上 下
3 / 6

衝撃的な世界

しおりを挟む

 ええええ?え、いきなり過ぎない!?俺が前世で読んでいたBL並みにいきなりすぎる。まあえっとそのどうしよう、まさか…。

「俺を食べる気ですか!神父様ってもっと清らかな職業と思っていたのに!」
「ああ、教会の設備の説明に一生懸命になってこちらの説明を忘れていました。これは申し訳ないミツさん。取って食べようってわけではないんですよ。」
「はあ…?」

 食べられる(意味深)かと思った俺が馬鹿らしくなってきた。にしてもあのいい方はないだろ。神父様は語り始めた。

「やけに人が近づいてきたり褒められてたりしてるのには理由があると思うのでそれを確認したかったのです。あなたの体質はこの村にはもういなくなってしまったのでまさかとは思ってですね。」
「はあ…。」
「ミツさんの前世で生殖するための性別はどういったものがありましたか?」
「ええと子種…を供給する男性と子供を宿す女性でしたが…?これであってるんですか?」
「ええ、それで合ってます。この世界にも男性と女性が存在しますが、その性別に加えて、アルファ、ベータ、オメガの三種類があります。」

 なんだか嫌な予感がしてきた。どこかで聞いたことあるぞ。

「第二の性として男性女性それぞれに三種類の性別もあります。ベータは男性女性の性と変わらないのですが、アルファは男性女性どちらとも子供を妊娠させる強い力を持ち、オメガは男性女性どちらとも子供を宿らせる力を持ちます。」

 嫌な予感は合っていそうだ。さらに話は続く。

「アルファは、基礎的な身体能力や知能が高いのも特徴ですが子供を妊娠させる力がとても強いのです。なのでさまざまな村での子孫繫栄に一役買っていたのです。」

 ああ、やはりこの世界はそうなのだろう、アルファの話が続くのだろうか。まあ俺は平凡なベータだろうしなあ。

「この村は昔はもっと人口が多かったらしいのですが、数十年前からなぜかこの村にはアルファが生まれなくなりベータとオメガだけとなってしまったのです。」
「それは大変でしたね神父様。」
「まあ、それも今日までかもしれません。」
「どういうことですか?」
「昔からアルファとオメガは惹かれあう存在で、それにはお互いが発する物質に惹かれているのです。ベータには感じられないのでいまいちどういった感覚なのかはわからないのですが。」

 あーフェロモンのことか、うんうん。

「そのオメガの発する物質に似た物質を多く含む薬草を抽出した水をミツさんに先ほど飲んでもらいました。いい香りだったでしょう。」

 そうそう、いい香りだったなあと思い出す。え、ちょっとこの話だと、え?

「あれ、ベータは感じられないんですよね、まさか昔聞いた話の通りになるとは。ということであなたが本当にアルファなのか確認したくて服を脱いでいただきたいのです。もしかしたらこの村の救世主になるかもしれないのでね。」

 え…?いったんここで整理してみるか。
 ええと、俺の転生した世界はオメガバースの世界で?俺はどうやらアルファらしいと?んでこの村の救世主ということはまさか。

「さあ、この村の父になるかどうかにも関わってきますし脱いでくださいね。」

 どうやら拒否権はないようだ。

「えっと、優しくしてください…。」
「そんな怖いことはしませんよ。」

 さすがに全裸になれと言われて緊張しない人はいないだろ。

「ああ、この筋肉、大きめの…、言葉にするのがためらわれますが、ええ、あなたはアルファで間違いないでしょう。これは明日からもこの世界の勉強が必要になりそうですね。いいですか、今日はお疲れでしょうからアルファの力は抑えられているから注目される程度で済んでいますが、元気になったら大変なことになりますから、不用意に人に近づかないようにしてくださいね。まあベータがほとんどなのでたいした問題にはならないと思いますが。」

 やはり神聖な職業である神父様だからだろうか、人間の裸を見たところで冷静に解説している…。しばらく何も話せなかった後に出た言葉は、

「ありがとうございます…?」

 というよくわからない一言。

「今日のところは早めに休んでくださいね、明日からいろいろ手伝ってもらいますから。」
「よろしくお願いします。」
「ああ、ミツさんのご飯を忘れていました。今から夕飯食べましょうか。お魚をもらいましたしね。」

 そうして夕飯を食べ体をきれいにして転生後初の一日は過ぎていった。とても長い一日だったなあ。



 次の日、教会の一日はお祈りから始まりますと神父様に言われて二階の礼拝堂で歌ったり神様についての本を読んだりした。教会の他の人はもうお祈りが終わったのかここにはおらず、下から足音が聞こえる。神父様の話はよく分からなかったが、最後に神様にお祈りする時間があった。なんでもいいと言われたのでこの世界でうまくやっていけますようにとお願いしたら、突然聞いたことのある声がした。

「おはようございます、ミツ。転生後の世界はいかがです?」

 もしかして転生してもらった神様の声か?でも神父様は声に特に気付いていないような。

「大丈夫ですよ、私はミツの心を読めるので。」

 神様はやはり神様なのか。

「なるほど。なんで突然話しかけてきたんですか。」

 心のなかで話す。

「ここは教会ですから話しかけられたのですよ。」
「なるほど神様、それで一つ伺いたいのですが、なんでこんなオメガバースの世界でアルファに転生することになったのですか。」
「それはミツが幸せな人生として素敵な恋人と沢山の子供というのを望んでいたからですわ。アルファなら沢山の子供を作ることが出来ますわ。」
「そんな理由なんですか…。」
「素敵な人生になると思いますわ。そろそろ私は戻りますわね。また会う日までごきげんようですわ。」

 声がしなくなった。突然だったが、昨日までも突然のことが多かったため順応できているのだろう。受け入れられてしまった。
 そう思っていたら神父様が声をかけてくださった。

「さてミツさん、今日は教会でいろいろ手伝ってもらいますからね。」
「はい。」

 そうして今日は主に手の届く人が少ない棚などの上のほうの掃除や、倉庫の整理、井戸からの水くみなどの力仕事も任された。この体なら多少の重いものでも動かせるのでちょうどいい。

 時折休憩しご飯を食べまた作業。大変だなあと思ったが難なく作業できる。そうしているうちに昨日言っていた通りジョンさんが来てちょっとした話と魚を持ってきた。この体質のことは話さないほうがいいと思い話題にはしなかった。
しおりを挟む

処理中です...