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第二章 勇者一行としての旅
賢者ローラの幸せ
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医師としての十日間も、あっという間に過ぎ、アーロン、フレイア、ローラの三人も戻って来た。
その日の夜は、最後の往診にユリと二人で出かけ、深夜にホテルに戻ると、管理局からの伝言が届いていた。
出発前に、管理局に顔をだしてほしいという伝言だった。
その時は、忘れ物でもしてきたかなと、思ったが嫌な予感もして、朝食後、ユリも誘ったが、断られ仕方なく僕一人で行くと、嫌な予感は的中していた。
「勇者ユウスケ様、ありがとうございました。魔王討伐、頑張ってください」と横断幕が出ていて、知事は仕事で抜けられなかったと、代理で感謝のメッセージをもらい、市長が握手をもとめてきて、花束までもらい、スピーチまでさせられた。
一応、予想して、昨晩、スピーチの内容まで考えていたが、ユリは、やはり僕の事を勇者に仕立てていたのだ。
その後も、僕を手伝ってくれた管理局職員に感謝され、「魔王討伐、頑張ってください」と皆から言われた。
そして、送迎車として、大型リムジンまで手配していてくれ、途中、ホテルでユリ達四人を拾って、S級ダンジョンにむかうことになった。
「また、僕を勇者にしただろう」
「実際に私と一緒に召喚された勇者でしょう。それに今回の働きは勇者そのものだもの」
「そうそう、お前にしかできない仕事をきっちりとこなした。自慢していい」
「伝染病の蔓延防止も偉業」
「外科手術もして助けたんだってね。マシュウスではできない医師としての仕事もして、本当にすごいよ」
皆から、褒められて、悪い気はしなかった。
管理局が準備してくれた豪華な弁当をリムジンの中で食べ、昼過ぎには、ダンジョンに到着した。
既に攻略済みで、国防軍の精鋭たちも、魔界ゲート前で待機しているとのことで、今回はトラップ訓練も、魔水晶集めも、薬草集めもせず、さっさとダンジョン内を進み、その日のうちに、ローラント隊長たちと合流を果たした。
「随分、少ないみたいだけど、どうしたの」ユリがローラントに尋ねた。
五十人程いたはずだが、五十階層の魔界ゲート前には、三十九人しかいなかった。
「魔界の様子を確認に、斥候を送ったのですが、なぜか第三班以外は音信不通になっていて」
「私が到着するまで、待機を命じたわよね。何で勝手に、斥候なんて送ったの」ユリの口調がきつくなった。
「申し訳ありません。ですが、攻略して一月近く経過しておりますので、その後の情報収集は必要になると判断しました」
「私たちの為にとしてくれたのに、言い過ぎた。御免なさい。でも、音信不通ってどういうこと。魔人の軍勢と交戦になったら、通信魔道具で連絡いれるはずよね。通信する暇もない程に、瞬殺されたってこと?」
「私にはわかりかねます」
「ぺセププが相手なら、考えられなくもない」
「それはないわ。彼は最終砦を離れたりしないはずだもの」
「いや、その所為で、最終砦にまで攻め込めたと考えて、先手を打って出た可能性はある」
「ぺセププが率いる軍団となると、厄介ね」
「下手に動くと、事態が悪くなる一方。今日は休んで、明日、皆で捜索に向かうのがいい」
フレイアの意見に従う事にし、今日はここで休息をとり、明朝、魔界に乗り込むことに決まった。
最終砦の番人が、持ち場を離れて、勝手にゲート付近まで来るとは思えないが、四天王ぺセププでないにしろ、精鋭隊五人を瞬殺できるほどの何かが待ち受けている可能性は高い。
勇者一行の強さなら、最終砦攻略も可能だと信じているが、この先は何が起きるか分からない。いざという時の準備はしておきたい。
そんな不安から、その夜、賢者のローラに、尋ねることにした。
「この世界には、空間移動魔法は存在しないの?」
「あるわよ。でも、そんな魔法よくしってるのね。魔法には無関心だと思ってたから意外」
「いや、僕のいた世界のアニメでは、定番の魔法だから」
「へぇ、ユリからは聞いたことが無かったけど、あなたのいた世界は、空想力豊かなんだね。私たちの世界の古代魔法に、空間転移術式というのがあって、ある魔法陣を描いた空間同志を繋いで瞬間移動できる魔法はある。実際前回は、それで逃げ帰ったんだけどね。でも、試してないけど、最終砦の魔法陣は壊されているとおもう。だから、いきなり、最終砦に飛ぶことはできないの」
既に砦を攻略済みであっても、一か月間も砦を放置していれば、再び魔人が砦に控えている可能性は高い。そんなことすれば、挟撃されるので、もう一度、第一砦から確認しつつ、前線を引き上げていくのは戦術の基礎だ。
魔法は天才でも、戦術は素人だなと思ったが、同じ轍は踏みたくないので、もう馬鹿にはしない。
「そういう意味じゃなく、殺されそうになった時、どうやって、逃げるのかなと考えて、聞いてみただけ。ちゃんと、その魔法で逃げたんだと聞いて、助言不要だったと思ったから。ありがとう。おやすみなさい」
「ユウスケも、皆に気をつかって、アドバイスしてくれるんだね。ありがとう」
「僕は、皆みたいに優秀じゃないから、僕にできることをしているだけさ」
「ユリがあなたを買ってる理由が、漸く分かった。無能でも、自分でできる範囲で必死に頑張るからなんだね。私、ユリに怒らたことがあるの。私って、天才でしょう。だから……」
無能と言われカチンときて、自分で天才と言うなと言いたかったが、彼女もその才能に苦しんでいた。
ローラは、自分の過去を僕に話始めた。
彼女は若干十四歳で魔法大学に入学し、そこでも飛び級して主席で卒業した天才魔女だったらしい。どんなに複雑な魔法も簡単に使いこなし、なんでもできてしまうので、人生そのものがつまらなかった。なにか生きていてよかったと実感できるような刺激が欲しかった。
その欲求を上手く使って、彼女の魔法を悪用しようとする悪い輩も現れる。
魔法は優れていても、人生経験のない十六歳の小娘。楽しそうな話に騙されて、悪に手を貸し、指名手配されることになったのだとか。
投獄され、騙されたと知り、どんなに非道な事に手を貸してしまったのかを知らされ、自分自身が許せなかった。今後、一切魔法を使わずに生きようと考えたほど。
でも、実際には魔法を使えない魔女なんて、刀身のない剣のようなもの。これからどうやって生きて行こうと考えていると、魔法大学の計らいで釈放されることになり、講師の話を持ち掛けてくれた。
魔法を教えて、優秀な魔法士を育成するというやりがいのある仕事。
それからは、講師として魔法を教え、沢山の優秀な魔法士を育てた。でも、五年も経つと、そんな生活もつまらないと思い始める。やはり魔法を使って世のために役立ちたい。そんなことを考えるようになったのだそう。
そんな時、学長から、勇者の家庭教師の仕事を命じられた。勇者に魔法を教えるというつまらない仕事だが、仕方なく引き受けた。
実際、僕もユリも、魔法の才能はなく、教え甲斐は感じられない。言われた通りの指導はしたが、こんな仕事はさっさと終わらせたかったのだとか。
でも、ユリが友達の様に、「この仕事、つまらないんでしょう」と話しかけてきた。
「仕事ですから、つまらなくてもしなければなりません」
「そんなのおかしいよ。仕事とは楽しんですること。つまらない仕事でも、なにか楽しみを見つけて、それをたのしむ様にしないと。そんな才能があるんだから、人を喜ばせるなんてどうかな。先ずは、私を喜ばせてよ。仕事を、人生を楽しもうよ」
そして、その時に彼女が言ってきたのが、フルーツパフェをだせるとか、こんなボルタリング施設は作れるとか、極簡単なユリらしい要求だった。
そして、実際に魔法でだすと、勇者ユリは、大喜びして、はしゃぎまわった。
そんな簡単な馬鹿らしい魔法でも、こんなに人を喜ばせられるんだと、その時気づき、ユリの事が大好きになった。
それからは、ユリに喜んでもらおうと、今までは役に立たないと切り捨てていた様なつまらない魔法でも、ユリが喜びそうな魔法なら、噂を耳にすると、どんなところにも飛んでいき、習得して、彼女に見せるようになった。
スライムをペットにする魔法があると聞けば、辺鄙な村にまで、態々足を運んで、その魔法を教えてもらった。
お花畑を作る魔法とか、手品の様な魔法とか、習得しても役に立たない魔法でも、ユリに披露すると、大喜びしてくれるので、その喜ぶ顔を見たくて、情報収集につとめ、辺境の地に足を運ぶ様になった。
ユリから、勇者一行の一員として修業の旅に誘われた時は、勿論、二つ返事で了承した。自分の魔法が、勇者ユリの役に立てると、大喜びした。
でも、実際にダンジョンに潜ると、魔力無効化スキルを持つ階層ボスが結構いた。初めてその魔物に出会った時は、恐怖から一目散にその場を逃げ出してしまったのだとか。
そんな情けないローラに、ユリは「仲間をおいて、逃げ出すなんて最低」と激怒した。
「天才で、何でもできると思っていたかもしれないけど、世の中には頑張ってもできない人が沢山いるの。でも彼らは決して、絶望したり、逃げ出したりしない。前を向いて、自分にできることは何かを必死に考えて、頑張っているの。自分にできない事は出来る人に、頭を下げて頼みこみ、皆の協力を取り付けて、がんばってなしとげる。なのに、ローラは仲間を見捨てて逃げ出したのよ。魔法が使えなくたって、杖で殴ることだってできる。囮になって注意を引くことだってできる。仲間を信じて、自分のできる範囲の事を必死にやって、助け合う。それが勇者一行でしょう」
そのお蔭で、二度目は、恐怖で足がすくんでも、魔法無しの肉弾戦に挑んだ。怪我もしたけど、仲間のお蔭で、たいしたことはなく、少しは貢献出来て、討伐を成し遂げた。
その時の感動は、魔法では一度も得られなかったほどの、満足感があり、生きているという実感があった。
以来、魔法を使えることにも感謝するようになり、もっともっといろんな魔法を覚えて、皆の役に立ちたいと思う様になった。知らない魔法を、文献を漁り探し求め、古代魔法の文献も読み漁り、どんな時にでも難局を乗りきることができるように努力した。
実際、そんな魔法が役に立って褒められるのが嬉しかったし、互いに補い助け合うことの喜びを感じ、皆に優しくなれたのだとか。
僕には、好き勝手して、ユリ同様に皆に迷惑掛けているとしか思えないが、そんな経験をして、今の彼女がいるのかと、少しだけ感動した。
その日の夜は、最後の往診にユリと二人で出かけ、深夜にホテルに戻ると、管理局からの伝言が届いていた。
出発前に、管理局に顔をだしてほしいという伝言だった。
その時は、忘れ物でもしてきたかなと、思ったが嫌な予感もして、朝食後、ユリも誘ったが、断られ仕方なく僕一人で行くと、嫌な予感は的中していた。
「勇者ユウスケ様、ありがとうございました。魔王討伐、頑張ってください」と横断幕が出ていて、知事は仕事で抜けられなかったと、代理で感謝のメッセージをもらい、市長が握手をもとめてきて、花束までもらい、スピーチまでさせられた。
一応、予想して、昨晩、スピーチの内容まで考えていたが、ユリは、やはり僕の事を勇者に仕立てていたのだ。
その後も、僕を手伝ってくれた管理局職員に感謝され、「魔王討伐、頑張ってください」と皆から言われた。
そして、送迎車として、大型リムジンまで手配していてくれ、途中、ホテルでユリ達四人を拾って、S級ダンジョンにむかうことになった。
「また、僕を勇者にしただろう」
「実際に私と一緒に召喚された勇者でしょう。それに今回の働きは勇者そのものだもの」
「そうそう、お前にしかできない仕事をきっちりとこなした。自慢していい」
「伝染病の蔓延防止も偉業」
「外科手術もして助けたんだってね。マシュウスではできない医師としての仕事もして、本当にすごいよ」
皆から、褒められて、悪い気はしなかった。
管理局が準備してくれた豪華な弁当をリムジンの中で食べ、昼過ぎには、ダンジョンに到着した。
既に攻略済みで、国防軍の精鋭たちも、魔界ゲート前で待機しているとのことで、今回はトラップ訓練も、魔水晶集めも、薬草集めもせず、さっさとダンジョン内を進み、その日のうちに、ローラント隊長たちと合流を果たした。
「随分、少ないみたいだけど、どうしたの」ユリがローラントに尋ねた。
五十人程いたはずだが、五十階層の魔界ゲート前には、三十九人しかいなかった。
「魔界の様子を確認に、斥候を送ったのですが、なぜか第三班以外は音信不通になっていて」
「私が到着するまで、待機を命じたわよね。何で勝手に、斥候なんて送ったの」ユリの口調がきつくなった。
「申し訳ありません。ですが、攻略して一月近く経過しておりますので、その後の情報収集は必要になると判断しました」
「私たちの為にとしてくれたのに、言い過ぎた。御免なさい。でも、音信不通ってどういうこと。魔人の軍勢と交戦になったら、通信魔道具で連絡いれるはずよね。通信する暇もない程に、瞬殺されたってこと?」
「私にはわかりかねます」
「ぺセププが相手なら、考えられなくもない」
「それはないわ。彼は最終砦を離れたりしないはずだもの」
「いや、その所為で、最終砦にまで攻め込めたと考えて、先手を打って出た可能性はある」
「ぺセププが率いる軍団となると、厄介ね」
「下手に動くと、事態が悪くなる一方。今日は休んで、明日、皆で捜索に向かうのがいい」
フレイアの意見に従う事にし、今日はここで休息をとり、明朝、魔界に乗り込むことに決まった。
最終砦の番人が、持ち場を離れて、勝手にゲート付近まで来るとは思えないが、四天王ぺセププでないにしろ、精鋭隊五人を瞬殺できるほどの何かが待ち受けている可能性は高い。
勇者一行の強さなら、最終砦攻略も可能だと信じているが、この先は何が起きるか分からない。いざという時の準備はしておきたい。
そんな不安から、その夜、賢者のローラに、尋ねることにした。
「この世界には、空間移動魔法は存在しないの?」
「あるわよ。でも、そんな魔法よくしってるのね。魔法には無関心だと思ってたから意外」
「いや、僕のいた世界のアニメでは、定番の魔法だから」
「へぇ、ユリからは聞いたことが無かったけど、あなたのいた世界は、空想力豊かなんだね。私たちの世界の古代魔法に、空間転移術式というのがあって、ある魔法陣を描いた空間同志を繋いで瞬間移動できる魔法はある。実際前回は、それで逃げ帰ったんだけどね。でも、試してないけど、最終砦の魔法陣は壊されているとおもう。だから、いきなり、最終砦に飛ぶことはできないの」
既に砦を攻略済みであっても、一か月間も砦を放置していれば、再び魔人が砦に控えている可能性は高い。そんなことすれば、挟撃されるので、もう一度、第一砦から確認しつつ、前線を引き上げていくのは戦術の基礎だ。
魔法は天才でも、戦術は素人だなと思ったが、同じ轍は踏みたくないので、もう馬鹿にはしない。
「そういう意味じゃなく、殺されそうになった時、どうやって、逃げるのかなと考えて、聞いてみただけ。ちゃんと、その魔法で逃げたんだと聞いて、助言不要だったと思ったから。ありがとう。おやすみなさい」
「ユウスケも、皆に気をつかって、アドバイスしてくれるんだね。ありがとう」
「僕は、皆みたいに優秀じゃないから、僕にできることをしているだけさ」
「ユリがあなたを買ってる理由が、漸く分かった。無能でも、自分でできる範囲で必死に頑張るからなんだね。私、ユリに怒らたことがあるの。私って、天才でしょう。だから……」
無能と言われカチンときて、自分で天才と言うなと言いたかったが、彼女もその才能に苦しんでいた。
ローラは、自分の過去を僕に話始めた。
彼女は若干十四歳で魔法大学に入学し、そこでも飛び級して主席で卒業した天才魔女だったらしい。どんなに複雑な魔法も簡単に使いこなし、なんでもできてしまうので、人生そのものがつまらなかった。なにか生きていてよかったと実感できるような刺激が欲しかった。
その欲求を上手く使って、彼女の魔法を悪用しようとする悪い輩も現れる。
魔法は優れていても、人生経験のない十六歳の小娘。楽しそうな話に騙されて、悪に手を貸し、指名手配されることになったのだとか。
投獄され、騙されたと知り、どんなに非道な事に手を貸してしまったのかを知らされ、自分自身が許せなかった。今後、一切魔法を使わずに生きようと考えたほど。
でも、実際には魔法を使えない魔女なんて、刀身のない剣のようなもの。これからどうやって生きて行こうと考えていると、魔法大学の計らいで釈放されることになり、講師の話を持ち掛けてくれた。
魔法を教えて、優秀な魔法士を育成するというやりがいのある仕事。
それからは、講師として魔法を教え、沢山の優秀な魔法士を育てた。でも、五年も経つと、そんな生活もつまらないと思い始める。やはり魔法を使って世のために役立ちたい。そんなことを考えるようになったのだそう。
そんな時、学長から、勇者の家庭教師の仕事を命じられた。勇者に魔法を教えるというつまらない仕事だが、仕方なく引き受けた。
実際、僕もユリも、魔法の才能はなく、教え甲斐は感じられない。言われた通りの指導はしたが、こんな仕事はさっさと終わらせたかったのだとか。
でも、ユリが友達の様に、「この仕事、つまらないんでしょう」と話しかけてきた。
「仕事ですから、つまらなくてもしなければなりません」
「そんなのおかしいよ。仕事とは楽しんですること。つまらない仕事でも、なにか楽しみを見つけて、それをたのしむ様にしないと。そんな才能があるんだから、人を喜ばせるなんてどうかな。先ずは、私を喜ばせてよ。仕事を、人生を楽しもうよ」
そして、その時に彼女が言ってきたのが、フルーツパフェをだせるとか、こんなボルタリング施設は作れるとか、極簡単なユリらしい要求だった。
そして、実際に魔法でだすと、勇者ユリは、大喜びして、はしゃぎまわった。
そんな簡単な馬鹿らしい魔法でも、こんなに人を喜ばせられるんだと、その時気づき、ユリの事が大好きになった。
それからは、ユリに喜んでもらおうと、今までは役に立たないと切り捨てていた様なつまらない魔法でも、ユリが喜びそうな魔法なら、噂を耳にすると、どんなところにも飛んでいき、習得して、彼女に見せるようになった。
スライムをペットにする魔法があると聞けば、辺鄙な村にまで、態々足を運んで、その魔法を教えてもらった。
お花畑を作る魔法とか、手品の様な魔法とか、習得しても役に立たない魔法でも、ユリに披露すると、大喜びしてくれるので、その喜ぶ顔を見たくて、情報収集につとめ、辺境の地に足を運ぶ様になった。
ユリから、勇者一行の一員として修業の旅に誘われた時は、勿論、二つ返事で了承した。自分の魔法が、勇者ユリの役に立てると、大喜びした。
でも、実際にダンジョンに潜ると、魔力無効化スキルを持つ階層ボスが結構いた。初めてその魔物に出会った時は、恐怖から一目散にその場を逃げ出してしまったのだとか。
そんな情けないローラに、ユリは「仲間をおいて、逃げ出すなんて最低」と激怒した。
「天才で、何でもできると思っていたかもしれないけど、世の中には頑張ってもできない人が沢山いるの。でも彼らは決して、絶望したり、逃げ出したりしない。前を向いて、自分にできることは何かを必死に考えて、頑張っているの。自分にできない事は出来る人に、頭を下げて頼みこみ、皆の協力を取り付けて、がんばってなしとげる。なのに、ローラは仲間を見捨てて逃げ出したのよ。魔法が使えなくたって、杖で殴ることだってできる。囮になって注意を引くことだってできる。仲間を信じて、自分のできる範囲の事を必死にやって、助け合う。それが勇者一行でしょう」
そのお蔭で、二度目は、恐怖で足がすくんでも、魔法無しの肉弾戦に挑んだ。怪我もしたけど、仲間のお蔭で、たいしたことはなく、少しは貢献出来て、討伐を成し遂げた。
その時の感動は、魔法では一度も得られなかったほどの、満足感があり、生きているという実感があった。
以来、魔法を使えることにも感謝するようになり、もっともっといろんな魔法を覚えて、皆の役に立ちたいと思う様になった。知らない魔法を、文献を漁り探し求め、古代魔法の文献も読み漁り、どんな時にでも難局を乗りきることができるように努力した。
実際、そんな魔法が役に立って褒められるのが嬉しかったし、互いに補い助け合うことの喜びを感じ、皆に優しくなれたのだとか。
僕には、好き勝手して、ユリ同様に皆に迷惑掛けているとしか思えないが、そんな経験をして、今の彼女がいるのかと、少しだけ感動した。
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