【完結】伯爵令嬢が効率主義の権化だったら。 〜面倒な侯爵子息に絡まれたので、どうにかしようと思います〜

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第一章:奔走する者と、機を待つ者。

第19話 貴方ならば、どうするか(2)

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 しかしそれでも、ゼルゼンは後悔を吐く。

「……私は、事前にクラウン様が『おかしな行動』をする可能性に触れていました。にも関わらず、彼の行動を予測出来ず、セシリア様のへの『粗相』を許してしまった」

 これは、一種の懺悔だった。

 しかしただの懺悔では無い。
 自分の停滞を許さない、更なる高みを目指す者の懺悔だった。

 そしてそんな高い向上心を持つ人間を、マルクが好まない筈がない。

「貴方の言う『おかしな行動』というのは、以前の報告にあった『クラウン様とエドガー様の会話について』の事でしょうか」

 まずは彼の言葉を紐解くべく、確認の言葉を発する。

「そうです。私はその不穏な会話を聞いていました。それなのに、クラウン様が近付いてきたあの時。……私は警戒を怠りました」

 状況を回避する為の情報は、確かに自分の手のひらの上に乗っていた。
 それなのに、それを上手く活かす事ができなかった。

 その結果、主人が被った不利益を彼は後悔しているのだ。

「もしも私があの時きちんと警戒出来ていれば、ドレスが汚れるような結果にはならなかったかもしれません」

 そこに居るだけならば、ただの木偶の坊と同じだ。
 付き人の意味がない。

 彼はそう、先日の自分を吐き捨てる。
 そして、こんな不安も口にした。

「……もしもあの方が手に持っていたのが、ジュースでは無く刃物の類だったら……取り返しが付きません」

 そう言って、自責の念に堪える様にギュッと拳を握り込む。


 そんな彼を、マルクはまず冷静に、且つ客観的に考える。


 もしもクラウンが持っていたのが凶器だったなら。
 それはある意味、的外れな危惧だろう。

 何故なら、それはあの場を警備していた王城所属の騎士達の領分なのだから。

 しかし。

(付き人である以上に、主人を様々なモノから守りたい。そう思う気持ちは、執事として間違っていはいない)

 だからこそ『執事としての闘い方』を少し教えてやる必要があるだろう。

「明日。セシリア様がデビュー以降、初の社交に参加されます。その際に同じ轍を踏むわけにはいきません」

 彼はそう言うと、強い目を向けてきた。
 そして「だから」と芯のある声で言葉を紡ぐ。

「……私はあの時どう行動すれば正しかったのか、マルクさんならあの場でどのように動いたのか。教えてください、マルクさん」

 その声は、ただひたすらに真摯だった。

 そんな彼に育ってくれた事を、マルクは内心で喜んだ。
 しかしそれは心の内だけだ。

 何故なら、今彼が求めているのは賞賛や慰めの言葉なんかじゃない。
 先に進む為の力なのだから。

「良いでしょう」

 教師の目で、マルクが答えた。

 すると、彼も途端に教えを乞う生徒の目になる。


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