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たどり着いた村
しおりを挟む目が覚めた。腕が2本、足が2本、体の感覚はきちんとある。視界の範囲もそう変わらないように思えた。どうやら人間として転生できたらしい。
起き上がってみる。あたりは木々に囲まれているが足元は土の地面に石が敷かれている。文明もあるようで安心した。
「ここが新しい世界、か。さてどこへ向かってみようか。」
とりあえず道があるなら道をたどろう、と思い歩いてみる。声や体を確認して分かったが、多少筋肉量が増えたが転生しても男のままだった。これなら前の世界とそうそう変わらないじゃないかと少々がっかりする。
しばらく歩いた後に水音が聞こえてきた。ちょうど喉も乾いてきたし行ってみよう。
果たして、川が見つかった。水音からしてもっと大きい川かと思ったが流れは速いが細めの川とゆったりとした池が出てきた。きっと聴力が上がっているのだろう。筋肉も増えていたし俺の身体能力は強化されているのだろうか。
池をのぞき込むと少し強面のイケメンが水に映っていた、いやこれは俺か。神様は優しいのだろうか。ありがたやありがたや。
池は透明で底がよく見える。これなら飲めるだろうと思い手ですくったその時、後ろから草木を踏み分けるガサガサという音がした。
「誰かいるのか?」
「そこの水は飲むなよお。めんどくさい目に逢いたいのか?」
「へ?」
声がしたと思ったら藪からおじさん。釣り竿と袋を持っていたしここの釣り人なのだろうか。
「あんた、危なかったな。ここの水は飲むと腹を下しやすいからな!わしの息子も痛い目にあってたからな。どうしても飲みたいなら火を通してからだな。」
「ああ、よかった、ご忠告ありがとうございます。」
「なにやらイイ奴の気配を感じて覗いてみたらこれだからな、びっくりさ。あんた、名前は?わしはジョンってんだ。」
「俺はミツです。というかイイ奴って。」
「ああ、気配からしてよかったが近づいたらますますあんたは色男だな。こんなにいいと、もしや…。」
「もしや…?」
「ああ、まあ多分違うだろうなあ。こんなことはどうでもいいのさ、あんた家は?」
「ええと、その、なんていうか…。」
まさか転生なんて信じないだろうというか前世の俺がそう聞いたところで信じないだろうから返答に困ってしまった。
「ああ、もしかして転生者かあ?珍しいなあ。そりゃ雰囲気も変わってくるんだろうな。」
どうやらこの世界では転生は常識外ということではないらしい。
「そうなんです。神様に言われて。」
「まあ転生者と言えど道に迷った危なっかしい旅人と変わらんな、わしの村に行こう。しばらくは教会で面倒見てくれるはずだ。いやあそれにしてもミツにはどことなく惹かれるものがあるな。」
なんだこのジョンとかいうおじさん、ちょっと怖いぞと思いつつ行く当てもないので、俺はついていくと答えた。ここの水は危なくても魚はうまいんだぞ、というジョンさんの釣りに付き合ってから村に向かった。
ジョンの村に着いた。ざっと見て百人ぐらいの集落だろうか。そこまで大きくなさそうだ。家があって、畑が広がってて、のんびりした村だ。ジョンが紹介したように村に流れ着く人は多いのだろうか、すれ違う村の人は気さくに挨拶してくれた。というかやけに近寄ってくるような…?まあ村に入った瞬間に村八分になるなんてことはなさそうだ。ここならひとまず落ち着けそうだな。
「ミツ、前世にはこういう村はあったか?まあとりあえずこの村で困ったことがあったらとりあえず教会に行けばいいな。」
「なるほど、もっと人口のおおいところに住んでいたのでこういう村は新しくて興味深いです。教会ってそんなに気軽に行っていいんですか。」
「そうだな。神父様が頭のいい人でなあ、村の手助けはなんでもしてくれんのさ。旅人の泊まりにも対応しているぐらいだしなあ。ミツの手助けもしてくれるさ。」
「あー、いや教会って言うから神様とかに関係しているところに立ち入っていいのかなあと。」
「神様?ああ、わしたちを見守ってくれるからなあ。むしろ挨拶は欠かせないと思ってみんな定期的に通っているからなあ。そういう考えもあるんだな。」
なるほど、名前よりも親しみやすい施設なのかもしれない、ちょっと安心する。
歩いていたらすぐに大きな建物の前に着いた。
「ここが教会さ。ミツ、ささ、入りな。おーい、神父様いるかあ?」
「お邪魔します。」
とりあえず一声かける。挨拶は大事って母は言ってたっけ。この世界では頑張るからな、とふと思い出す。
入口を抜けると目の前の階段から優しそうな男性が降りてきた。
「あら、この辺の方ではないようですね。雰囲気も…。ジョンさん、この方は旅人の方ですか。とりあえずこっちで座ってください。飲み物持ってきますから。」
「わしもちょうど飲みたかったんだよな。」
そういえば水を飲み損ねていたな。飲み物を出してくれるなんて嬉しい。階段の横の廊下を進んでちょっとしたダイニングのような場所に通される。ジョンさんがどっしり座ったので俺も座った。神父様は何か入ったグラスを持ってきてくれた。なんだかいい香りがする。
「こんにちは。私はこの村の神父をしているヒルです。あなたのお名前は?」
「ミツと申します。ジョンさんがこの村まで連れてきてくれました。」
「そうそう、そこの池にいてな。もうちょっとで水を飲むところだったんだな。」
その話は大して重要じゃないだろと思っていたが。まあいいや、とりあえず説明をしなくては、にしても水からはいいにおいがする。そっちにばかり気に取られてしまう。
「ミツはな、どうやら転生してきたらしいから、この世界になれるまでは教会でちょっと過ごさせてやれないかと思ってな。というかこれただの水かあ、ちょっとお茶でも出てくるかと期待したんだけどなあ。ミツも残念だったなあ。」
俺の大体の状況を説明されてしまった。ジョンさんは調子のいいことを言っている。でもこれはただの水には思えないのだが。
「まあまあ、教会にお金の余裕はないですから。でもちょっと前に汲んだばかりだからおいしいはずですよ。」
神父様はそういいつつ俺の顔をやけにじっと見つめているような。
「なにかいい香りがして、ただの水ではない気がするのですが…。」
そういうと神父様は険しい顔をした。何かのテストでもさせられているのだろうか。
「…やはりそうでしたか。村の人たちはミツさんに話しかけてましたか?」
「ええ、皆さん元気に話しかけてくださって、この村は人と人との距離が近くていいですね。」
「ミツ、ここはやっぱりいい村だよなあ。」
とジョンさんは言ったが、神父様はますます顔が険しくなったが、それに気づいたのか神父様はいきなり顔が緩んで笑顔になった。
「ミツさん、しばらくここで生活してくれますか?帰る場所もないでしょうし、いろいろ手伝ってもらいますけどちゃんと生活はできますから。その間にこの世界について教えますしね。」
「よかった、神父様に追い出されたらどうしようかと思ってたんですよ。よろしくお願いします。」
ジョンは笑いながら、
「ははっミツはいいやつだし神父様は優しいんだからな。失礼なこと言わないでくれよな神父様。」
と言ってくれた。ちょっと緊張がまぎれた。
「それじゃ、俺はここでお暇するかな。明日も来てやるからな。神父様もよろしくな。」
といってジョンは釣った魚を二匹ほど置いていき帰っていった。
ジョンさんが帰ったのち神父様に宿泊室や教会の案内をしてもらった。教会にはほかにも暮らしている人がいるのか、後ろから視線を感じた。
そうして一巡して宿泊室に入った。あれ、もう説明は受けたしなんで神父様がいるのだろうか、聞いてみようかと思ったとき、
「さて、ジョンさんも多少は感じていたみたいですが、ミツさん、あなたの体について確認しなければなりません。ちょっと服を脱いでもらえますか。」
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