壺の中にはご馳走を

文字の大きさ
上 下
20 / 72

免許更新②

しおりを挟む
「せっちゃんの後ろを引っ付きながら、階段を上りました。

 階段の先には改札があります。



 実際に階段を上った先にあったのは、見たことのない受付でした。

 ホテルのロビーを連想させる空間が広がっていて、受付には2人の男がいました。


 1人は私たちが受付近くに来ると、足早に去ったので顔を確認することはできませんでした。

 もう1人は『ヤヌシュ』と書かれたネームプレートを胸に付けていました。


 せっちゃんはここが交通センターであるとして、料金を支払いました。

 私もそれに続くと、出された書類に記載されている料金が違います。

 それは1万円を請求するものでした。


『えっ!? 高くないですか?』

『施設の中を見るのだから、これくらいはもらわないと』

 ヤヌシュの指が示したのは、『入場料7000円』の文字。

 ここまで来たら更新手続きをしないと時間の無駄だと思い、渋々支払いました。


 私たちは奥へと通されました。

 視力検査などを行うと思いましたが、細い細い通路が延々と続きます。

 床は大理石、壁は木のテイストで、ショッピングモールのトイレを思い出しました。


 歩いていくと、少しだけ広い空間に出ました。

 そこには私と同年代と思しき女の子がいて、壁にブロックをはめていました。

 色々な形のブロックを上手く組み合わせ正方形を作る、という脳トレゲームがあるじゃないですか。

 女の子はそれをやっていたんです。

 壁には3つそれができるスペースが用意されており、女の子の左側にある2つには青ランプ、女の子のところには赤ランプが点いていました。


『あの子は間に合わなかったんだね』

 とせっちゃんがつぶやきました。

 女の子はずっとブロックをはめ込んではやり直すを繰り返しています。


『ちょっとトイレ行ってくる』

 というせっちゃんを私も追いかけて、それぞれ別の個室に入りました。

 トイレから出ると、黒服の男2人に

『早く入って!!』

 と腕を引っ張られました。

 1人は俳優のウィリアム・スミスに似た人で、もう1人は角刈りで恰幅の良い日本人でした。


 せっちゃんもトイレから出てきましたが、男たちを見て逃げようと踵を返しました。

 すると日本人の方が、拳銃でせっちゃんの頭を打ち抜きました。

 倒れるせっちゃんを助けに行くこともできず、私はウィリアム・スミスに腕を引っ張られてさらに奥の部屋に入りました」
しおりを挟む

処理中です...