【完結】伯爵令嬢が効率主義の権化だったら。 〜面倒な侯爵子息に絡まれたので、どうにかしようと思います〜

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第二章:初めての社交お茶会に出向く。

第10話 流石に上手い(2)

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 確かにクレアリンゼは自身の言葉でほんの少し、彼に本音を言話せるような誘導はしていた。

 しかし、ほんの少しだけだ。
 その程度で本当に本音を漏らしてしまう彼の考え無しさ加減には、セシリアだって流石に呆れざるを得ない。

(あぁほら、そんなこと言っちゃうから)
 
 彼女がそんな言葉を心中で呟いたのは、彼の楽しそうな声色と反比例して、母の機嫌が急降下しているのを確かに肌で感じるからだ。

 そして。

(……もういいや、どうとでもなれ)

 と、思考を放り投げた時だった。 

「そのような物言いはお2人に対して失礼ですよ、旦那様」

 考え無しを止める女性の声が、室内へと入ってきたのである。



 声の方へと視線を向けると、度部屋の出入り口から入ってすぐの所に1人の女性が佇んでいる。

 明るい空色のドレスに身を包んだ、清楚で気品のある、その女性。

(――なるほど、彼女が)

 彼女の名も立場も、人物評価も。
 セシリアの頭にはきちんと入っていた。

 その上で今の彼女の言動を「流石に上手いな」と、心の中で評する。


 確かに彼の言葉は、クレアリンゼに対しては勿論、彼が否定したクレアリンゼの結婚の結果生まれたセシリアに対しても失礼な代物である。

 それをはっきり口に出して嗜める事で、彼女はこちらの溜飲を下げさせた。
 そしてその上で、ヴォルド公爵のこれ以上の暴言を封じて見せたのだ。


 事前情報に加え、先程からの言動やこの応接室の調度品達を見て分かるように、ヴォルド公爵という人はプライドが非常に高い。

 勿論、女に指図される事など好む筈もない。


 だから、先程の彼女は終始声色を柔らかくしていたのだ。
 その言葉が彼の間に障る響きに、ならないように。


 その両者を両立させる為には、両者に関する絶妙なバランス感覚が必須だ。
 だからこそ、セシリアは「上手い」と評したのだった。



 しかし彼女のそんな配慮に、まるで気づかない人物がいた。
 ヴォルド公爵だ。

「あぁ、いやぁこれは失礼した」

 彼は笑いながらごくごく軽い声でそう一言だけ言うと、それでこの話を終わらせる。

 そして「それで」と言いながら、自身の視線をクレアリンゼの隣へと滑らせた。

「君があの“噂”の『オルトガンの御令嬢』か……」

 その声で、セシリアはやっとこの場での発言権を得る。

「初めまして、ヴォルド公爵。オルトガン伯爵が第三子、セシリアと申します」

 丁寧な礼を以って彼の声に言葉を返したのとほぼ同時に、不躾な視線がセシリアの全身を舐めた。

 そして、下世話な顔でニヤリと笑う。


 その笑顔に、セシリアは酷い寒気を覚えた。
 しかし。

(絶対に表に出しちゃいけない)

 そう自身に言い聞かせ、悪寒に耐える。
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