いたとかいう話を耳にしたのですが、お聞きになりましたか?」
「なんのこと?」
レオファルドとは政治の話はしなかった、と首を傾げてオズウェルを見上げる。
「レオファルドもそろそろいい年頃ですからね。妃か、もしくは側室を迎えるべきだという声が多いようです。てっきりリリア嬢には愚痴をこぼしたかと思ったのですが」
「特には……」
「意外ですね。お邪魔いたしました。食事は用意させておりますから先にどうぞ」
「うん。気をつけていってらっしゃい」
リリアは素直に見送ったものの、食事の手は止まりがちだった。心配そうに声をかけるアンにも、気の抜けた返事しか返せなかった。
ぼんやりと考え事をするリリア。
レオファルドも今年で19になる。今まで婚約者がいなかったのが不思議なくらいなものの、振る舞いから、これから先も特定の人はいないのだろうとなんとなくそう思っていた。そんなはずがないのに。いずれレオファルドも妻を娶る。側室だって必要になるだろう。それがだれであれ、リリアではない。リリアはその結論に達して、顔を曇らせた。
どうしてレオファルドはリリアに言わなかったのだろうか。その事実も胸の内を騒がせた。
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