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第一章:奔走する者と、機を待つ者。
第6話 筆頭執事・バエルの調査結果(1)
しおりを挟む翌日の夕方。
グランは執務机の前に座っていた。
深酒をしたわけでもないのにガンガンと頭が痛むのは、きっと昨日一睡も出来なかったせいだ。
そのせいで椅子には座っていても、執務など全く手につかない。
気持ちも作業進度も、どう考えても最悪。
それがグランの今である。
そういう訳だから、彼の醸し出す空気はひどく悪かった。
そんな中、コンコンコンという音が室内に響き渡る。
執務室のドアの、ノック音。
それに、不機嫌さをまるで隠す気のない低い声が「誰だ」と応じる。
その声に、室内にただ1人待機させられていたメイドの肩が大きくビクリと飛び跳ねた。
彼女は、それが自分に向けられたものではないと分かっていた。
それでもこの公爵家当主の機嫌の悪さには、怯えずにいられない。
そんなメイドの様子にまるで気付かない彼が睨んだ、ノックされたその扉。
その向こうから「バエルです」という冷静な声が返ってきた。
それは、グランが昨夜から今か今かと待ち望み続けた人物の声である。
「入れ」
短く急かすその声に、扉が開く。
そして現れたのは、彼の筆頭執事。
昨日グランに追従して例の夜会に出席した執事の彼だ。
バエルは昨日、直々に『今社交界で流れているクラウンの噂について』の調査を命じら、すぐに動き始めた。
そんな彼が、今大きな茶封筒を小脇に抱えてやってくる。
即ちそれは主人への報告準備が整ったという事だろう。
入室すると、まずバエルは『人払い』という名目で室内に待機していた震えるメイドを部屋の外へと解放した。
そして。
「ご指示いただいた件について、調べてまいりました」
ホッとした様子のメイドの背中が扉の向こうに消えたところで、そう言いながら彼は封筒の中身を取り出す。
そしてそれを彼に手渡してから、その概要を誦じた。
まずは、事の次第について。
基本的には昨日クラウンが話した内容と、ほぼ変わらない。
つまりそれは、事実に非常に近い噂が周りに拡散されてしまっているという事実を確定づける物である。
残念な事だが、それが現状だ。
グランは苦い顔で深く頷く。
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