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第二話
しおりを挟む「そんな目に遭っておいて、今をそれをまるで他人事のような淡々さで話す君にビックリだ」
「何だそっちか」
「君と君のお父上の確執はこれでも知ってるつもりだからな、君に聞いて」
その言葉を聞いた私は少しだけ安堵する。
その部分を理解してくれているんなら話は早い。
……まぁ散々アレコレ愚痴っていたのは私だけど。
「なぁビクティー、それってつまり『その事故は全て侯爵たちによって仕組まれたものだった』っていう事だよな?」
「おそらくね。まぁお父様はそういう人よ。自分の都合が悪くなるとすぐに捨てる人なんだから」
私はそんな父が嫌いだった。
そもそもが、利益の為なら汚い事にも手を出す父とそういう事を嫌う娘。
折り合いが良い筈がない。
それだけじゃなく、私の場合この通り思った事はずけずけと言うタイプだから、猶更父ぶつかった。
父は男尊女卑主義者なので、一人前にモノを言う私が目障りだというのもあるのだろう。
分かっている、女だてらに政治や経済に興味を持ち造詣も深いような私が、貴族界ではかなり異端だって事は。
しかもその才が父より秀でてるんだから、面汚しの上にさぞかし邪魔な事だろう。
その上特に最近は、夜会で「今後の我が国の経済発展について」という話をして意気投合し、それ以降は度々王宮に呼ばれてお茶会という名目で議論したり、簡単な雑用仕事を一部手伝ったり。
つまるところ、急に訪問しても通されるくらいには殿下とも仲良くしてるのだ。
「こういう伝手を持ってしまった私の事を、お父様はどうやら『自分を追い立てて女侯爵になろうとしている』と思ってるみたいなのよね。私には全くその気が無いのに」
「……一応それ以外にもあるだろう? その……」
「あぁ、もしかして『殿下と男女の仲なんじゃないか』っていうあの噂? まったくバカらしいわよね、私達は友人なのに」
そう言いながら「そうか、それならもしかしたら『殿下の妃になって上から物を言えるような立場を手に入れようとしている娘』にも見える訳か、今の私は」と思い直す。
が、私としては、全くその予定はない。
気兼ねなく政治・経済の話ができる相手というのはとても貴重だ。
他の令嬢にはそもそもそんな知識は無いし、こういう私を子息はたいてい敬遠するか馬鹿にする。
少なくとも殿下ほど、きちんと興味を持って話を聞いて自分の考えを述べてくれる人は居ない。
だから「そんな相手との間に色恋なんてものを挟んで、万が一にも無くしてしまうのはとても惜しい」と思っているのが実のところだ。
まぁこれは秘密だけど……と、これはとりあえず置いといて。
「……ねぇ殿下」
「何?」
「とこでその手紙の中身、他にも何か書いてたんじゃない?」
そう尋ねれば、殿下がちょっと驚いたような顔をした。
だけど一体何を驚く事があるんだろう。
父の立場と性格を考えれば、そんなのは一目瞭然なのに。
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