筆頭婚約者候補は「一抜け」を叫んでさっさと逃げ出した

基本二度寝

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「ああっ!ローレンシアっ!今頃どこにっ」

公爵は大きな手で顔を隠して、大げさに嘆いていた。

「だから昨日踏み込めばっ」

「心の整理をするため一人にして欲しい、と泣いていた娘の部屋を無遠慮にこじ開ければよかったと言うのですか!!婚約破棄と国外追放を命じたあなたの為に!?ふざけるなっ!」

「それはっ、理由があってのことで…!」

ローレンシアが去った後、王太子はすぐに公爵家に押しかけたが、会わせて欲しいという希望を遮られ「そっとして置いてほしい」と追い払われた。

婚約破棄も国外追放も嘘で冗談だったのだ、とそんな発言が許されるような雰囲気ではなく、王太子は一旦は引き下がった。

翌日に改めて腕いっぱいの花束を持参し出直したのだけれど、ローレンシアの部屋はもぬけの殻になっていたと公爵家では大騒ぎになっていた。

王太子はすぐに城の捜索隊を出動させたが、一日経った今もまだなんの情報もつかめなかった。

「部屋のものは…手付かずです。衣類も宝石も…」

ローレンシアの侍女が捜索隊に証言をしていた。

「攫われた可能性が高いようですね」
「攫われた…」

「または、自死を考えて」
「止めてくれ!彼女はそれほど弱い人間ではない!」

王太子は最悪の結末を想像したくはなかった。

公爵はずっと頭を抱えて伏せている。
娘の名前を時々呼ぶ、その弱々しい声が王太子の罪悪感を刺激した。

「公爵令嬢の目撃情報が一切ありませんね…これは大きな組織の犯罪の可能生も」

「…闇市の確認を急ぎます」

公爵には聞こえぬように、捜索隊長は王太子に告げた。
奴隷制度は廃止しているとはいえ、それでも闇での取引はある。
見目の良い平民が攫われて売られることなどよくあるのだ。

「くそっ…ローレンシア…無事で」

相手の気持ちを確かめたいなどど思うのではなかった。
側近たちの言うように、結婚後に時間を掛ければいつかは好意を抱いてくれたかもしれないのに。

後悔は何時だって先には立たない。

過去に過ちを犯した事を忘れたことはなかったのに。

男爵令嬢は捕らえられた。
彼女も良かれと思ってやったことは王太子にはわかっている。
それでも無罪放免にはならない。

すべて、王太子のせいだった。
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