契約破棄された聖女は帰りますけど

基本二度寝

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「…あの方が次期国王とは、大丈夫かしら」

「どうでも良いのではないですか?もう縁のない土地になりますし」

「辛辣ね。今後の私の仕事に差し障らない?」

「抜かりありません。エルディーナ様が去っても三年は結界は機能します。聖女不在でも結界を維持できるなんてエルディーナ様以外には…」

腹心の従者は生真面目に聖女の成果を上げ、いかにそれが素晴らしい技術かを語り始めると、エルディーナは困ったように笑った。


王太子が乗り込んできたときはどうなるかと思ったけれど、従者が彼を馬車から下ろした。

丁重に…とはいかなかったけれど。

地面に転がった王太子は、必死になって
「エルディーナ、君が好きだったんだ。もう一度婚約してほしい」
と叫んでいたけれど、聖女派遣契約の継続を望むだけの必死な声にしか聞こえなかった。

エルディーナは王太子と形だけ婚約者だったが、上辺だけでもそのような扱いを受けたことはない。
ほとんど居ない者の扱われていたのだ。
だからこそ、仮初の婚約だと知っていて、親睦を深める意味がないと思われていたのだと思っていたのだけれど。

ならばなぜ、婚約者としての振る舞いをしなかったのだろう。

「凡庸な王太子は、有能な聖女に対抗心が芽生えて拗らせていたんでしょうね」

「ゾイド?」

従者ゾイドは時々エルディーナの分からぬことを呟く。

「いえ、なんでも。
エル。聖国に帰国したら私と結婚しましょう。
なんの取り柄もない王太子の後ろ盾に聖国があると思わせたかった国王からの願いで、王太子の婚約者(仮)なんて憎々しい肩書を押し付けられましたが、既婚者であれば、次の派遣先ではこのそのような無理を言うバカも出ないでしょう?」

さらりと求婚の言葉を紛れ込まされ、理解が遅れた。

「…ゾイド、できればもっと…情緒が欲しかった」

「ふむ…勉強しますので次回に期待していてください」

「…次があるの…?」


祖国までの旅路の間に、ゾイドは何度か求婚のやり直し、エルディーナをひたすら困らせ、赤面させたのだった。
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