59 / 78
第二章:初めての社交お茶会に出向く。
第13話 セシリアの了承(1)
しおりを挟む例の噂についてはあらかじめ、その内容を母経由で聞き及んでいた。
それと比べると、彼が今言った言葉は数段マイルドな言い回しになっている。
しかしその噂を要約すれば、同じ答えになるだろう。
つまり。
(私の認識通りの噂が、彼の耳にもきちんと届いてる)
これなら同じ噂を軸にして、話し合いができそうだ。
そんな事をセシリアが密かに確認していると、ヴォルドは一度大きく咳払いをした。
そうやって、まるで口の中に残る苦さを追い出す様にしてから、言葉を続ける。
「そしてその噂と共に、オルトガン伯爵家とモンテガーノ侯爵家の不仲説があちこちで囁かれている」
ここまで言うと、公爵は一度言葉を止めた。
そしてしたり顔になって、こんな事を言ってくる。
「――自分よりも爵位の高い家との不仲説だ、そちらもさぞかし困っている事だろう。そこで、だ。和解をし、今日のお茶会で大々的にそれを示してはどうかと思ってな」
その物言いに、セシリアは思わず吐きそうになったため息を慌てて飲み込んだ。
しかしその心情は。
(何言ってるの? この人)
である。
こちらは別に侯爵との不仲説で困る事など何一つ無い。
(困っているのは、寧ろあちらでしょうに)
心中で、そんな呆れの声を発さずにはいられない。
しかしそんなセシリアの内心は、ものの見事に社交の仮面によって隠されている。
レレナならば未だしも、公爵にバレるような強度に作ってはいない。
だからだろうか、こちらの呆れ具合にいは全く気付かずに彼は更に言葉を重ねる。
「幸い今日のお茶会は色々な人間を招いている。両者の仲睦まじい姿を見せれば、噂などすぐに消えるだろう」
そう言うと、公爵は満足げな顔になった。
どうやら言いたい事は全て言ったらしい。
ここまでの彼の言動を要約すれば、こういう事になる。
和解はこちらから提案してやる。
御膳立てもしてやった。
お前達はこちらの思惑通り動け。
そしてこちらの役に立つのだ。
おそらくこれは、彼の本心からそうズレてはいないだろう。
この件に対するあちら側スタンスは、あくまでも「仕方が無くこちらが折れてやった」である。
今回の件に対して、おそらく反省はしていない。
彼らが今しているのは、反省し改善するのではなく、ただの『現状への対処』だ。
「どうだ? 良い話だろう」
ヴォルド公爵からのそんな言葉に、クレアリンゼは困ったように首を傾げた。
「私はあくまでも当事者の近親者です。当事者に聞いてみませんと――」
我が家では『自分の事は自分で決める様に』と子供達には教育しておりますので。
そう言いながら、クレアリンゼがセシリアへと視線を向けた。
すると、その視線を受け取ったセシリアはニコリと微笑む。
3
あなたにおすすめの小説
最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である
megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。
慈愛と復讐の間
レクフル
ファンタジー
とある国に二人の赤子が生まれた。
一人は慈愛の女神の生まれ変わりとされ、一人は復讐の女神の生まれ変わりとされた。
慈愛の女神の生まれ変わりがこの世に生を得た時、必ず復讐の女神の生まれ変わりは生を得る。この二人は対となっているが、決して相容れるものではない。
これは古より語り継がれている伝承であり、慈愛の女神の加護を得た者は絶大なる力を手にするのだと言う。
だが慈愛の女神の生まれ変わりとして生を亨けた娘が、別の赤子と取り換えられてしまった。
大切に育てられる筈の慈愛の女神の生まれ変わりの娘は、母親から虐げられながらも懸命に生きようとしていた。
そんな中、森で出会った迷い人の王子と娘は、互いにそれと知らずに想い合い、数奇な運命を歩んで行くこととなる。
そして、変わりに育てられた赤子は大切に育てられていたが、その暴虐ぶりは日をまして酷くなっていく。
慈愛に満ちた娘と復讐に駆られた娘に翻弄されながら、王子はあの日出会った想い人を探し続ける。
想い合う二人の運命は絡み合うことができるのか。その存在に気づくことができるのか……
悪役女王アウラの休日 ~処刑した女王が名君だったかもなんて、もう遅い~
オレンジ方解石
ファンタジー
恋人に裏切られ、嘘の噂を立てられ、契約も打ち切られた二十七歳の派遣社員、雨井桜子。
世界に絶望した彼女は、むかし読んだ少女漫画『聖なる乙女の祈りの伝説』の悪役女王アウラと魂が入れ替わる。
アウラは二年後に処刑されるキャラ。
桜子は処刑を回避して、今度こそ幸せになろうと奮闘するが、その時は迫りーーーー
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む
家具屋ふふみに
ファンタジー
この世界には魔法が存在する。
そして生まれ持つ適性がある属性しか使えない。
その属性は主に6つ。
火・水・風・土・雷・そして……無。
クーリアは伯爵令嬢として生まれた。
貴族は生まれながらに魔力、そして属性の適性が多いとされている。
そんな中で、クーリアは無属性の適性しかなかった。
無属性しか扱えない者は『白』と呼ばれる。
その呼び名は貴族にとって屈辱でしかない。
だからクーリアは出来損ないと呼ばれた。
そして彼女はその通りの出来損ない……ではなかった。
これは彼女の本気を引き出したい彼女の周りの人達と、絶対に本気を出したくない彼女との攻防を描いた、そんな物語。
そしてクーリアは、自身に隠された秘密を知る……そんなお話。
設定揺らぎまくりで安定しないかもしれませんが、そういうものだと納得してくださいm(_ _)m
※←このマークがある話は大体一人称。
この記憶、復讐に使います。
SHIN
恋愛
その日は、雲ひとつない晴天でした。
国と国との境目に、2種類の馬車と数人の人物。
これから起こる事に私の手に隠された煌めく銀色が汗に湿り、使用されるのを今か今かとまっています。
チャンスは一度だけ。
大切なあの人の為に私は命をかけます。
隠れ前世の記憶もちが大切な人のためにその知識を使って復讐をする話し。
リハビリ作品です気楽な気持ちでお読みください。
SHIN
悪役令嬢に仕立て上げたいなら、ご注意を。
潮海璃月
ファンタジー
幼くして辺境伯の地位を継いだレナータは、女性であるがゆえに舐められがちであった。そんな折、社交場で伯爵令嬢にいわれのない罪を着せられてしまう。そんな彼女に隣国皇子カールハインツが手を差し伸べた──かと思いきや、ほとんど初対面で婚姻を申し込み、暇さえあれば口説き、しかもやたらレナータのことを知っている。怪しいほど親切なカールハインツと共に、レナータは事態の収拾方法を模索し、やがて伯爵一家への復讐を決意する。
王女の夢見た世界への旅路
ライ
ファンタジー
侍女を助けるために幼い王女は、己が全てをかけて回復魔術を使用した。
無茶な魔術の使用による代償で魔力の成長が阻害されるが、代わりに前世の記憶を思い出す。
王族でありながら貴族の中でも少ない魔力しか持てず、王族の中で孤立した王女は、理想と夢をかなえるために行動を起こしていく。
これは、彼女が夢と理想を求めて自由に生きる旅路の物語。
※小説家になろう様にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる