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第1部-ファフニール王国・自由編-
020_来客
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結婚の噂を知っているのか知らないのかオズウェルの態度は変わることなく、そのことが唯一周りがざわついた環境の中でのリリアの救いとなっていた。
そんなある日、また命を狙われることを警戒して自室で読書をしているリリアに来客があると、アンが不安そうに告げた。スウィフト家からの使い。聞けばバルトも一緒だという。なんの用だろうと訝しそうに首を傾げながら、言われるがままにリリアは着替えた。
「こちらのドレスをお召しくださいと、オズウェル様より言付かっております」
アンが用意したのは先日オズウェルが用意させたという、バーロンド家のカラーである白に銀糸で刺繍が施されたドレス。まるでリリアがバーロンド家の身内であるといわんばかりだった。
部屋の前まで行くと、オズウェルが待っており、手を差し出す。
「よろしいですか?」
「……うん」
「大丈夫。僕がついています」
手をしっかりと握りリリアの心の準備ができたことを確認して、オズウェルは扉を開いた。
「やあリリア。久しぶりだね! 会えてうれしいよ! また可愛くなったね」
部屋に入ると、来客用のソファにどっぷりと腰掛けているバルトが機嫌良さそうに声をかけてくる。ソファの側には先日、リリアを連れ戻しに来た執事が控えていた。この間、町でクロウに脅されたことなどなかったかのように、オズウェル、リリアに続いて部屋に入ってきたクロウを見てもその態度は変わる様子はない。
オズウェルの後ろに隠れるように部屋に入ったリリアが小さく挨拶を返す。
「……お久しぶりです。バルト様」
「さ、こっちにおいで!」
「いえ、あの……」
「リリア嬢はこちらへ」
膝に乗れと手招きするバルトを無視して、オズウェルはリリアの手を引いて向かい合うソファに座った。いつも無表情なオズウェルだが、まとう雰囲気が普段より硬い。
「さてと、何の御用ですか?」
「何を言ってるんだい君は。リリアは僕の婚約者なんだ。迎えに来て当然だろう?」
「リリア嬢はこちらでお預かりするとスウィフト公爵にはお伝えしております」
「僕も公爵も認めてないよ。ねぇリリア、恥ずかしがらないで僕のところに帰っておいでよ」
「……私は、ここにいたいのです」
バルトが気落ちした表情を見せる。その表情からは今まで何人もの妻を殺してきたようには見えない。
何も知らない人が見ればリリアのことを心底愛しているように見え、オズウェルは注意深く言動を見張っている。
バルトは俯いたまま少し黙ってから、気落ちした声を絞り出した。
「そんなに僕のことが嫌い?」
「いえ、その……」
「じゃあ、オズウェル・バーロンドのことが好きになった?」
「そうでは……」
「どうして? 僕はこんなに君のことを大事に思っているのに!」
「……申し訳ございません」
沈黙が落ちる。気まずい空気の中、身動ぎ一つできずに固まっていると、バルトが顔を上げた。先程までとはうって変わって穏やかな表情。
「わかった。リリアがほかの男にとられるのは癪だけど、可能性がないんじゃ仕方がない。僕がスウィフト公爵に口添えしてあげる」
「本当ですか?」
「うん。僕から婚約解消を申し込めば問題はないだろうし、このまま君がここに残れるようにともお願いしてあげる」
バルトのその言葉に隣に座っていた執事がもの言いたげに身を乗り出すが、バルトはそれを制止する。
「ありがとうございます。バルト様」
「やっと少し笑ってくれたね。ねぇ君、最後にリリアと二人っきりで話をしてもいいかな?」
オズウェル自身は断りたい様子だったが、ちらりとリリアの様子を伺う。不安そうなリリアだったが、しばらく悩んでから頷いた。
「本当に大丈夫ですか?」
「うん。無理をお願いするわけだから、それくらいは」
「なにかあったらすぐにお呼びくださいね」
オズウェルは立ち上がると、励ますように肩をぽんと叩き部屋を出る。執事とクロウもそれに習い、部屋には2人だけが残された。
そんなある日、また命を狙われることを警戒して自室で読書をしているリリアに来客があると、アンが不安そうに告げた。スウィフト家からの使い。聞けばバルトも一緒だという。なんの用だろうと訝しそうに首を傾げながら、言われるがままにリリアは着替えた。
「こちらのドレスをお召しくださいと、オズウェル様より言付かっております」
アンが用意したのは先日オズウェルが用意させたという、バーロンド家のカラーである白に銀糸で刺繍が施されたドレス。まるでリリアがバーロンド家の身内であるといわんばかりだった。
部屋の前まで行くと、オズウェルが待っており、手を差し出す。
「よろしいですか?」
「……うん」
「大丈夫。僕がついています」
手をしっかりと握りリリアの心の準備ができたことを確認して、オズウェルは扉を開いた。
「やあリリア。久しぶりだね! 会えてうれしいよ! また可愛くなったね」
部屋に入ると、来客用のソファにどっぷりと腰掛けているバルトが機嫌良さそうに声をかけてくる。ソファの側には先日、リリアを連れ戻しに来た執事が控えていた。この間、町でクロウに脅されたことなどなかったかのように、オズウェル、リリアに続いて部屋に入ってきたクロウを見てもその態度は変わる様子はない。
オズウェルの後ろに隠れるように部屋に入ったリリアが小さく挨拶を返す。
「……お久しぶりです。バルト様」
「さ、こっちにおいで!」
「いえ、あの……」
「リリア嬢はこちらへ」
膝に乗れと手招きするバルトを無視して、オズウェルはリリアの手を引いて向かい合うソファに座った。いつも無表情なオズウェルだが、まとう雰囲気が普段より硬い。
「さてと、何の御用ですか?」
「何を言ってるんだい君は。リリアは僕の婚約者なんだ。迎えに来て当然だろう?」
「リリア嬢はこちらでお預かりするとスウィフト公爵にはお伝えしております」
「僕も公爵も認めてないよ。ねぇリリア、恥ずかしがらないで僕のところに帰っておいでよ」
「……私は、ここにいたいのです」
バルトが気落ちした表情を見せる。その表情からは今まで何人もの妻を殺してきたようには見えない。
何も知らない人が見ればリリアのことを心底愛しているように見え、オズウェルは注意深く言動を見張っている。
バルトは俯いたまま少し黙ってから、気落ちした声を絞り出した。
「そんなに僕のことが嫌い?」
「いえ、その……」
「じゃあ、オズウェル・バーロンドのことが好きになった?」
「そうでは……」
「どうして? 僕はこんなに君のことを大事に思っているのに!」
「……申し訳ございません」
沈黙が落ちる。気まずい空気の中、身動ぎ一つできずに固まっていると、バルトが顔を上げた。先程までとはうって変わって穏やかな表情。
「わかった。リリアがほかの男にとられるのは癪だけど、可能性がないんじゃ仕方がない。僕がスウィフト公爵に口添えしてあげる」
「本当ですか?」
「うん。僕から婚約解消を申し込めば問題はないだろうし、このまま君がここに残れるようにともお願いしてあげる」
バルトのその言葉に隣に座っていた執事がもの言いたげに身を乗り出すが、バルトはそれを制止する。
「ありがとうございます。バルト様」
「やっと少し笑ってくれたね。ねぇ君、最後にリリアと二人っきりで話をしてもいいかな?」
オズウェル自身は断りたい様子だったが、ちらりとリリアの様子を伺う。不安そうなリリアだったが、しばらく悩んでから頷いた。
「本当に大丈夫ですか?」
「うん。無理をお願いするわけだから、それくらいは」
「なにかあったらすぐにお呼びくださいね」
オズウェルは立ち上がると、励ますように肩をぽんと叩き部屋を出る。執事とクロウもそれに習い、部屋には2人だけが残された。
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