1 / 12
第一話
しおりを挟む「ビクティー・シークランドは、どうやら死んてしまったらしいぞ?」
「はぁ? 殿下、アンタついに頭沸いた?」
王城は、王太子殿下の執務室にて。
アポなしで訪問してその部屋に通されちょうど席に座ったところで、殿下言われてそう返す。
でも驚くのは当たり前だ。
だってその『ビクティー・シークランド』というのは、何を隠そう私の名前なんだから。
私は侯爵令嬢だ。
しかし家格は高くても、淑女然とはしていない。
物言いも思考も行動力も、どちらかというと『男前』と称されるし、何なら男性よりも女性の方に人気がある。
自分で言うのもなんだけど、令嬢としては欠陥品。
しかしそんな私のいつも通りの不躾な物言いに、この国の王子は今日もとても鷹揚だ。
「ちょっとそれは酷くないか?」
「じゃぁ何アンタ、今目の前に居るこの私がまさか幽霊にでも見えるわけ?」
「そんな訳ないじゃないか」
私の毒舌じみた軽口にも、彼はいつもの事だと笑って答える。
彼はこんな私とも、平気で友人付き合いをしてくれる物好きなヤツで、こういう器の大きなところが私は中々気に入っている。
そんな彼が言ったのだ。
「でも今しがた届いたこの手紙には、そんな事が書いてある」
と。
まるでゴミかの様にぞんざいに放り投げられたその手紙を見てみれば、封筒の裏には見知った名前が綴られている。
――ノトス・シークランド。
私の父の名前である。
その署名に、私は「はぁ」と息を吐いた。
なるほどつまりそういう事か、と。
「ねぇ殿下、聞いてくれる?」
「何?」
「実はさっき王都に返ってくる途中で、馬車が事故に遭ったんだけど」
「おぅ」
「それが車軸が鋭利な何かで切られてたから、間違いなく人為的に起こされた事故でね?」
「おぉぅ」
「そのせいで私、危うく死ぬところだったのよ」
「おぉぉぅ」
「で、その後すぐに馬車を乗り換えてここまで来たのが今って訳」
「おぉぉぉぅ……」
何かさっきから殿下がオットセイみたいな事になっている。
それほどまでに、この事実が衝撃的だったんだろうか。
まぁ私としては「あの父親ならいつかはやる」と思ってたけど。
52
あなたにおすすめの小説
いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。
絞首刑まっしぐらの『醜い悪役令嬢』が『美しい聖女』と呼ばれるようになるまでの24時間
夕景あき
ファンタジー
ガリガリに痩せて肌も髪もボロボロの『醜い悪役令嬢』と呼ばれたオリビアは、ある日婚約者であるトムス王子と義妹のアイラの会話を聞いてしまう。義妹はオリビアが放火犯だとトムス王子に訴え、トムス王子はそれを信じオリビアを明日の卒業パーティーで断罪して婚約破棄するという。
卒業パーティーまで、残り時間は24時間!!
果たしてオリビアは放火犯の冤罪で断罪され絞首刑となる運命から、逃れることが出来るのか!?
私はざまぁされた悪役令嬢。……ってなんだか違う!
杵島 灯
恋愛
王子様から「お前と婚約破棄する!」と言われちゃいました。
彼の隣には幼馴染がちゃっかりおさまっています。
さあ、私どうしよう?
とにかく処刑を避けるためにとっさの行動に出たら、なんか変なことになっちゃった……。
小説家になろう、カクヨムにも投稿中。
婚約破棄からの断罪カウンター
F.conoe
ファンタジー
冤罪押しつけられたから、それなら、と実現してあげた悪役令嬢。
理論ではなく力押しのカウンター攻撃
効果は抜群か…?
(すでに違う婚約破棄ものも投稿していますが、はじめてなんとか書き上げた婚約破棄ものです)
傍観している方が面白いのになぁ。
志位斗 茂家波
ファンタジー
「エデワール・ミッシャ令嬢!貴方にはさまざな罪があり、この場での婚約破棄と国外追放を言い渡す!」
とある夜会の中で引き起こされた婚約破棄。
その彼らの様子はまるで……
「茶番というか、喜劇ですね兄さま」
「うん、周囲が皆呆れたような目で見ているからな」
思わず漏らしたその感想は、周囲も一致しているようであった。
これは、そんな馬鹿馬鹿しい婚約破棄現場での、傍観者的な立場で見ていた者たちの語りである。
「帰らずの森のある騒動記」という連載作品に乗っている兄妹でもあります。
悪役令嬢はモブ化した
F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。
しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す!
領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。
「……なんなのこれは。意味がわからないわ」
乙女ゲームのシナリオはこわい。
*注*誰にも前世の記憶はありません。
ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。
性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。
作者の趣味100%でダンジョンが出ました。
断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!
柊
ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」
ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。
「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」
そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。
(やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。
※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる