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一
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ミレーユは自分の為に用意された部屋にいた。
嫁ぎ先の使用人に花嫁衣装を脱がされ、身をきれいに清められた。
夫婦と認められた結婚式後の初夜にする仕事は、一つ。
ー…これは義務だから。
ミレーユの握りしめた拳が震えている。
恐れか、怒りか、喜びか。
自分の感情がわからなかった。
今日、夫となった男はミレーユを愛さない。
男は婚姻前にぬけぬけと言った。
『俺には愛する恋人がいるから君を愛せない。愛されても返せないから期待はしないで欲しい』
男の父親は誠実な男なのに、なぜこんな息子が育ったのか。
母親がいなかったから?
そんな事はない。
ミレーユだって片親だ。
父を侮られぬよう勉強に作法に励んだ。
お家のために、父の為に、貴族令嬢としてミレーユは伯爵令嬢として恥じぬようここまで来た。
部屋の扉を叩く音で、思考が止む。
貴族令嬢が嫁ぎ先で重要な仕事の一つ。
後継者を産む事。
ミレーユはその大任を果たさねばならぬ。
逃げることはできない。相手がどんな人間でも、その義務からは逃れられない。
ミレーユの返事を受けて扉が開く。
男の入室と入れ替わりに、侍女が部屋を出る。
侍女が出ていくのを目で追い確認した後、男はミレーユの側で膝をついた。
「…震えている。怖いか」
「わからない」
「出来るだけ早く終わらせる」
ミレーユは頭を振った。
男が眉を寄せる。幾ら嫌でも逃れられない。
媚薬を盛ってでもコトは成さねばならない。
「…早くなんて仰らずに。どうか朝まで」
潤んだ瞳でミレーユは男を見つめる。
薄く開けた唇を、男はじっと見ている。
自分で薄い夜着の肩紐をするりと落とすと、ごくりと男の唾を飲む音がした。
無垢なはず女は男に妖艶なものに見えた。
男は頭を振る。
「勘違いするな、これは」
「侯爵家の望みなのですから、義務からは逃れられない」
「義務、」
何故か男は傷付いた顔をした。
「そうでしょう?確実に孕みたいから、一度と言わず、朝までどうか」
跪いている男の首に腕を巻きつけたミレーユは、囁く。
「私に子を頂戴…?」
男の手をとって、ミレーユの腹に当てさせる。そこに、男の種を放てと強請るような甘い声に、痺れた男は獣になった。
嫁ぎ先の使用人に花嫁衣装を脱がされ、身をきれいに清められた。
夫婦と認められた結婚式後の初夜にする仕事は、一つ。
ー…これは義務だから。
ミレーユの握りしめた拳が震えている。
恐れか、怒りか、喜びか。
自分の感情がわからなかった。
今日、夫となった男はミレーユを愛さない。
男は婚姻前にぬけぬけと言った。
『俺には愛する恋人がいるから君を愛せない。愛されても返せないから期待はしないで欲しい』
男の父親は誠実な男なのに、なぜこんな息子が育ったのか。
母親がいなかったから?
そんな事はない。
ミレーユだって片親だ。
父を侮られぬよう勉強に作法に励んだ。
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部屋の扉を叩く音で、思考が止む。
貴族令嬢が嫁ぎ先で重要な仕事の一つ。
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逃げることはできない。相手がどんな人間でも、その義務からは逃れられない。
ミレーユの返事を受けて扉が開く。
男の入室と入れ替わりに、侍女が部屋を出る。
侍女が出ていくのを目で追い確認した後、男はミレーユの側で膝をついた。
「…震えている。怖いか」
「わからない」
「出来るだけ早く終わらせる」
ミレーユは頭を振った。
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媚薬を盛ってでもコトは成さねばならない。
「…早くなんて仰らずに。どうか朝まで」
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