セジアス 魔物の惑星

根鳥 泰造

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魔物外交編

さよならアテーナ

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 青龍神は二本の足で、すっくと立ち上ったものの、片方の羽が穴だらけになり、ボロボロとなっている。これならもう空も飛べない筈だ。
 だが、その背中に、傷は見られない。電磁気砲は内臓も粉砕するので、中味がどうなっているかは不明だが、少なくとも体表面は無傷。
 とんでもなく頑丈な身体をしている。

【よくも、吾の美しき翼を穴だらけにしおって】
 次の瞬間、その姿が消え、ヘリオスの横に、その姿を現す。
 やはり、さっきのは見間違いではなく、彼女は瞬間移動まで使える。
 現れた青龍神は、両手の指を組んで腕を振り上げた状態。そのままその拳をヘリオスに振り下ろした。
 ヘリオスも緊急退避を計ったものの、間に合わず、ドンと言う大きな音がして、ヘリオスが落下していく。
 それでも、墜落直前に何とか体勢を立て直す。
 だが、青龍神は再びその位置に瞬間移動し、ヘリオスを踏みつけた。
 ヘリオスは撃墜され、地面にその腹を擦りつける。それでも推進機能に問題いは無い様子で、なんとか浮上を始める。そして、最大加速で上空に舞い上がって消えて行った。

【逃がすか】
 上空を見上げ羽ばたき始める青龍神。あのボロボロの翼でもゆっくりと身体が浮いて行く。
 たが、そんな青龍神の後頭部に、レーザー砲が直撃した。あの時にやられたと思っていたが、偵察機はなんとかまだ戦える状態だったみたいだ。
 前のめりに倒れた青龍神の毛が燃えている。
 彼女は、それを慌てて叩いて消すと、ダメージはさほどないのか、ゆっくりと立ち上がった。

 偵察機はそんな青龍神の周りを、音速で不規則に飛び回り、広角ドラゴンブレスを吐かれても逃げられるようにして、次の攻撃チャンスを狙っている。
 お蔭で、こっちはバン、バンと音速突破の衝撃音で煩くてかなわない。

【また蠅か。先にこっちを叩き潰すか】
 そして、姿を消したと思ったら、偵察艇を掴んだ状態で現れた。
 あの超音速で動き回る偵察艇を捕まえただなんて、信じられないが、それは事実。
 そして、今度は慎重に周囲を見回しながら、両手で偵察艇を持ち直して、口に光が集めてだす。
【キャプテン、もはやここまでです。自爆の許可をお願いします】
「わかった。お前に任せる」
 次の瞬間、大閃光と共に、偵察艇は木端微塵に吹き飛んだ。

【ううっ、目が、童の目が】
 見ると破片が、青龍神の右目に突き刺さり、血を流していた。
【まさか、童が此処までダメージを受けるとは……】

【キャプテン、中性子砲の使用許可をお願いします】
 中性子砲はヘリオスの最強兵器だが、それは真空状態でのこと。大気があるとその空気分子と中性子とが衝突し、エネルギーが散逸してしまう。
「ここは宇宙空間じゃないんだぞ」
【至近距離なら問題ありません。あの時間停止は厄介です】
「そういうことか、神の持つ時を止める能力を使っていたのか」
 時間停止という意味が理解できなかったが、ガスパには理解できたらしい。
「どいうことだ?」
「あの瞬間移動だよ。高速移動中でも、的確に其処に現れるだろう。あれは瞬間移動じゃ無理だ。時を止めて、そこに移動しているんだ」
「ばかな。時を止めるなんて、科学の常識から外れている」
「物体転送だって、科学で不可能と結論がでている。でも瞬間移動してるだろう。この世界は神もいるし、ここは非科学的な世界なんだよ」
「しかし……」 ケビンはまだ納得できないらしい。
「玄武神もやはり時を止めてたんだ。神は時を止められるんだよ」
「アテーナも言うんだから、時間停止かもしれれないが、なんで攻撃の直前に姿を現すんだ? 時間を止めたまま攻撃すればいいじゃないか」
「停止された時間の中では、物質は完全停止した破壊不可能な無敵状態になるんだ。だから、そんな状態で攻撃したら。最初の空手チョップの二の舞だ。だから、攻撃を当てる直前に姿を現すんだ」
【ガスパールさんの説明の通りです。口にエネルギーを貯めるのも必ず普通の状態にて行います。それらから総合的に判断し、神は時間を停止できると判断しました。それより、中性子砲の使用許可をお願いします】
「分った。全てをお前に任せる」
【有難う御座います。それともう一つお願いなんですが、通信コネクタを装着頂けませんか?】
「構わないが、今は必要ないだろう」
【お願いします。最後の瞬間に、キャプテンがどんな風に考えるのか知りたいんです】
「まさか、自爆する気じゃないだろうな。それだけは許さんぞ」
【勿論、最善は尽し、自爆しないで済む様にします。ですが、相手は神ですので……】
 そして、上空からヘリオスが物凄い速度で現れ、青龍神にの後頭部に体当たりした。
 不意を突かれて、瞬間移動する間もなく、青龍神はドンという激しい爆音とともに、吹っ飛んだ。
 流石の神も、神風特攻の前に失神し、ピクリとも動かなくなる。そして、壊れてむき出しになった前方部にて、主砲が不気味に光り始める。いよいよ中性子砲を放つらしい。
 ヘリオスはいつでも緊急退避できるように注意しながら、ゆっくりと青龍神に近づいてく。
 だが、次の瞬間、気絶していた筈の青龍神が消え、ヘリオスをガッチリと側面から抱きつくように、捕まえていた。
【今の体当たりは見事じゃった。童も流石に堪えたぞ。だが、今度こそ最後じゃ】
 そして口にエネルギーを貯め始めた。
 ヘリオスはそのまま緊急回避に入り、上昇しながら電磁投射砲を放った。今度は直撃して、大爆発を起こす。
「ぐおおっ」
 ここからではよく確認できないが、青龍神の腹に巨大な穴が空いている様にも見える。
 それでも、青龍神はヘリオスを放さない。
 その後、ヘリオスは急停止や急旋回して、何とか振り落とそうと試みるが、それでも必死に捕まえたまま。
 そして、次の瞬間、青龍神はヘリオスにブレスを吐いた。
 ヘリオスは推進力を失い、青龍神と共に落下してくる。
 地面に激突する直前に、青龍神は羽ばたいてヘリオスから離れた。
 ドーンと言う墜落音とともに土煙が上がる。そして煙の中から、真っ二つに割れたヘリオスがその姿を現した。割れた辺りはどろどろに溶けて融解している。

【童にここまでのダメージを与えたこと、見事である。意志ある船よ。そちの名を聞いておこう】
 青龍神はボロボロの翼でゆっくりと地面に降り立った。その身体には、穴は開いてはいなかったが、脇腹を抉り取らる大怪我をしていた。
【アテーナと申すか。そちの名、忘れぬぞ。とどめを刺してやろう】
 そう言って、ゆっくりと重傷の身体で近づきながら、口に光を集め始めた。

【御免なさい。ジー、やはり神には勝てませんでした。ジージー、モロウキャプテン、セシルさん、ガスバールさん、ケヴィンさん、ギグさん、ジー、一緒に旅が出来て、私は本当に幸せでした。ジージー】
「アテーナ馬鹿な真似はするな。まだ助かる。何とか直すから」
【近寄らないで下さい。ジー、危険です。ジージー、自爆はしません。ジー、まだ諦めていませんから。ジー、砲身の前に立つその瞬間を、ジー、ずっと待っているのですから】
 だが、青龍神はヘリオスの前側には行かず、大破した部位の真上から、ドラゴンブレスを吹きつけた。
 ヘリオスがどろどろに溶けて変形していく。
「アテーナ~」
 だが、幸運にも機体が反り返ったことで、主砲の砲身が、青龍神の方を向いた。
 その瞬間、中性子ビームが放たれる。
 そして見事の青龍神の左胸を穿った。左腕も千切れ、こっちの方に吹っ飛んできた。
「グオ~ッ」
 青龍神は大声を上げると、そのままバタンと後ろに倒れた。
 そして絶命したのか、塵に成る様にして少しずつ消えて行った

【ジーバチ、ジー、皆さん、ジーバチバチ、有難う御座いました。ツー……」
「アテーナぁ~っ」
「アテーナさん」
 皆が、崩れ落ちる様に膝をつく。

 反抗的で俺を見下し、恥まで掻かせる最低なAIではあったが、本当は大好きだった。
 今回もお前が居なければ、全員捕まっていたし、絶対に敵わないと思った神とですら、相打ちの戦いまでしてくれた。幾ら感謝しても感謝しきれない。
 俺の方こそ、お前と一緒に旅ができて、幸せだったよ。

 
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