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29話
しおりを挟むもうすでに、ロビンの意識は朦朧としていた。
何度も槍で突き刺され、しかし死なないように加減されていた傷からは雑菌が入ったのか腐り始めていた。
痛みは随分前に感じなくなっていた。
そのことに恐怖してもがいても、ここには医者がいないので、どうしようもなかった。
そして指ひとつ動かすこともできなくなった。
水を飲んだのはもう一日以上前のことだった。
喉はカラカラに渇いているが、「水をくれ」と言葉を発することすら出来ない。
ロビンは自分の人生を見返す。
ずっと窮屈だった。
貴族として生きることも。あらかじめ決められた婚約も。
しかしやっと、ただ一人の人間として見てくれる女性と出会ったと思ったら、ただ騙されているだけだった。
そして憎いメアリーに復讐するために下水道に潜りスラムのゴミを食べて生き延びて、最期は拷問にも等しい扱いを受けて、死にかけている。
(どこで間違ったんだ…)
やり直したい。
できることなら、最初から。
だけど、どこで間違ったのかもわからない。
「怖い……」
重くのしかかる、死の恐怖。
どれだけ逃げたくても、絶対に逃げることは出来ない。
ロビンは涙を流す。
今までの自分の行いを懺悔した。
父に、弟に、デイジーに、自分の犯した罪を心の中で謝る。
そして最後にメアリーとルイスに何度も謝った。
「うわっ。死んでるぞコイツ」
「構わん。処刑場まで持っていくぞ」
その日、囚人の一人が牢屋の中で死に、牢獄から連れ出された。
そしてその囚人は王族に傷を負わせた罪など、様々な罪により重罪人として死体のまま処刑された。
その後、罪人の死体は燃やすという慣例に従い、死体は燃やされ、牢獄の共同墓地へと埋められた。
元貴族だったロビンは名前すら刻まれることなく、数多の囚人と一緒に埋められ、人々の記憶から忘れ去られていった。
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