【完結】伯爵令嬢が効率主義の権化だったら。 〜面倒な侯爵子息に絡まれたので、どうにかしようと思います〜

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第一章:奔走する者と、機を待つ者。

第8話 あるようで無い選択肢(2) ★

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 「花の妖精のよう」という言葉がしっくり来るような容姿の令嬢・セシリア。
 そんなたった10歳の子供の抜け目のない立ち回りに、思わず「見事だ」と称賛する。


 今回の件、流石に彼女の策略だという事はないだろう。

 果たして偶然の産物か、母親の策略か。
 その答えは分からないが、確かなことが一つだけある。

 それは、彼女が落ち度のある行動を何一つ取っていないという事だ。


 あちらの行動に落ち度が無いからこそ、こちらは付け入る隙がない。
 それを「見事」と言わずして何と言うのか。


(やはりあの時の私の判断は間違っていなかった)

 グランはそう独り言ちる。


 あの時というのは、彼女に初めて会った6年前だ。

 その時の彼女に目をつけた理由は、2つ。
 1つ目は、容姿が将来有望そうだった事。
 そして2つ目は、4歳にして綺麗なカーテシーをしながら自己紹介をしてきた事。

 それはあまりに年齢にそぐわない振る舞いだった。
 しかし同時にとても印象的で、そこに将来の有望さを見て、嫁入りを打診した。

(うんうん、流石は私)

 そんな風に過去の自分を自画自賛する。



 彼は夢にも思わない。
 その彼女が、今回の件を意図的に引き起こしているなどという事は。

 幾重にも策を織り込んで逃げ道を塞いでいくそのやり口が、彼の嫌いなワルターによく似ていたからこそ父親の関与を疑いはしたが、彼が思い至ったのはそこまでだった。


 宿敵・ワルターへの関与を思い苛立ちが感情を収める器から決壊しそうな気配を感じて、グランはそこで思考を辞めて眉間を揉み解す。

 忘れていた頭痛がぶり返してきた気がする。

 それもこれも、全て。

(ワルターのせい、そしてこの面倒な噂のせいだ)

 昨日から眠れていない。
 お陰で今の自分は疲労困憊だ。

 そしてだからこそ、思考が変な方向に脱線してしまう。


 今すべきは感情に振り回される事ではなく、今の状況を打開する事だ。
 そう自分に言い聞かせて、グランは思考を無理矢理軌道修正した。


 そして、心中で呟く。

(――まずは謝罪の手紙を書かねばなるまいな)

 そうして仰いだ天井は、いつもと何ら変わりない。
 しかし何故か、グランには少しくすんで見えたのだった。


 ***


 同日、午後。
 グランはオルトガン伯爵家に対して手紙を書いていた。

 内容は、今回の件についての謝罪。
 そして仲直りの為の、我が家のお茶会への招待である。

 そのお茶会は以前から予定していた物でで、開催日は4日後。

 既に出席者なども決まっているが、そこにオルトガンを追加して、両者の和解を大々的に周りに示す。
 そうすれば最短で事が解決できると考えたのだ。

 元々予定していたお茶会だから、この手紙以外は特に追加で何かをする事もない。
 楽に事が片付く方法を思いついて、グランは鼻歌まじりに謝罪文を書き上げる。


 そうして完成したものを3秒ほど眺めてから、グランは「うむ」と頷いた。

(これならば、アレも快くこちらの謝罪を受け入れ、喜んで要望を呑む事だろう)

 そんな風に思いながら、その手紙をすぐに届ける様に指示する。

 王都のオルトガン伯爵邸は、モンテガーノ侯爵邸から馬車で約15分。
 すぐに届けたとして、今日中には返事が届くだろう。

 受け取ってすぐに読み、返事を書いて送り返す。
 その手順と所要時間を大まかに算出しながら、グランは満足げに笑う。


 この時、グランは実に清々しい思いだった。

 返事が来るのが待ち遠しい。
 そんな風に思いながらも「まぁ向こうからの返事など、返事を待たずとも分かっているがな」と思いもする。


 彼はきっと、世界は自分を中心に回っているという幻想を信じて疑っていなかった。

 それはもしかしたら少しくらいは昨夜からずっと張りつめていた緊張の糸が緩んだせいもあるかもしれないが、彼元来の気性も原因だっただろう。


 ――結局その日、オルトガン伯爵邸から返事は返ってこなかった。



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 当該話数の裏話を更新しました。
 https://kakuyomu.jp/works/16816410413976685751/episodes/16816410413976954629

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