昔好きだったお姉さんが不倫されたので落としに行ったら後輩からも好かれていた

九戸政景

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第二話

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「姉ちゃん、さ……離婚したんだよ」
「え……い、いつ?」


 あまりの言葉に驚く中、泰希は暗い表情のままで答えた。


「最近、かな……数年前から喧嘩ばかりになったんだけど、あの人が不倫し始めた事でついに二週間前くらいに離婚したんだ。そしてあの人は、不倫相手と一緒になるために姉ちゃんの前から去っていったよ。汚い言葉を残してな」
「そうだったんだ……」


 夕希さんの恋人は結構爽やかなスポーツマン的な人で、俺としても好感を持っていたからこの人なら仕方ないと思って諦めていた。けれど、夕希さんを裏切ってそんな事をしていたなんて許せない。もしも今度会ったら殴ってやらないと。


「姉ちゃん、離婚してから無気力になってさ。仕事も辞めちゃって毎日ボーッとして過ごしてるんだ。あんなパワフルだったのに今ではまるで別人みたいだ。あんな姉ちゃんの姿、見たくないよ」
「なんか想像出来ないな、それ」
「母さんも話はするんだけど、父さんがもう今回の件でカンカンでな。姉ちゃんどころか俺にも結婚は今後させたくないって言うくらいになったんだ。もっとも、姉ちゃんもする気にはならないと思うけど」
「まあそんな事があったらな……」
「まあ、一番傷ついたのは中々子供が出来ない事で言われた暴言だろうけどさ」
「……どんなのだ?」


 聞くのは怖かった。けれど俺が唾をゴクリと飲み込んでから聞くと、泰希は辛そうな顔で話してくれた。


「こんなの人間とそういう行為をしてる気がしない。これなら一人の方がマシだし、こんなならお前との子供なんてほしくない。そう言われたんだってさ」
「なんだよ、それ……!」


 まるで自分には非がないかのような言い分に俺はテーブルを叩きそうになった。けれど、ここは自分の家じゃない。だから、それをグッと堪えて拳を握るだけに止めた。


「アイツ……! 本当にふざけるなよ……!」
「それで、さ。お前に頼みがあるんだよ。お前にしか出来ない頼みがさ」
「なんだ? 話の流れ的に夕希さんについての頼みか?」
「流石は親友。察しが良くて助かるよ」


 泰希は嬉しそうな笑みを浮かべた後、スウッと息を吸ってから真剣な顔になった。


「ウチの姉ちゃんと付き合って欲しいんだ」
「……え? つ、付き合う?」
「交際……とまではいかないけど、たまに一緒に出掛けたり愚痴を聞いたりしてあげてほしいんだよ。姉ちゃん、お前の事を本当に気に入ってたから、お前が色々付き合ったらきっと喜ぶはずだ」
「そ、そう言われても……」


 気持ちとしては嬉しかった。憧れだった人の助けになれる上に俺だからと言われるのは誇らしかったからだ。でも、俺はまだまだ力のない子供でしかないし、おじさんだって首を簡単に縦には振らないだろう。


「一応、この件は父さん達にも相談はした。母さんも乗り気だったし、父さんもお前なら姉ちゃんに近づくのは許すし、むしろ会ってあげてほしいと言ってくれた。だから、頼む。この通りだ」


 泰希は頭を下げた。こんなに真剣な親友の姿を見るのは恐らく初めてだ。でも、それだけ夕希さんの事を考えているわけであり、俺にこの件を飲んでほしいのだ。

 俺としても夕希さんの事をどうにかしてあげたいのは事実だ。俺みたいな子供じゃ力不足だと思うけど、泰希達が乗り気なら力を貸したい。何より夕希さんの力になれるならどんな事でもしたいのだ。


「……わかった、やってみるよ。不安はあるけど断る理由はないし、俺を頼ってくれてるわけだしな」
「ほんとか!? よかった……姉ちゃんに惚れてたお前に頼むのはその気持ちを利用するようで気が引けてたんだけど、頼んでみてよかったよ。ありがとうな、ヤマト」
「……やっぱりバレてたか」
「お前、俺目当てよりも姉ちゃん目当てな感じだったしな。親友として少し妬いてたんだぞ、このこの~」
「止めろって」


 泰希はからかうような顔をしていたけど、とても安心したような雰囲気を漂わせていた。やっぱり緊張はしていたんだろうし、合流した時の暗い顔も断られたらどうしようという気持ちが表に出ていたんだと思う。コイツが結構素直な奴なのもあるけど、それ以上に夕希さんの事を家族として大切に思っているからなのだ。


「よし、そうと決まれば姉ちゃんもここに呼ぶか!」
「ああ! え……ええ!?」


 あまりに突然の言葉に俺は驚く。けれど、泰希はそんな俺には構わずにニタニタ笑いながら携帯を取り出して操作し始めた。


「姉ちゃんへ、いつものファミレスまで来て、大和もいるぞ……と」
「おい、おいって!」
「はい、送信ー!」
「早いな!? というか、来てくれるのか!?」
「来るさ。お前がいるって伝えてるからな」


 泰希は自信満々に答える。まあ、俺の事を気に入ってくれていたそうだから、もしかしたら本当に来てくれるかもしれない。そんな期待をしながら待つ事十数分、俺達のテーブルの近くに一人の人物が立った。


「お待たせ、二人とも」
「おう、姉ちゃん」
「夕希……さん……」


 そこには少しやつれながらも記憶の中の姿よりも少し大人の色香を増した夕希さんがいた。
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