【完結】リクエストにお答えして、今から『悪役令嬢』です。

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!

文字の大きさ
1 / 16

第1話 『悪役』らしく、私は笑う

しおりを挟む


 謁見の間。
 その真ん中に、私は1人立たされている。

 王族達が皆揃って座し、貴族達が控える。
 そんな部屋の真ん中でみんなからの視線を一心に浴びて、私は王に懇願していた。

「私はその様なこと、決してしてはおりません! もう一度調査をし直していただければ――」
「うるさい黙れ! 言い訳をするなど、あまりに見苦しいぞ!」

 私が勇気を振り絞って行った反論混じりの進言は、全てを言い終わる前に途中で遮られた。

 その声のあまりの激しさに、思わずビクリと肩を震わせる。

「お前は私の婚約者としてあるまじき行いをした! 裏で国庫を荒らし、他貴族達には次期王妃としての権力を振りかざし、あまつさえ1人の令嬢に陰湿なイジメまでもを行った! 幾ら言い訳をしたところで、その事実は決して揺るがないぞ!」

 王子から並べ立てられたそれらの罪状は、全て身に覚えの無いものだった。
 しかし私は、それを奥歯を噛み締めながら聞いている事しかできない。

 
 彼らに逆らう事は決して許さない。
 お前は国のためではなく、王族の為に生きるのだ。

 私は親に、そう言われて育てられた。
 今やそれは、私の中では不文律。
 そんな私にとって、彼の言葉は絶対だった。

 聞き分けのいい子として存在し、決して逆らわず、時には目を瞑る。
 そうやって、今まで私は自分の心に蓋をしてきた。
 

 しかし、神からの祝福か、それとも悪魔の悪戯か。
 そんな私に一つの転機が訪れる。

「お前は私の婚約者として、あるまじき言動をした。お前は今や『悪』でしかない!」
「せっかく目をかけてあげたというのに……」
「王太子との婚約を今ここで破棄し、明日の朝、公開斬首の刑に処する。それまでの短い時間、牢の中で精々自身の行いを省みるのだな」

 王子、王妃に続いて、最後に王の声で沙汰が下された。
 
 正式に下された沙汰に、周りがざわめいた。
 しかしそんな事、正直今はどうでもいい。

(先ほど、なんと言いました……?)

 私にとって今大切なのは、そっちじゃない。


 ――お前は『悪』だ。

 王子の言ったその言葉が、頭の中をリフレインする。
 今周りから与えられているのは、嫌悪や嘲笑。
 突き刺さるそれらの悪意が言っている。
 私たちは王子の言葉に賛同する、と。
 
 その瞬間、私の中で何かのスイッチが切り替わった。

(私は今、この場の全員に『悪』である事を望まれている……?)

 自分の中にあった感情枷が、大きな音を立てて弾け飛んだ気がした。


 これまでの私は、彼らの言葉に、態度に、やりように、ずっとずっと我慢をしてきた。
 しかし、もう耐える必要はない。

 そう誰かに背中を押してもらったような気持ちになって。

(私は『悪』を、望まれている)

 彼らにとっての『悪』とは、すなわち彼らへの反抗だ。
 少なくとも今の私にはそう思えた。
 そしてそれは、まるで夢の切符を得た様にも思えた。

「――なるほど」

 か細く懇願する、そんな声を出す必要はもう無い。
 だって周りが望む『悪役』は、きっと堂々と胸を張って『悪』を行う筈だから。

 だからお腹に力を入れて、微笑を湛えて、まるで演説でもするかのようにハッキリと言葉を紡ぐ。

「貴方方が私に『悪役』を望むのなら、私はそれに答えましょう」

 そう、いつもそうしてきた様に。
 そうして浮かべられた笑みは、『悪役』におあつらえ向きの実に強い笑みだった。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

偽りの断罪、真実の愛~追放悪役令嬢は隣国の冷徹公爵(実は一途な狼)に娶られ、甘く蕩けるほど愛される~

放浪人
恋愛
侯爵令嬢エレオノーラは、長年婚約者であったエドワード王子から、夜会の席で突然の婚約破棄を告げられる。 「真実の愛を見つけた」と隣に可憐な男爵令嬢リリアナを伴う王子。 身に覚えのない罪状を次々と並べられ、「悪役令嬢」として断罪されるエレオノーラ。 しかし彼女は知っていた。これは全て、自分を陥れるための茶番劇であることを。 国外追放を言い渡され、全てを失ったかに見えたエレオノーラだったが、そんな彼女に手を差し伸べたのは、以前から彼女に注目していた隣国の若き公爵アレクシスだった。 冷徹と噂される彼だが、エレオノーラにだけは見せる顔があるようで…? 「お前の無実は、私が証明する。そして、必ずお前を私のものにする」 不遇の令嬢が、一途な男性からの強引なまでの寵愛を受け、やがて真実の愛に目覚める溺愛ラブストーリー。

わたくしが悪役令嬢だった理由

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、マリアンナ=ラ・トゥール公爵令嬢。悪役令嬢に転生しました。 どうやら前世で遊んでいた乙女ゲームの世界に転生したようだけど、知識を使っても死亡フラグは折れたり、折れなかったり……。 だから令嬢として真面目に真摯に生きていきますわ。 シリアスです。コメディーではありません。

婚約破棄された王太子妃候補は第一王子に気に入られたようです。

永野水貴
恋愛
侯爵令嬢エヴェリーナは未来の王太子妃として育てられたが、突然に婚約破棄された。 王太子は真に愛する女性と結婚したいというのだった。 その女性はエヴェリーナとは正反対で、エヴェリーナは影で貶められるようになる。 そんなある日、王太子の兄といわれる第一王子ジルベルトが現れる。 ジルベルトは王太子を上回る素質を持つと噂される人物で、なぜかエヴェリーナに興味を示し…? ※「小説家になろう」にも載せています

婚約破棄ですか? ならば国王に溺愛されている私が断罪致します。

久方
恋愛
「エミア・ローラン! お前との婚約を破棄する!」  煌びやかな舞踏会の真っ最中に突然、婚約破棄を言い渡されたエミア・ローラン。  その理由とやらが、とてつもなくしょうもない。  だったら良いでしょう。  私が綺麗に断罪して魅せますわ!  令嬢エミア・ローランの考えた秘策とは!?

【完結】死に戻り8度目の伯爵令嬢は今度こそ破談を成功させたい!

雲井咲穂(くもいさほ)
恋愛
アンテリーゼ・フォン・マトヴァイユ伯爵令嬢は婚約式当日、婚約者の逢引を目撃し、動揺して婚約式の会場である螺旋階段から足を滑らせて後頭部を強打し不慮の死を遂げてしまう。 しかし、目が覚めると確かに死んだはずなのに婚約式の一週間前に時間が戻っている。混乱する中必死で記憶を蘇らせると、自分がこれまでに前回分含めて合計7回も婚約者と不貞相手が原因で死んでは生き返りを繰り返している事実を思い出す。 婚約者との結婚が「死」に直結することを知ったアンテリーゼは、今度は自分から婚約を破棄し自分を裏切った婚約者に社会的制裁を喰らわせ、婚約式というタイムリミットが迫る中、「死」を回避するために奔走する。 ーーーーーーーーー 2024/01/13 ランキング→恋愛95位 ありがとうございました! なろうでも掲載20万PVありがとうございましたっ!

悪役令嬢ベアトリスの仁義なき恩返し~悪女の役目は終えましたのであとは好きにやらせていただきます~

糸烏 四季乃
恋愛
「ベアトリス・ガルブレイス公爵令嬢との婚約を破棄する!」 「殿下、その言葉、七年お待ちしておりました」 第二皇子の婚約者であるベアトリスは、皇子の本気の恋を邪魔する悪女として日々蔑ろにされている。しかし皇子の護衛であるナイジェルだけは、いつもベアトリスの味方をしてくれていた。 皇子との婚約が解消され自由を手に入れたベアトリスは、いつも救いの手を差し伸べてくれたナイジェルに恩返しを始める! ただ、長年悪女を演じてきたベアトリスの物事の判断基準は、一般の令嬢のそれとかなりズレている為になかなかナイジェルに恩返しを受け入れてもらえない。それでもどうしてもナイジェルに恩返しがしたい。このドッキンコドッキンコと高鳴る胸の鼓動を必死に抑え、ベアトリスは今日もナイジェルへの恩返しの為奮闘する! 規格外で少々常識外れの令嬢と、一途な騎士との溺愛ラブコメディ(!?)

婚約破棄されたので田舎で猫と暮らします

たくわん
恋愛
社交界の華と謳われた伯爵令嬢セレスティアは、王太子から「完璧すぎて息が詰まる」と婚約破棄を告げられる。傷心のまま逃げるように向かったのは、亡き祖母が遺した田舎の小さな屋敷だった。 荒れ果てた屋敷、慣れない一人暮らし、そして庭に住みついた五匹の野良猫たち。途方に暮れるセレスティアの隣には、無愛想で人嫌いな青年医師・ノアが暮らしていた。 「この猫に構うな。人間嫌いだから」 冷たく突き放すノアだが、捨て猫を保護し、傷ついた動物を治療する彼の本当の姿を知るうちに、セレスティアの心は少しずつ惹かれていく。 猫の世話を通じて近づく二人。やがて明かされるノアの過去と、王都から届く縁談の催促。「完璧な令嬢」を脱ぎ捨てた先に待つ、本当の自分と本当の恋——。

悪役令嬢として断罪された聖女様は復讐する

青の雀
恋愛
公爵令嬢のマリアベルーナは、厳しい母の躾により、完ぺきな淑女として生まれ育つ。 両親は政略結婚で、父は母以外の女性を囲っていた。 母の死後1年も経たないうちに、その愛人を公爵家に入れ、同い年のリリアーヌが異母妹となった。 リリアーヌは、自分こそが公爵家の一人娘だと言わんばかりにわが物顔で振る舞いマリアベルーナに迷惑をかける。 マリアベルーナには、5歳の頃より婚約者がいて、第1王子のレオンハルト殿下も、次第にリリアーヌに魅了されてしまい、ついには婚約破棄されてしまう。 すべてを失ったマリアベルーナは悲しみのあまり、修道院へ自ら行く。 修道院で聖女様に覚醒して…… 大慌てになるレオンハルトと公爵家の人々は、なんとかマリアベルーナに戻ってきてもらおうとあの手この手を画策するが マリアベルーナを巡って、各国で戦争が起こるかもしれない 完ぺきな淑女の上に、完ぺきなボディライン、完ぺきなお妃教育を持った聖女様は、自由に羽ばたいていく 今回も短編です 誰と結ばれるかは、ご想像にお任せします♡

処理中です...