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リーゼが牢から助け出されて半年が経っていた。今日、リーナとして最愛の人の妻になる。
薔薇色のドレスを纏ったリーナの首には、母が遺した青碧の首飾りが輝いていた。
「とても美しい宝石だわ。お母様の形見なんですってね。ディルクと出会ったのは運命だったのよ」
ベルタは美しいリーナの姿を見て、満足したように頷いた。
「ドレスを選んでいただいてありがとうございます。とても美しくて可愛いです」
ドレスはベルタが用意した。娘を嫁に出すのは二度目だが、やはりとても感慨深い。
「だって、ディルクに用意させると、青碧のドレスばかりを選びそうですものね」
「確かにそうなりそうですね」
ベルタとリーナは顔を見合わせて微笑んだ。
青碧のドレスをまとえばディルクがとても喜ぶだろうが、今日はエックハルトとベルタの娘として嫁ぎたいと思い、リーナはベルタにドレスを選んでほしいと頼んでいた。もちろん、ベルタはとても喜んだ。そして、侍女も含めてウェイランド家総出でドレスを用意したのだった。
「リーナ、とても綺麗だ。誰よりも幸せになるんだぞ。だが、ディルクが嫌になったらいつでも帰ってきていいからな。ウェイランドの家はリーナの実家なのだから」
エックハルトは美しいリーナにそう声をかけた。リーナが幸せになるのは嬉しいが、養父とはいえ父の胸中は複雑である。
「父上、めでたい日に縁起が悪いですよ」
アルノルトはそんな父を諌めた。リーナに命をかけて国を救った年若い従甥と比べられ、思うところがあったのか、最近は財務局長である兄の補佐官として真面目に勤務しているらしい。
新しい財務局長となり激務の中、ウェイランド侯爵も顔を見せていた。
「リーナ様、信じられないぐらい美しいです」
侍女のアリーセは、美しい花嫁姿になったリーナを誇らしそうに見ていた。
「やっぱりあいつはハルフォーフ将軍なんだな」
教会の前には救国の英雄であるハルフォーフ将軍の結婚を祝うため、大勢の人が集まってきていた。
リーナの乗る馬車を護衛してきたエドガーは、優しそうなディルクがハルフォーフ将軍だと信じ切れずにいたが、この大規模な結婚式が冗談であるはずはなかった。
リーナが花嫁の控室に入ると、エドガーは部屋の外に護衛として立つ。
「父様、花婿がやって来ても絶対に入れてはいけないのよ。撃退してね」
リーナに付き従ってきたアリーセは、部屋に入る前に父のエドガーにそう伝えていた。
アリーセが心配した通り、ディルクがリーナの部屋の前にやってきた。
『大陸最強と言われる男だぞ。俺が撃退するのか? アリーセのやつ、無茶を言いやがる』
エドガーは苦笑いする。
「エドガーさん、この部屋にリーナがいるんだよね」
にこにこしながら正装のディルクが訊いた。青碧の闘神の片鱗もないなとエドガーは思ったが、もちろん口にはしない。
「会わすことはできないぞ。決まりだからな」
自分では止められないと思いながら、エドガーはディルクにそう言った。
「知っているよ。本当にリーナがここに来ているか心配になっただけだから。リーナ、綺麗だった?」
ディルクは少しでもリーナの話が聞きたい。
「おう、信じられないぐらい綺麗だったぞ」
それは花嫁に対するお世辞ではなく、エドガーの本心だった。娘のアリーセが世界一綺麗だと思っている親馬鹿なエドガーであるが、それでもリーナは美しいと思う。
「僕より先にリーナの花嫁姿を見たんだよね。ちょっと悔しい」
自分で訊いておいて少し落ち込んでいる救国の英雄を、エドガーは微笑みながら見ていた。
ブランデスで一番大きな教会は真っ白く塗られていて、真っ青な晴天によく映えている。扉の上には大きな女神の像が据えられており、微笑みながら国中に祝福を与えていた。
教会内部にはステンドガラスを通した優しい光が満ちている。
全てが若い二人の門出を祝っていた。
祭壇の前で待っているディルクの元へ、エックハルトにエスコートされてリーナがゆっくりと歩いてくる。
光輝くプラチナブロンドの髪に薔薇色のドレスがよく似合っていた。胸に輝く大きな宝石は、ディルクの虹彩と同じ色だ。
頬を染めて微笑むリーナを、ディルクは天にも昇るほど嬉しそうな顔で見ていた。
多くの参列者はそんなディルクを微笑ましく見ている。
祭壇の前でエックハルトはリーナの手をディルクに託した。その手を軽く握ったまま、ディルクは片膝をつく。
「僕はリーナを生涯の妻として、一生愛し続けることを誓います。どのような困難があろうとも、この生命をかけて貴女を守ります。僕はリーナを妻とできることを神に感謝いたします」
教会の鐘が鳴らされ、王都中に結婚が成立したことが知らされた。
十九歳で将軍となり国のため戦いに身を投じて、国のため死を覚悟していた男の幸せを、国中が祝っていた。
こうして、若き英雄の伝説には新たな章が書き加えられることになった。
「リーナ、無理やり休暇をとってきたから君の国へ行こう。ブランデスへ来た時と同じように二人きりで馬に乗って」
結婚式の翌日、富裕層の平民が着るような軽装になった二人は、リーナの国へと旅立った。
薔薇色のドレスを纏ったリーナの首には、母が遺した青碧の首飾りが輝いていた。
「とても美しい宝石だわ。お母様の形見なんですってね。ディルクと出会ったのは運命だったのよ」
ベルタは美しいリーナの姿を見て、満足したように頷いた。
「ドレスを選んでいただいてありがとうございます。とても美しくて可愛いです」
ドレスはベルタが用意した。娘を嫁に出すのは二度目だが、やはりとても感慨深い。
「だって、ディルクに用意させると、青碧のドレスばかりを選びそうですものね」
「確かにそうなりそうですね」
ベルタとリーナは顔を見合わせて微笑んだ。
青碧のドレスをまとえばディルクがとても喜ぶだろうが、今日はエックハルトとベルタの娘として嫁ぎたいと思い、リーナはベルタにドレスを選んでほしいと頼んでいた。もちろん、ベルタはとても喜んだ。そして、侍女も含めてウェイランド家総出でドレスを用意したのだった。
「リーナ、とても綺麗だ。誰よりも幸せになるんだぞ。だが、ディルクが嫌になったらいつでも帰ってきていいからな。ウェイランドの家はリーナの実家なのだから」
エックハルトは美しいリーナにそう声をかけた。リーナが幸せになるのは嬉しいが、養父とはいえ父の胸中は複雑である。
「父上、めでたい日に縁起が悪いですよ」
アルノルトはそんな父を諌めた。リーナに命をかけて国を救った年若い従甥と比べられ、思うところがあったのか、最近は財務局長である兄の補佐官として真面目に勤務しているらしい。
新しい財務局長となり激務の中、ウェイランド侯爵も顔を見せていた。
「リーナ様、信じられないぐらい美しいです」
侍女のアリーセは、美しい花嫁姿になったリーナを誇らしそうに見ていた。
「やっぱりあいつはハルフォーフ将軍なんだな」
教会の前には救国の英雄であるハルフォーフ将軍の結婚を祝うため、大勢の人が集まってきていた。
リーナの乗る馬車を護衛してきたエドガーは、優しそうなディルクがハルフォーフ将軍だと信じ切れずにいたが、この大規模な結婚式が冗談であるはずはなかった。
リーナが花嫁の控室に入ると、エドガーは部屋の外に護衛として立つ。
「父様、花婿がやって来ても絶対に入れてはいけないのよ。撃退してね」
リーナに付き従ってきたアリーセは、部屋に入る前に父のエドガーにそう伝えていた。
アリーセが心配した通り、ディルクがリーナの部屋の前にやってきた。
『大陸最強と言われる男だぞ。俺が撃退するのか? アリーセのやつ、無茶を言いやがる』
エドガーは苦笑いする。
「エドガーさん、この部屋にリーナがいるんだよね」
にこにこしながら正装のディルクが訊いた。青碧の闘神の片鱗もないなとエドガーは思ったが、もちろん口にはしない。
「会わすことはできないぞ。決まりだからな」
自分では止められないと思いながら、エドガーはディルクにそう言った。
「知っているよ。本当にリーナがここに来ているか心配になっただけだから。リーナ、綺麗だった?」
ディルクは少しでもリーナの話が聞きたい。
「おう、信じられないぐらい綺麗だったぞ」
それは花嫁に対するお世辞ではなく、エドガーの本心だった。娘のアリーセが世界一綺麗だと思っている親馬鹿なエドガーであるが、それでもリーナは美しいと思う。
「僕より先にリーナの花嫁姿を見たんだよね。ちょっと悔しい」
自分で訊いておいて少し落ち込んでいる救国の英雄を、エドガーは微笑みながら見ていた。
ブランデスで一番大きな教会は真っ白く塗られていて、真っ青な晴天によく映えている。扉の上には大きな女神の像が据えられており、微笑みながら国中に祝福を与えていた。
教会内部にはステンドガラスを通した優しい光が満ちている。
全てが若い二人の門出を祝っていた。
祭壇の前で待っているディルクの元へ、エックハルトにエスコートされてリーナがゆっくりと歩いてくる。
光輝くプラチナブロンドの髪に薔薇色のドレスがよく似合っていた。胸に輝く大きな宝石は、ディルクの虹彩と同じ色だ。
頬を染めて微笑むリーナを、ディルクは天にも昇るほど嬉しそうな顔で見ていた。
多くの参列者はそんなディルクを微笑ましく見ている。
祭壇の前でエックハルトはリーナの手をディルクに託した。その手を軽く握ったまま、ディルクは片膝をつく。
「僕はリーナを生涯の妻として、一生愛し続けることを誓います。どのような困難があろうとも、この生命をかけて貴女を守ります。僕はリーナを妻とできることを神に感謝いたします」
教会の鐘が鳴らされ、王都中に結婚が成立したことが知らされた。
十九歳で将軍となり国のため戦いに身を投じて、国のため死を覚悟していた男の幸せを、国中が祝っていた。
こうして、若き英雄の伝説には新たな章が書き加えられることになった。
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