花嫁は忘れたい

基本二度寝

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十三 仮面の男

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「契約を違えれば罰が下る。気をつけるんだよ」
「はい。ありえませんから」
「あと、契約の破棄には両者の…」
「契約破棄の方法の説明は構いません。するつもりがありません」

レイアは微笑んだ。
屋敷ではよく見かけている笑顔だった。
あの男が絡んだ事柄でレイアは笑顔になった試しはない。

「気分転換にこれはどうだい?」

レイアに仮面と舞踏会の招待状を渡す。
顔と身分を隠してなら、対等の立場でレイアを慰められるかもしれない。
疚しい気持ちは、…ほんの少しあったかもしれないがまだそこまでの想いはなかった。

だが、本業の仕事が押して、舞踏会に出遅れた。

まさか、あの男まで参加していて、レイアとあの男が愛し合うとは思いもよらなかった。

術師の姿の時に預かった契約書を、雇い主であるレイアの父親に報告と提出をして、温厚な主は静かに憤った。

「家の為と旦那様には言えなかったようで、」
「それを君は聞かされたのか。全く気が付かなかったが、一体娘とどういう仲なのかな」

とっさに答えられなかったのは、副業の事。
別に不義理になる事はしなかったけれど、なんと説明すべきか迷い、言い淀んだことで旦那様は「そうだったのか、わかった」と何かを察した。

「君は今まで、きちんと一線を引いて娘と接していた。君と娘から色恋の雰囲気を察することができなかった程だ。私は君を信用している。娘を任せられる」

いや、違うんですよ。旦那様。
そりゃ向こうはこちらに気づいてないから、ただの従者と令嬢の関係です。
元々無い色恋の雰囲気など出しようもない。
それに、仮面舞踏会の招待状を渡して、少し不埒な気持ちがあった輩なのですよ。

そんな事も説明できずに、旦那様は相手の男の実家に行くと言い出した。
自身も同行を求められ、舞踏会への参加が遅れた。
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