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第10話 お礼の手紙は嗜みですよ?(1)
しおりを挟む「はぁ? お前が俺を好いていない筈がないだろう」
「いえ、一瞬だって、一ミリだって殿下を好ましく思った事はありませんよ」
「えっ、何で」
「むしろ私の方がお聞きしたいです。今までの交流の、一体どこにそんな余地があったとお思いですか?」
だって殿下は、いつだって私を嫌っていた。
勝手に突っかかってきて、勝手に負けて拗ねたり八つ当たりしていたではないか。
「殿下からの暴言で、私に一体どれだけの被害があったかご存知ですか?」
「俺は暴言なんて吐いた事はない! 俺が何か言ったとしたら、それは全て事実だからだ!」
「そうですよ! 殿下は意味もなく人を貶めるようなかたではありません!」
残念にも、殿下は私の言葉を飲み込み考えるのではなく、気に食わない言葉を訂正するところから入った。
そんな彼を、私は冷静な目で真っ直ぐに見据える。
(今まで私は、彼を「能力不足な点はある」と思っていた。でも決して「馬鹿だ」と思った事はない。それが今そう思う事になるなんて。……それもこれも、間違った肯定をする人間を隣に置いているからかしら)
つくづく対局が見えていない人だとは思っていたが、これは全く意味のない一手だ。
おそらく何かしらのプライドに障ったのだろうけど、そんな邪魔な物、捨ててしまえ。
そして同時に、間違った肯定で互いに互いを守りたいのならそうすれば良い。
そんな甘やかして人をダメにするぬるま湯には、是非とも2人だけで浸かっていてくれ。
お願いだからその水を私に向かって投げてくれるな。
「貴方のその軽率な言動のせいで、殿下の周りの方達は皆『殿下の婚約者』という立場の私に嘲笑と蔑みと侮蔑の視線を浴びせてきました。そんな時に追い詰めこそすれ助けてもくれなかった人間を、一体どうして好きになんてなれるのですか?」
そんな事ができるのは、それこそきっと精神的苦痛を快楽に置換できる真性の変態くらいなものだろう。
「しかしお前は全くこたえていなかっただろう」
「そのように振る舞うのが私の義務でしたから。殿下の婚約者が背中を丸めて小さくなっていては、周りに示しがつかないでしょう」
特に学校に入って暫くは、周りの扱いがかなりこたえた。
だってそうだろう。
殿下の周りに侍る子女とは、立場上仲良くすべき相手だった。
なのに彼らから心ない言葉や態度を浴びせられ、どうして平気でいられるだろう。
例え誰から言われても傷付く事を言われてされて、別に仲良くしたくない相手に不毛な努力をし続けなければならないのである。
どれだけ途方がなかった事か。
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