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24話
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石畳にも雑草や苔が至るところに生えており、遠目にはグレーや白というよりは緑に見える。所々に崩れたレンガや石柱などがあり、恐らくは今カジャックたちが歩いている辺りも建物の中だったのだろうと思わされた。だが今は完全に青い空が丸見えだ。
こんな所にジンは本当に何度も訪れていたのだろうか……。
教会らしきところを簡単に覗いてみた後にしばらく辺りを見て回っても分からなかったが、どんどんと街の奥へ進んで行くにつれて、少なくとも分かったことがカジャックにはあった。
……書物では読んでいたが……本当に魔物に襲われ衰退していった感じだな。
自然と衰退していったというよりは急激に衰えたという感じがするだけでなく、至るところに不自然な爪痕が残っていた。それも人間や道具でつけたものには見えない痕だ。
あと気づいたのは、この開墾集落跡地自体が無人になったのはずいぶん古いようだが、所々に誰かが足を踏み入れていた後があるということだ。無人になって少なくとも五十年、いやもしかしたら百年近くは経っているかもしれない。だが──
「カジャック、こっちにも若い木が」
サファルに言われ、カジャックは言われたところへ向かった。所々で見かける木と同じように、植えてから何十年と経っていないであろう木がある。
多分あちこちで咲いている花もそうなのかもしれない。自然に生えた雑草や苔と違って人工的な雰囲気がある。
カジャックは少し考えてからサファルを見た。
「……もう一度教会らしき場所へ戻ってもいいか?」
もしかしたら記録的な何かが教会に残っているかもしれない。それで何か分からないだろうかと思ったのだ。
「もちろん。あ、もしくは二手に別れましょうか? 俺はもう少しこのまま奥まで……」
「いや……魔物が出ないとも限らない。一緒にいろ」
「ぎょ、御意……!」
「……その返事はやめろ……」
相変わらずおかしなやつだなとカジャックは呆れたように、何故か赤くなって嬉しそうなサファルを見る。ただ、サファルの存在は呆れさせられつつもどこか癒されるものもあった。こんなどこか寂しさを覚えそうな跡地でもサファルがいるだけで明るささえ感じられる。それは凄いことだとカジャックは思っていた。男に対して生産的でない感情を抱くことはないが、サファルの気持ちが不快だとは思わないし、一緒にいて楽しいし癒される。
教会らしきところは先ほどもちらっとは見たが、中をくまなく探した訳ではなかった。所々瓦礫になっているため、安全な場所とも言いがたい。周りに気を配りつつ奥のほうまで進んだ。中々立派な作りだったと思われる。開墾集落とはいえ、かなり村、というより町として発達していたのではないだろうか。
二階へと上がる階段を見つけると、崩れる心配がないか先に上がって確認してからサファルにも上がってもらった。そして見つけた。
「ここは……図書館?」
サファルが珍しそうに辺りを見回している。二階の奥ばったところにある広い部屋にはあまり多くはないが本が鎖に繋がれた状態でまだちゃんと残っていた。カジャックよりも世間をよく見てきているであろうサファルでも図書館は珍しいようだ。
「今でも本や図書館は珍しいものなのか?」
「どうでしょう。俺があまり馴染みがないだけかもしれませんが……それでも本は沢山あるものではないですし、図書館なんて多分よほど大きな町や王国にしかないんじゃないかなぁ。俺の村にはないし、クラフォンの町にも多分ないですよ。俺も手に入るなら仕入れてみたいですけど」
それならこの開拓集落の図書館は当時もっと珍しかっただろう。本がこうして鎖に繋がれているのも、珍しい本が貴重なものだから盗難防止のための筈だ。
でも、とカジャックは自分の家を思い出す。サファルが本好きには見えないのもあり、案内したことはないが地下に部屋がある。そこにカジャックが今まで知識を蓄えてきた数多くの本が保管してあった。
小さな頃は本があるのが当たり前だと思っていたが、それらの本を読み進めるにつれ、普通はあまり手に入らないものだと知った。
あれらの本は、ここから持ってきたものなのだろうか。とはいえジンがわざわざ本を盗むためにここまで来るとは思えない。何かを盗むような人ではないからという感情論は抜きにしても、カジャックが知る限りではジンが本を読んでいるところは見たことがないし、どこぞへ売っている様子もなかった。
ひょっとしたらきちんと保管するためだろうか。温度も湿度も安定している地下の部屋は完全に本の部屋となっている。ジンが好きだった酒こそ、そこへ保管すればいいものを、酒の類いは他の保存食とともに台所のようなスペースにまとめて置いていた。
では逆に何故ここにある本はそのままなのか、とカジャックは鎖に繋がれた本を見ていく。
ほとんどがこの教会の記録や、完全に偏ったアポカリプスといった類いの内容だった。紙としての価値ならある。売ればそれなりの値段になるだろう。だが本としての価値はなさそうだった。
やはりジンはあえて持ち出したのかもしれないな……。
とはいえカジャックが知っている限りでは本を持ち帰っていたことはない。少なくともカジャックが一緒に住むようになった頃には既にあれらの本は地下室にあった。
更に本を調べていると、とある本に気になるものがあった。
「これは……」
こんな所にジンは本当に何度も訪れていたのだろうか……。
教会らしきところを簡単に覗いてみた後にしばらく辺りを見て回っても分からなかったが、どんどんと街の奥へ進んで行くにつれて、少なくとも分かったことがカジャックにはあった。
……書物では読んでいたが……本当に魔物に襲われ衰退していった感じだな。
自然と衰退していったというよりは急激に衰えたという感じがするだけでなく、至るところに不自然な爪痕が残っていた。それも人間や道具でつけたものには見えない痕だ。
あと気づいたのは、この開墾集落跡地自体が無人になったのはずいぶん古いようだが、所々に誰かが足を踏み入れていた後があるということだ。無人になって少なくとも五十年、いやもしかしたら百年近くは経っているかもしれない。だが──
「カジャック、こっちにも若い木が」
サファルに言われ、カジャックは言われたところへ向かった。所々で見かける木と同じように、植えてから何十年と経っていないであろう木がある。
多分あちこちで咲いている花もそうなのかもしれない。自然に生えた雑草や苔と違って人工的な雰囲気がある。
カジャックは少し考えてからサファルを見た。
「……もう一度教会らしき場所へ戻ってもいいか?」
もしかしたら記録的な何かが教会に残っているかもしれない。それで何か分からないだろうかと思ったのだ。
「もちろん。あ、もしくは二手に別れましょうか? 俺はもう少しこのまま奥まで……」
「いや……魔物が出ないとも限らない。一緒にいろ」
「ぎょ、御意……!」
「……その返事はやめろ……」
相変わらずおかしなやつだなとカジャックは呆れたように、何故か赤くなって嬉しそうなサファルを見る。ただ、サファルの存在は呆れさせられつつもどこか癒されるものもあった。こんなどこか寂しさを覚えそうな跡地でもサファルがいるだけで明るささえ感じられる。それは凄いことだとカジャックは思っていた。男に対して生産的でない感情を抱くことはないが、サファルの気持ちが不快だとは思わないし、一緒にいて楽しいし癒される。
教会らしきところは先ほどもちらっとは見たが、中をくまなく探した訳ではなかった。所々瓦礫になっているため、安全な場所とも言いがたい。周りに気を配りつつ奥のほうまで進んだ。中々立派な作りだったと思われる。開墾集落とはいえ、かなり村、というより町として発達していたのではないだろうか。
二階へと上がる階段を見つけると、崩れる心配がないか先に上がって確認してからサファルにも上がってもらった。そして見つけた。
「ここは……図書館?」
サファルが珍しそうに辺りを見回している。二階の奥ばったところにある広い部屋にはあまり多くはないが本が鎖に繋がれた状態でまだちゃんと残っていた。カジャックよりも世間をよく見てきているであろうサファルでも図書館は珍しいようだ。
「今でも本や図書館は珍しいものなのか?」
「どうでしょう。俺があまり馴染みがないだけかもしれませんが……それでも本は沢山あるものではないですし、図書館なんて多分よほど大きな町や王国にしかないんじゃないかなぁ。俺の村にはないし、クラフォンの町にも多分ないですよ。俺も手に入るなら仕入れてみたいですけど」
それならこの開拓集落の図書館は当時もっと珍しかっただろう。本がこうして鎖に繋がれているのも、珍しい本が貴重なものだから盗難防止のための筈だ。
でも、とカジャックは自分の家を思い出す。サファルが本好きには見えないのもあり、案内したことはないが地下に部屋がある。そこにカジャックが今まで知識を蓄えてきた数多くの本が保管してあった。
小さな頃は本があるのが当たり前だと思っていたが、それらの本を読み進めるにつれ、普通はあまり手に入らないものだと知った。
あれらの本は、ここから持ってきたものなのだろうか。とはいえジンがわざわざ本を盗むためにここまで来るとは思えない。何かを盗むような人ではないからという感情論は抜きにしても、カジャックが知る限りではジンが本を読んでいるところは見たことがないし、どこぞへ売っている様子もなかった。
ひょっとしたらきちんと保管するためだろうか。温度も湿度も安定している地下の部屋は完全に本の部屋となっている。ジンが好きだった酒こそ、そこへ保管すればいいものを、酒の類いは他の保存食とともに台所のようなスペースにまとめて置いていた。
では逆に何故ここにある本はそのままなのか、とカジャックは鎖に繋がれた本を見ていく。
ほとんどがこの教会の記録や、完全に偏ったアポカリプスといった類いの内容だった。紙としての価値ならある。売ればそれなりの値段になるだろう。だが本としての価値はなさそうだった。
やはりジンはあえて持ち出したのかもしれないな……。
とはいえカジャックが知っている限りでは本を持ち帰っていたことはない。少なくともカジャックが一緒に住むようになった頃には既にあれらの本は地下室にあった。
更に本を調べていると、とある本に気になるものがあった。
「これは……」
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