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2話
しおりを挟む今、ロビンは何と言った?
私を、妾にする?
この平民の女性ではなく?
「なぜ私が妾にならなければならないのですか?」
「君は正直に言って……僕に相応しくないと思う」
「相応しくないって……」
ロビン余りにも失礼なその言い分に私は閉口した。
これでも、私は婚約してからずっとロビンに釣り合うように努力してきた。
それなのに相応しくないと言うのは、今ままでの私の努力を否定するようなものだ。
私がどれだけ努力してきたかを知っていて、ロビンは悪びれもなくそんなことを言っている。
どうして、そんなに酷いことが言えるのだろう。
「そもそも、家の格は伯爵家、全く僕に釣り合っていないだろ?」
「家の格……? でも、それならデイジーさんは平民ですが……?」
私が伯爵家であるから、ロビンに釣り合わないと言うなら、デイジーは平民だ。もっと釣り合わない。ロビンの理論は矛盾している。
しかしそれを指摘すると、デイジーは悲しげな声を上げた。
「そんな……酷いっ!」
「は?」
私は事実を言っただけだ。それなのにデイジーは暴言を投げかけられたように泣き始める。
それを見た瞬間、ロビンは激昂した。
ロビンが私の頬を叩く。
部屋にバチン!と乾いた音が響いた。
「え?」
私は頬に触れた。
「デイジーを馬鹿にするなっ!!!」
ロビンは怒声を上げ私を睨みつけた。
「お前は地味だし、デイジーよりも美しくない! ずっと隣で歩かれるのが苦痛だったんだ!」
それは、ロビンが言ったことだ。
婚約者として目立つな、とロビンが命令したのだ。
私のせいでは無い。
「それに、お前は勉学でいつも私よりいい成績ばかり取る! 僕を立てたことなんて一度もない!」
私は厳しい教育のせいで悪い成績なんて取れないし、勉学でいい成績が取れないのは、努力不足としか思えない。
私のせいでは、無い。
「お前は──!」
ロビンは私のことを責め続けた。
私の献身も、気持ちも、全てを否定してロビンは私を攻撃する。
私の言葉で傷つけられたデイジーのために。
自分が傷つけた私のことなど、もうすでに忘れて。
(ああ──)
私は理解した。
ロビンがこんなに酷いことを言うのは、きっと十年以上側にいた私よりも、デイジーを選んだからだ。
十年間捧げた時間も、努力も、この人にとってはゴミみたいに捨てられるものなんだ。
そう思うと、今までのロビンに抱いていた婚約者としての情のようなものが一気に無くなっていくのが分かった。
もういい。
これ以上関わりたくない。
だから、私はロビンへと告げた。
「分かりました。なら、婚約を解消しましょう。私たち」
──お別れの言葉を。
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