婚約破棄?構いませんが、当然慰謝料は貰えるんですよね?

水垣するめ

文字の大きさ
1 / 8

1話

しおりを挟む

 私には婚約者がいる。
 いや、いた。
 名前はデビット・ベイカー。伯爵家の跡取りの息子だ。
 私とデビットが婚約したのは私達が七歳の頃。
 デビットは容姿端麗でいつも冷静だったので、子供ながら私はずっとデビットに想いを寄せていた。
 こんなに素敵な人と婚約できるなんて、なんて運が良いんだろう、と思っていた。

 だから私はデビットに釣り合うように努力した。
 デビットが好きだと言った容姿に近づけ、デビットの支えになれるように、貴族令嬢を超えた技能を身につけた。
 それは当然簡単なことでは無かった。
 しかしデビットのためなら、と血の滲む努力を続けた。

 デビットに釣り合う女性になれるように。

「すまない、マリア。婚約を解消してくれ」

 別れは突然だった。
 ベイカー邸へと呼び出されて、やってきた私にデビットは単刀直入に別れ話を切り出した。
 隣には見知らぬ女性が座っている。

「彼女は……?」

「ああ、すまない。紹介が遅れた。彼女は男爵家のマーシャ・ロールズだ。一年前から付き合っている」

 待て、何かおかしな事を言っている。
 一年前から、付き合っている?
 私とデビットは婚約していたはずだ。

「ま、マーシャ・ロールズです! はじめまして!」

 マーシャと名乗った少女は頭を下げた。
 デビットの好む外見と全く一致している。
 そう言えば、彼は天真爛漫な人が好みだとも言っていたが、彼女は性格も天真爛漫なようだ。

「私はマリア・ウィンターです。伯爵家の娘です」

 私も表面上は、穏やかに笑う。
 内心では全く逆だったが。

「彼女とは学園で出会ったんだ。一目惚れだったよ。こんなに美しい女性がいるなんて」

 デビットは聞いてもいない話をうっとりと、いかにも美談を話している、といった表情で話し始めたが、私は辟易していた。
 何をもって婚約者の前でこんな話をしているのだろう。

「マリア、僕達は真実の愛に落ちてしまったんだ。だから頼む、潔く身を引いてほしい」

 私は怒りで表情が崩れそうになるのを我慢しなければならなかった。
 どの立場からそれを言っているのだろう。

 十年間デビットのために頑張ってきたけど、こんな人だとは思わなかった。
 婚約の解消? ちょうど良い。
 こんな人なら願い下げだ。

「分かりましたわ、デビット様。真実の愛があるのなら、私は身を引きます」

「……! ありがとうマリア!」

 デビットとマーシャが嬉しそうに顔を上げる。
 私はそれに向かってニッコリと笑みを返した。

「ですが、当然慰謝料は貰えるんですよね?」
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された私は彼に囚われる

青葉めいこ
恋愛
「エリザベス・テューダ! 俺は、お前との婚約破棄を宣言する!」 卒業パーティーで顔だけの皇子は、私、ベスことエリザベス・テューダに指を突きつけると、そう宣言した。 私の新たな婚約者となったのは、皇子の叔父である皇弟イヴァンだ。 私を手に入れるために馬鹿皇子に婚約破棄するように仕向けたというイヴァンは、異世界(日本)からの転生者である私の前世に大きく係わっていた。 主人公のベスは「妾は、お前との婚約破棄を宣言する!」の主人公リズの娘で、日本からの転生者です。 「妾は~」のネタバレがあります。 小説家になろうにも投稿しています。

婚約破棄されたので、その場から逃げたら時間が巻き戻ったので聖女はもう間違えない

aihara
恋愛
私は聖女だった…聖女だったはずだった。   「偽聖女マリア!  貴様との婚約を破棄する!!」  目の前の婚約者である第二王子からそう宣言される  あまりの急な出来事にその場から逃げた私、マリア・フリージアだったが…  なぜかいつの間にか懐かしい実家の子爵家にいた…。    婚約破棄された、聖女の力を持つ子爵令嬢はもう間違えない…

捨てられたなら 〜婚約破棄された私に出来ること〜

ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
長年の婚約者だった王太子殿下から婚約破棄を言い渡されたクリスティン。 彼女は婚約破棄を受け入れ、周りも処理に動き出します。 さて、どうなりますでしょうか…… 別作品のボツネタ救済です(ヒロインの名前と設定のみ)。 突然のポイント数増加に驚いています。HOTランキングですか? 自分には縁のないものだと思っていたのでびっくりしました。 私の拙い作品をたくさんの方に読んでいただけて嬉しいです。 それに伴い、たくさんの方から感想をいただくようになりました。 ありがとうございます。 様々なご意見、真摯に受け止めさせていただきたいと思います。 ただ、皆様に楽しんでいただけたらと思いますので、中にはいただいたコメントを非公開とさせていただく場合がございます。 申し訳ありませんが、どうかご了承くださいませ。 もちろん、私は全て読ませていただきますし、削除はいたしません。 7/16 最終部がわかりにくいとのご指摘をいただき、訂正しました。 ※この作品は小説家になろうさんでも公開しています。

王太子は婚約破棄騒動の末に追放される。しかしヒロインにとっては真実の愛も仕事に過ぎない

福留しゅん
恋愛
公爵令嬢エリザベスは学園卒業を祝う場にて王太子ヘンリーから婚約破棄を言い渡される。代わりに男爵令嬢パトリシアと婚約すると主張する王太子だが、その根拠にエリザベスは首をかしげるばかり。王太子は遅れてやってきた国王や王弟にもヘンリーは堂々と説明するが、国王と王弟からの反応は……。 ヘンリーは一つ勘違いしていた。エリザベスはヘンリーを愛している、と。実際は……。 そしてヘンリーは知らなかった。この断罪劇は初めからある人物に仕組まれたものだ、とは。 ※別タイトルで小説家になろう様にも投稿してます。そちらに合わせて改題しました。

【完結】悪役令嬢の本命は最初からあなたでした

花草青依
恋愛
舞踏会の夜、王太子レオポルドから一方的に婚約破棄を言い渡されたキャロライン。しかし、それは彼女の予想の範疇だった。"本命の彼"のために、キャロラインはレオポルドの恋人であるレオニーの罠すらも利用する。 ■王道の恋愛物(テンプレの中のテンプレ)です。 ■三人称視点にチャレンジしています。 ■画像は生成AI(ChatGPT)

婚約破棄されたけど、どうして王子が泣きながら戻ってくるんですか?

ほーみ
恋愛
「――よって、リリアーヌ・アルフェン嬢との婚約は、ここに破棄とする!」  華やかな夜会の真っ最中。  王子の口から堂々と告げられたその言葉に、場は静まり返った。 「……あ、そうなんですね」  私はにこやかにワイングラスを口元に運ぶ。周囲の貴族たちがどよめく中、口をぽかんと開けたままの王子に、私は笑顔でさらに一言添えた。 「で? 次のご予定は?」 「……は?」

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

婚約破棄を伝えられて居るのは帝国の皇女様ですが…国は大丈夫でしょうか【完結】

恋愛
卒業式の最中、王子が隣国皇帝陛下の娘で有る皇女に婚約破棄を突き付けると言う、前代未聞の所業が行われ阿鼻叫喚の事態に陥り、卒業式どころでは無くなる事から物語は始まる。 果たして王子の国は無事に国を維持できるのか?

処理中です...