壺の中にはご馳走を

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免許更新

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 今日の客は飲み物やお菓子に一切手を付けようとしない。

 真也はチョイスを間違えたかと肩を落とした。


「すみません。医者に甘い物は止められてるんです」

 海部夏希は申し訳なさそうに真也に笑いかけた。


「早速話してもよろしいでしょうか。

 先週、自動車免許の更新に行った時のことを聞いてください。


 午前中に近場の交通センターに行きました。

 いつもは建物の中に入って、書類を受け取ったり料金を支払ったりするのですが、入口前で係の人から

『一度に多くの人を入れられないので、二手に分かれてください』

 という旨のアナウンスがありました。


 そのまま建物に誘導される人とバスに乗り込む人。

 私は建物に入れず、バスに乗せられました。

 バスに乗り込む時、ハガキサイズの整理券を取りました。

 私が乗り込むとバスは行き先を告げず走り出しました。


 危ないので席に座ろうと後方に目を向けると、高校時代の同級生に再会しました。

『せっちゃん?』

 せっちゃんは瀬戸という苗字から取ったあだ名で、雰囲気が大人っぽくなっていたけれど顔はあの頃のままでした。


『夏希!? 久しぶり!!』

 大学進学で疎遠になっていた友人と会ったことで、不安は吹き飛びました。

 せっちゃんは行き先を知っているようで、とても落ち着いていました。


『今は絵を描く仕事をやってるよ』

『えー、すごい! イラストレーターやってるのー?』

 高校の時はせっちゃんが絵を描くのが上手とは知りませんでした。

 しかし美術の授業を選択していたので、絵を描くことが好きだったのでしょう。

 意外な仕事に就いていることに、私たちの会話は盛り上がりました。


 じきにバスは目的地に着くらしく、乗客は立ち上がりました。

 窓の外は、見知った駅のホームでした。

 どうしてバスなのに、電車が停まる駅なんだろうと思いました。

 
 この駅は終着駅で、ホームに降りるためには、進行方向の左側のドアを通る必要がありまづ。

 右側は駐車場になっていて、ホームすら設置されていないのです。


 しかし乗客たちは右側から降りようとしていました。

 そもそもバスが停まる前に乗客が一斉に立ち上がるのも変ですし、バスの出入り口は左側にしかないはずです。

 いくつかの矛盾を抱えながら、バスが停まり、せっちゃんと私はから降りました」
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