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第二章:初めての社交お茶会に出向く。
第18話 受け取り拒否 ★
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セシリアの目の前には、謝罪を息子に擦りつけた侯爵と、ソレを明らかに嫌がる息子の姿がある。
クラウンは、この現状にかなりの不満を抱いているのだろう。
何故この俺がお前なんかに謝らねばならない。
そんな気持ちが、くっきりとその表情に浮き彫りになっている。
(『目は口ほどに物を言う』とはよく言ったものだ)
むしろ口よりもよほど雄弁に、その感情を吐露してくれているのだから世話は無い。
2人は、結局折れるだろう。
しかしそんな彼らの心中は、おそらくこうだ。
『本当は謝罪の意志等無いが、事を収める為には仕方が無い』
例えば彼らが、そんな心中を隠す努力をしてくれていれば良かったのだ。
それならば、こちらも「波風を立てない為に」という免罪符の下、更なる『面倒』へと自ら飛び込むという暴挙を取らなくて済んだ。
しかし。
(彼らは2人して、此処に居合わせている誰もがその心中を容易に推し量れるような表情を浮かべている)
これではこちらも免罪符を掲げようが無い。
ここまであからさまな態度に騙されてやるなど、自分の無能を晒しているも同じだし、相手に「分かっていてソレでもそちらの意見を呑んだのだ」と見せたなら、それはそれで問題だ。
だってそれは「舐められていると明確に理解した上で、彼らの意を汲んだ」という事になるからである。
これでは「どうぞ舐めてください」と言っているのと変わらない。
(貴族にとって一番大切な事は、相手に如何に舐められないか)
それは自身のプライド云々の問題ではない。
貴族は、舐められない事で周りと対等な関係性を築く事ができる。
そしてそうやって築いた関係性は、相手からの無理難題の防波堤となり、間接的に領地を守る事ができる。
(貴族の面子は、領地や領民を守る為の盾に他ならない)
そう、セシリアは独り言ちる。
社交で無能を晒す、または「どうぞ舐めてください」と公言する。
それは正しく致命的だ。
そんな事をすれば、今後様々な権力的ごり押しが領地を襲うだろう。
それでも、普通なら「致し方なし」としただろう。
それほどまでに、貴族における権力とは強力な力なのである。
しかし殊『貴族の義務』に並々ならぬ信念を持っている家などには、むしろ逆効果だろう。
セシリアは、思う。
(今までは、あくまでも『個人の抱く感情』の範疇だった)
貴族たる者、自分の感情で動いてはならない。
領民に還元できる物事を第一に考え、私事を廃し、領地の旗頭である家の為に行動する。
それが、伯爵家の教育だ。
だからこそ、領民や領地の益となる為に自分の感情を納得させる事で折り合いを付ける。
それが出来た。
しかし。
(これは領地の領民にまで影響が及びかねない事態だ)
それだけは、絶対に許容出来ない。
この現状でクラウンの謝罪を受け取る行為は、領地を守る盾を投げ棄てる事と同義だ。
そして伯爵家の教育上、それは決して許される事ではない。
セシリアは、チラリと母を見やった。
すると母の瞳と視線がかち合う。
その瞳が、言っていた。
「やってしまいなさい」と。
その瞳を確認し、心中で「あぁ」と一つため息を吐く。
セシリアは、面倒な事が大嫌いだ。
しかしそれでも。
(これは私が『しなければならない事』。なら、仕方が無い)
自身のこの決定による今後も影響も『面倒』も、その全てを『貴族の義務』として認定して、セシリアはスゥッと息を吸う。
そして。
「悪かっ――」
「謝罪は不要ですわ」
クラウンの声を遮って、セシリアはそう言葉を発したのだった。
↓ ↓ ↓
当該話数の裏話を更新しました。
https://kakuyomu.jp/works/16816410413976685751/episodes/16816410413976977344
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