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第2部-ファフニール王国・成長編-
034_不意打ち
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その後、レオファルドに呼ばれてもリリアが応じないことがあり、業を煮やしたレオファルドがオズウェルの屋敷を訪れた。
時刻は夕方、もう陽も落ちようとしている頃。呆れた表情でレオファルドを出迎えたオズウェルは、リリアの不在を告げる。
「どこいったんだ?」
「例の屋敷へ。今日は朝方でていきましたから、そろそろ戻るかと。せっかくですから待ってる間お茶でも」
「おう」
オズウェルの自室で、ゆっくりと過ごす二人。パチパチと暖炉の火が爆ぜる音の中、食器の当たる音だけが響く。
「今日はどうしたんですか?」
「どうもこうもねーよ。呼んでもちっとも来やしねぇ」
「それはあんな告白をするからです。随分と悩んでいましたよ」
「そりゃあな」
そうでなければ困る。とレオファルドは続けた。だが、オズウェルは呆れた表情を隠さない。
「避けられるのは予想外でしたか?」
「まぁな。悩むだろうと思っていたが、逃げるとは。帰ってきたらお仕置きだな」
「またそんなことを言って」
「お前は? お前もリリアのことは好きだろう? 伝えなくていいのか?」
真正面からの問いに、一度目を閉じた後、深く息を吐き出した。
「……ええ。あなたが先に目をつけた子です。僕はおとなしく順番を待つとしましょう」
「それでいいのか?」
「譲ったわけではありませんよ。まだ時期ではないだけです」
侍女がリリアの帰宅を告げ、二人は一度目を合わせてから、何事もなかったかのように紅茶を啜った。
来客を知らされていたのか、リリアは堅い表情でおずおずと部屋に入ってくる。入れ替わるようにオズウェルが立ち上がった。
「リリア嬢、レオファルドはあなたを訪ねてきたのです。相手をお任せします」
「待って、オズウェル!」
「予定がありますのでこれで」
追いすがる手をやんわりと退け、部屋を出ていく。残されたリリアは困ったようにレオファルドに声をかけた。
「レオ、久しぶりだね」
「おせーぞリリア。ほら、こっちこい」
膝の上に手招かれて、リリアは大きく首を振る。
「私、行かない」
「ダメだ。俺のところに来い」
「でも」
「散々俺からの誘いを断ったんだ。遊ばせろ」
それでも近づこうとしないリリアに業を煮やしたレオファルドは、立ち上がって腕を引っ張った。よろめいた体を受け止めて、そのままソファへと戻る。
「ちょっと!」
「まったく……手間のかかる奴だ」
「レオが好き勝手するから!」
「お前だって逃げ回ってただろ。ほら、大人しく座ってろ」
膝の上に座らせられた以外、何もされないと理解したリリアは、顔を真っ赤にしながらも暴れることはやめた。
とはいえ責めるような視線と頬をつつかれて不満そうに俯いている。
「んで、なんで呼んでも来ない?」
「……から」
「ん?」
「……だよ」
「聞こえねーなぁ」
十分に声は聞こえているはずなのに、レオファルドは楽しそうに尋ねる。何度か繰り返した後、リリアはぱっと顔をあげると、さっとオズウェルの耳元に口を近づけた。
「照れるから!」
「わかったわかった。大声で叫ぶな」
「レオが言わせたのに」
「俺が悪かったって。意識してたのか」
嬉しさを隠さないレオファルドに、リリアは頬を膨らませて顔をそむける。
「それは……なんとも思ってなかったら平気だったかもしれないけど」
「それは俺が困るが。ま、それが聞けただけで収穫だな」
拗ねるリリアに、満足したのだろう。リリアを膝の上から降ろす。
「それから、パーティーは必ず来いよ」
「パーティー、ってあの」
「話くらいは聞いてるだろ。俺の妃選びだ。着飾ってこい。じゃあな」
悪戯っぽく言い残して、部屋を出ていく。抗議の声をあげたい気持ちと、恥ずかしい気持ちでいっぱいで、その後ろ姿をただただ見送ることしかできなかった。
時刻は夕方、もう陽も落ちようとしている頃。呆れた表情でレオファルドを出迎えたオズウェルは、リリアの不在を告げる。
「どこいったんだ?」
「例の屋敷へ。今日は朝方でていきましたから、そろそろ戻るかと。せっかくですから待ってる間お茶でも」
「おう」
オズウェルの自室で、ゆっくりと過ごす二人。パチパチと暖炉の火が爆ぜる音の中、食器の当たる音だけが響く。
「今日はどうしたんですか?」
「どうもこうもねーよ。呼んでもちっとも来やしねぇ」
「それはあんな告白をするからです。随分と悩んでいましたよ」
「そりゃあな」
そうでなければ困る。とレオファルドは続けた。だが、オズウェルは呆れた表情を隠さない。
「避けられるのは予想外でしたか?」
「まぁな。悩むだろうと思っていたが、逃げるとは。帰ってきたらお仕置きだな」
「またそんなことを言って」
「お前は? お前もリリアのことは好きだろう? 伝えなくていいのか?」
真正面からの問いに、一度目を閉じた後、深く息を吐き出した。
「……ええ。あなたが先に目をつけた子です。僕はおとなしく順番を待つとしましょう」
「それでいいのか?」
「譲ったわけではありませんよ。まだ時期ではないだけです」
侍女がリリアの帰宅を告げ、二人は一度目を合わせてから、何事もなかったかのように紅茶を啜った。
来客を知らされていたのか、リリアは堅い表情でおずおずと部屋に入ってくる。入れ替わるようにオズウェルが立ち上がった。
「リリア嬢、レオファルドはあなたを訪ねてきたのです。相手をお任せします」
「待って、オズウェル!」
「予定がありますのでこれで」
追いすがる手をやんわりと退け、部屋を出ていく。残されたリリアは困ったようにレオファルドに声をかけた。
「レオ、久しぶりだね」
「おせーぞリリア。ほら、こっちこい」
膝の上に手招かれて、リリアは大きく首を振る。
「私、行かない」
「ダメだ。俺のところに来い」
「でも」
「散々俺からの誘いを断ったんだ。遊ばせろ」
それでも近づこうとしないリリアに業を煮やしたレオファルドは、立ち上がって腕を引っ張った。よろめいた体を受け止めて、そのままソファへと戻る。
「ちょっと!」
「まったく……手間のかかる奴だ」
「レオが好き勝手するから!」
「お前だって逃げ回ってただろ。ほら、大人しく座ってろ」
膝の上に座らせられた以外、何もされないと理解したリリアは、顔を真っ赤にしながらも暴れることはやめた。
とはいえ責めるような視線と頬をつつかれて不満そうに俯いている。
「んで、なんで呼んでも来ない?」
「……から」
「ん?」
「……だよ」
「聞こえねーなぁ」
十分に声は聞こえているはずなのに、レオファルドは楽しそうに尋ねる。何度か繰り返した後、リリアはぱっと顔をあげると、さっとオズウェルの耳元に口を近づけた。
「照れるから!」
「わかったわかった。大声で叫ぶな」
「レオが言わせたのに」
「俺が悪かったって。意識してたのか」
嬉しさを隠さないレオファルドに、リリアは頬を膨らませて顔をそむける。
「それは……なんとも思ってなかったら平気だったかもしれないけど」
「それは俺が困るが。ま、それが聞けただけで収穫だな」
拗ねるリリアに、満足したのだろう。リリアを膝の上から降ろす。
「それから、パーティーは必ず来いよ」
「パーティー、ってあの」
「話くらいは聞いてるだろ。俺の妃選びだ。着飾ってこい。じゃあな」
悪戯っぽく言い残して、部屋を出ていく。抗議の声をあげたい気持ちと、恥ずかしい気持ちでいっぱいで、その後ろ姿をただただ見送ることしかできなかった。
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