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114話
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「いや、もうほんと大丈夫ですので、ほんと……!」
いくら大好きでも、何でもない道中をカジャックに抱えられて移動するといった状況はサファルであっても遠慮願いたいと思った。ただでさえやらかした感しかなくて心が少々弱っているので尚更だ。
まさか潮を吹くといった羽目に自分がなるとは思いもよらなかった。
サファルが目を覚ましたのは既に朝だったのだが、カジャックがとても心配そうにしていた。ああ、久しぶりにしたからかなと思ったサファルが「大丈夫ですよ、腰も無事です」と笑うもカジャックは「だが……」と言いよどんでいた。
「カジャック? どうされました?」
「いや、お前がどうしたんだと俺は心配で……」
「え? 確かに久しぶりでしたけど……」
「なら前にもしたことはあるのか? そういうこともあるのか……?」
前にも何も、久しぶりとはいえセックスは何度もしているじゃないかとサファルは怪訝になる。何故そんなに心配そうなのだと思ったところで、昨夜のことがじわじわと脳内に浮かんできた。何度も何度も達した自分を思い出し、かっと体が熱くなる。だが次に思い出したことに比べたら大したことなどなかった。
……え、ちょっと待て俺。
思い出した記憶に間違いがなければ、やらかしてしまった。大いにやらかしてしまった。
何やらかしてんの俺……うわ……意味分からない……。
せめてカジャックの家でなかったことにほんの少し安堵するくらいしか、気持ちの救いようがない。顔がかなり熱くなるのを感じているとカジャックの手がふわりと頬に添えられた。
「カジャック……」
「本当に具合が悪い訳ではないんだな……?」
「はい、それはもちろん」
「なら、いいんだ……その、では……尿意があったなら行為中でも遠慮なく言ってくれ……」
「はい。……、……あーっ」
素直に頷いた後に、カジャックの勘違いにサファルは気づいて思わず叫んだ。カジャックが驚いてびくりとしている。
「ど、うした」
「あの! 俺、漏らしてませんからねっ?」
「え?」
怪訝な顔をされた。たしかにある意味盛大に漏らしたというのに今の言い方では記憶障害もいいところだ。
「あ、いや、漏らしたけど、漏らしたけど、漏らしてないんです!」
「サファル……とりあえず落ち着け……」
少々困惑気味のカジャックが優しく背中を撫でてくれた。サファルはすみません、と深呼吸をする。
「……はぁ。えっと、あの……、あれ、しっこじゃないんですよぉ……」
「そうなのか?」
やはり勘違いされていた。そこからどういうことだったのか説明するのにまた自分の羞恥心を根こそぎ自分で攻撃するような気分を味わった。その上「本当にそれは大丈夫なのか」と心配された挙げ句、抱き抱えて移動という羽目になるところだった。
「気持ちよすぎての……結果みたいなものなので……それに滅多にない、ことです、ので……どうか、その、流して……頂ければ……」
普段わりと明け透けにものは言うが、さすがのサファルにも恥ずかしいことくらい、それなりにある。
「分かった、すまなかった」
ただ、素直に謝られて少し居たたまれなさも味わった。カジャックは何も悪くない。サファルがやらかしたことだ。
「あ、謝るのも、なしで」
「……了解」
頷くとカジャックはサファルの頬、というか耳元にキスをしてきた。その後何もなかったかのように「今日はだいたいあの辺りまで進むか」などとずいぶん先の彼方を指差しながら歩き始めた。
サファルの顔がまた熱くなる。今度は羞恥ではなく、カジャックを思って鼓動が早くなってのことだ。
──この人ほんとカッコいいんだけど俺どうしたらいい?
それに今更気づいたが、サファルが尿を漏らしたと勘違いしていたカジャックは、そう思っていても意識を失くしたサファルを綺麗にしてくれたことになる。おまけに心配こそとてもしていたが、嫌悪を全く感じていなさそうだった。
こんなの……愛だよね? とっても愛じゃない?
「あの、カジャック」
歩き出したカジャックに追い付いてサファルが呼びかけるといつものように振り返ってきた。
「ん?」
「えっと、流してといいつつ、その……」
「うん?」
「……俺と……するの、嫌にならない、ですか?」
やらかした身なので少々聞き辛い。サファルが俯き加減で聞けば、だがそっと頭を撫でられた。
「なる訳がない。お前こそ、俺とするのが嫌にならないといいんだが」
「な、なる訳ないです!」
勢いよく頭を上げると目が合った。二人で静かに笑い合う。
先へと歩を進めながら、サファルはそっとカジャックを窺った。歩いている姿もやはり格好がいい。
理性を失うほどではないにしても、カジャック的に箍が外れた状態がああいった感じなのだとしたら、歓迎でもあり当惑でもある。何よりサファルの体も気も、もたない。
たまに……たまぁにだったら、悪くない、けどさ。
気持ちがよかったのは間違いない。だがむしろよすぎて死にそうな勢いだった。旅にはあまり向かない。
うーん、外ですんのは、やっぱり基本は諦める方向かなぁ。
内心苦笑していると「サファル、向こうに小型の獣がいた。捕らえておこう」と呼びかけられた。いつもと変わらない様子に「はい!」とサファルも元気よく返事をした。
いくら大好きでも、何でもない道中をカジャックに抱えられて移動するといった状況はサファルであっても遠慮願いたいと思った。ただでさえやらかした感しかなくて心が少々弱っているので尚更だ。
まさか潮を吹くといった羽目に自分がなるとは思いもよらなかった。
サファルが目を覚ましたのは既に朝だったのだが、カジャックがとても心配そうにしていた。ああ、久しぶりにしたからかなと思ったサファルが「大丈夫ですよ、腰も無事です」と笑うもカジャックは「だが……」と言いよどんでいた。
「カジャック? どうされました?」
「いや、お前がどうしたんだと俺は心配で……」
「え? 確かに久しぶりでしたけど……」
「なら前にもしたことはあるのか? そういうこともあるのか……?」
前にも何も、久しぶりとはいえセックスは何度もしているじゃないかとサファルは怪訝になる。何故そんなに心配そうなのだと思ったところで、昨夜のことがじわじわと脳内に浮かんできた。何度も何度も達した自分を思い出し、かっと体が熱くなる。だが次に思い出したことに比べたら大したことなどなかった。
……え、ちょっと待て俺。
思い出した記憶に間違いがなければ、やらかしてしまった。大いにやらかしてしまった。
何やらかしてんの俺……うわ……意味分からない……。
せめてカジャックの家でなかったことにほんの少し安堵するくらいしか、気持ちの救いようがない。顔がかなり熱くなるのを感じているとカジャックの手がふわりと頬に添えられた。
「カジャック……」
「本当に具合が悪い訳ではないんだな……?」
「はい、それはもちろん」
「なら、いいんだ……その、では……尿意があったなら行為中でも遠慮なく言ってくれ……」
「はい。……、……あーっ」
素直に頷いた後に、カジャックの勘違いにサファルは気づいて思わず叫んだ。カジャックが驚いてびくりとしている。
「ど、うした」
「あの! 俺、漏らしてませんからねっ?」
「え?」
怪訝な顔をされた。たしかにある意味盛大に漏らしたというのに今の言い方では記憶障害もいいところだ。
「あ、いや、漏らしたけど、漏らしたけど、漏らしてないんです!」
「サファル……とりあえず落ち着け……」
少々困惑気味のカジャックが優しく背中を撫でてくれた。サファルはすみません、と深呼吸をする。
「……はぁ。えっと、あの……、あれ、しっこじゃないんですよぉ……」
「そうなのか?」
やはり勘違いされていた。そこからどういうことだったのか説明するのにまた自分の羞恥心を根こそぎ自分で攻撃するような気分を味わった。その上「本当にそれは大丈夫なのか」と心配された挙げ句、抱き抱えて移動という羽目になるところだった。
「気持ちよすぎての……結果みたいなものなので……それに滅多にない、ことです、ので……どうか、その、流して……頂ければ……」
普段わりと明け透けにものは言うが、さすがのサファルにも恥ずかしいことくらい、それなりにある。
「分かった、すまなかった」
ただ、素直に謝られて少し居たたまれなさも味わった。カジャックは何も悪くない。サファルがやらかしたことだ。
「あ、謝るのも、なしで」
「……了解」
頷くとカジャックはサファルの頬、というか耳元にキスをしてきた。その後何もなかったかのように「今日はだいたいあの辺りまで進むか」などとずいぶん先の彼方を指差しながら歩き始めた。
サファルの顔がまた熱くなる。今度は羞恥ではなく、カジャックを思って鼓動が早くなってのことだ。
──この人ほんとカッコいいんだけど俺どうしたらいい?
それに今更気づいたが、サファルが尿を漏らしたと勘違いしていたカジャックは、そう思っていても意識を失くしたサファルを綺麗にしてくれたことになる。おまけに心配こそとてもしていたが、嫌悪を全く感じていなさそうだった。
こんなの……愛だよね? とっても愛じゃない?
「あの、カジャック」
歩き出したカジャックに追い付いてサファルが呼びかけるといつものように振り返ってきた。
「ん?」
「えっと、流してといいつつ、その……」
「うん?」
「……俺と……するの、嫌にならない、ですか?」
やらかした身なので少々聞き辛い。サファルが俯き加減で聞けば、だがそっと頭を撫でられた。
「なる訳がない。お前こそ、俺とするのが嫌にならないといいんだが」
「な、なる訳ないです!」
勢いよく頭を上げると目が合った。二人で静かに笑い合う。
先へと歩を進めながら、サファルはそっとカジャックを窺った。歩いている姿もやはり格好がいい。
理性を失うほどではないにしても、カジャック的に箍が外れた状態がああいった感じなのだとしたら、歓迎でもあり当惑でもある。何よりサファルの体も気も、もたない。
たまに……たまぁにだったら、悪くない、けどさ。
気持ちがよかったのは間違いない。だがむしろよすぎて死にそうな勢いだった。旅にはあまり向かない。
うーん、外ですんのは、やっぱり基本は諦める方向かなぁ。
内心苦笑していると「サファル、向こうに小型の獣がいた。捕らえておこう」と呼びかけられた。いつもと変わらない様子に「はい!」とサファルも元気よく返事をした。
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