昔好きだったお姉さんが不倫されたので落としに行ったら後輩からも好かれていた

九戸政景

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第一話

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『この、このーっ!』
『ははっ、そう簡単にはやられないっての! 俺に勝とうなんて100万年早いぜ!』
『なんの! すぐにでも勝ってやる!』
『ならやってみろよ!』


 ふわふわとした感覚の中、小学生の男の子二人がテレビゲームに熱中している光景が見える。これは俺達がまだ小学三年生だった頃、親友の家で二人で遊んでいた時の夢だ。俺こと柴代しばしろ大和やまと秋田あきた泰希たいきは小学一年生からの仲、それも入学式の時からの仲で、この日のように一緒にゲームをしたり近所の公園などの外で遊んだり、時には学校の成績を競いあったりするなどお互いにライバルであり親友と呼べる間柄だった。

 お互いの家こそ少し離れていて、行き来するには十分ほどかかる程の距離だったけれど、俺達は一緒に遊んだり勉強したりするのが楽しかったし、大人になってもこの関係は続けていきたかった。もっとも、泰希の家に行く時の楽しみはそれだけじゃなく、もう一つ大きな楽しみがあった。それというのが。


『おーい、おやつ持ってきたよー』


 ノックをしてから一人の女性が入ってくる。入ってきたのは、泰希のお姉さんで俺達とは十二歳も歳が離れている秋田夕希ゆうきさんだ。

 『夕』という字が名前に入ってるからというわけでもないが、その髪の色は夕焼けのような明るいオレンジで目がくりくりとしていて唇は少し薄め、出るとこは出て引っ込むところは引っ込んでいるスタイルの良さを誇っている。

 そして俺は、子供ながらそんな夕希さんの事が女性として好きで、この秋田家に遊びに行く大きな楽しみが夕希に会える事だった。まだガキの俺が成人である夕希さんから一人の異性として見られるわけがないのはわかっていたけれど、大人っぽい中で時々見せる子供らしさのあるお茶目な一面、そして小学生男子には少し刺激が強い体型や弟の友達に対してするには過剰なスキンシップに俺はいつしかやられてしまったのだ。


『あっ、ほんとにしば君いるじゃん! いらっしゃーい!』
『あ……ど、どうも……』
『なんだよ、大和。姉ちゃんが来て照れてるのか?』
『て、照れてないから……』


 図星だったのもあるが、照れから少し素っ気ない感じの返事をしてしまう。俺は夕希さんや泰希のお母さんからは名字の柴代を縮めてしば君と呼ばれていて、夕希さんからはたまに愛玩犬のような扱いをされる。過剰なスキンシップもたぶんそれが理由なのだろう。


『二人とも楽しそうにしてるし、私も見てようかな。しば君、隣座るねー』
『は、はい……』



 夕希さんはにこりと笑うと、俺の隣に座り、俺達のゲームの様子を楽しそうに見始めた。そうして俺達と一緒に楽しむ夕希さんの姿はとても可愛らしかったし、ますます好きになっていった。


『いつか、夕希さんに振り向いてもらえるようにこれからも頑張らないと……』


 夕希さんに異性として意識してもらえるようになるために頑張る事を改めて決意し、俺は泰希達との一時を楽しんだ。


「……あ」


 いつの間にか夢は終わり、目が覚めていた。窓からは太陽の光が射し込んでいて、空は綺麗な青色だった。


「懐かしい夢だったな。それに、二十歳の頃の夕希さん、本当に綺麗だったなあ……」


 ベッドの中で呟きながら俺の中でまだ燻っている恋心があるのに気づく。けれど、もうその恋は実らない。何故なら、夕希さんは俺と泰希が中学三年生になった時に結婚してしまったのだから。


「まあたとえ結婚してなくても高三の子供なんかの告白に応えてくれるとは思えないけどさ。はあ……」


 自嘲気味に言ってから俺はため息をつく。すると、枕元に置いていた携帯が震え出す。見るとそれは泰希からで、祝日である今日の予定についての確認だった。


「そういえば、朝から一緒にファミレスで飯食いながらのんびり話す約束してたな。さて、腹も減ってるし遅れてもよくないからそろそろ準備するかな」


 俺はベッドから体を出すと、着替えてから姿見を使って軽く身だしなみを整えた。


「よし、これでいいな。あとは父さん達に一言声をかけていこう」


 部屋を出て階段を下りた後、俺はリビングにいた家族に声をかけてから俺は家を出た。そして数分かけてファミレスの前にいくと、そこには既に泰希がいた。


「おはよう、泰希」
「……あ、大和。おはよう」
「早く入ろうぜ。俺も腹ペコペコだしさ」
「あ、うん……」


 泰希と合流してから中に入り、それぞれ注文を済ませたのだが、泰希の表情はなんだか暗かった。


「どうしたんだよ、泰希?」
「あー……うん、ちょっとな」
「体調が悪いとかではないんだよな?」
「うん、違う。ちょっと姉ちゃんの事でさ」
「夕希さんの事?」


 夕希さんの事と聞いて少しだけ嫌な予感がする。風邪を引いたとか怪我をしたとかそういうのではないもっとなにか重大な事があったような嫌な予感がしたのだ。


「うん、実はさ……」


 そして泰希の口から出てきた言葉に俺は驚く事となった。
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