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第六章「結びあう魂」
4、それぞれの決意
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「ねぇ、カエイン、リューク王が持つ『武王の剣』は覚醒しているの?
それとあなたの祖先が打った最上級の魔法剣で、現在使い手がいるのは何本?」
見上げて問うと、カエインは金色の瞳を細め、少し嬉しそうな顔で答える。
「まずリューク王はとっくの昔に覚醒している。
そして神の名がつくのはシアとエティーとレスター、王の名を冠する剣はセドとリューク王が持つもののみ。
他に俺の祖先が打った剣で国内にあって使い手がいるのは、デリアンの狂戦士の剣だけだ」
ということは覚醒した魔法剣は、向こうもこちら側も三本ずつか……。
先の内乱で兵数が勝っていたのにエリオット3世が敗北続きだったのは、王弟派に三つの最上級の剣が揃っていたせいだろう。
つまりこちらの軍の被害を減らすためには、相手の軍の覚醒剣持ちを優先して殺さねばならない。
セドリックも私と似たような考えに至ったらしく、はっきりとした声で明言する。
「僕はまっすぐリューク王を倒しに行くつもりだ」
レスター王子がそれに続く。
「じゃあ、俺はデリアンの元へ直行して首級をあげ、アレイシアへの求婚の捧げものにしよう」
セドリックはレスター王子をはっとしたように眺めたあと、急に表情を引き締めて一堂を見渡した。
「レスターとカエイン、他の方々も聞いて欲しい。
僕は王位を奪還しだい、ここにいるアレイシア・バーンを王妃に迎えるつもりだ。
そして二人で力を合わせてアスティリアを治め、平和を守ってゆこうと思う」
思いやり深いセドリックらしくない、完全に私の気持ちを無視したその公言は、これまでとは違う確固たる意志の表れのようだった。
皆が驚いたように言葉を失うなか、バーモント公が最初に賛意を示す。
「戦女神の申し子たる伝説の剣の持ち主ならば、聖王セドリック様の妻に相応しいかと」
「王の結婚祝いムードで、内乱後の暗い空気も一気に払拭されましょう」
サックス伯が追従したところで、どうにもいたたまれなくなった私は、退席するために立ち上がり挨拶する。
「申し訳ありませんが、お先に失礼させて頂きます」
テントに戻って中に入ると同時に横から腕を掴まれた。
「まさか本気で王妃の座を受け入れる気ではないよな?」
首だけ回してカエインの顔を見ると、ばっと腕を振りほどく。
「単に大事な会戦前に、人前でセドリックに恥をかかせて最高司令官としての威信に傷をつけたくなかっただけよ。
私は誰の求婚も受けないし、復讐を果たしたあとはアスティリアを出ようと思ってるわ」
離れがたい思いはあっても、セドリックに私は相応しくない。
その純粋な輝きが曇らないよう、戦いが終わったあとは速やかに離れなくては――
切ない溜め息をつき、敷物の上に腰を下ろすと、カエインも私に並んで長い脚を崩して座りこむ。
「もしも復讐を達成できなかった場合は?」
私は愚問だとばかりに鼻で笑う。
「どうもこうも、そうなったら死ぬだけだわ。
討ち死にできれば本望。もしもデリアンが他の者に殺された場合は急いで後追いするまでよ。
どちらにしてもカエイン、私が死ぬのをもう絶対に邪魔しないでね?」
語尾を強めて言うと、カエインはまるで針を飲み込んだような表情になった。
「分かっている。冥府で俺は、愛にかけてシアの意志を尊重すると誓ったからな。
でもくれぐれも忘れないでくれ。それはあくまでも『傍にいたいなら』という条件つきだったことを。
代わりに俺はこの先も永遠にシアと一緒にいるからな」
「死んでもってこと?」
「そうだ。また生まれ変わってもだ」
悪夢のようにうんざりする話だが、カエインの真顔から判断して、頷かないと死ぬことは許されないらしい。
「仕方ないわね。ただし、何度生まれ変わろうとも、永遠にあなたを愛することはないわよ?
自分を愛さない相手と一緒に居ても虚しいだけだし、だいいち賢者の珠を継承させることができないんじゃないの?」
カエインは静かにかぶりを振った。
「虚しくなどない。俺がシアを愛していれば充分だ。
愛する者の傍にいられるなら、賢者の珠のことなどどうでもいい。
――その境地に至るのに、300年以上もかかってしまったがな」
そう言って苦笑したカエインの金色の瞳には、滲むような温かな光が浮かんでいた――
それとあなたの祖先が打った最上級の魔法剣で、現在使い手がいるのは何本?」
見上げて問うと、カエインは金色の瞳を細め、少し嬉しそうな顔で答える。
「まずリューク王はとっくの昔に覚醒している。
そして神の名がつくのはシアとエティーとレスター、王の名を冠する剣はセドとリューク王が持つもののみ。
他に俺の祖先が打った剣で国内にあって使い手がいるのは、デリアンの狂戦士の剣だけだ」
ということは覚醒した魔法剣は、向こうもこちら側も三本ずつか……。
先の内乱で兵数が勝っていたのにエリオット3世が敗北続きだったのは、王弟派に三つの最上級の剣が揃っていたせいだろう。
つまりこちらの軍の被害を減らすためには、相手の軍の覚醒剣持ちを優先して殺さねばならない。
セドリックも私と似たような考えに至ったらしく、はっきりとした声で明言する。
「僕はまっすぐリューク王を倒しに行くつもりだ」
レスター王子がそれに続く。
「じゃあ、俺はデリアンの元へ直行して首級をあげ、アレイシアへの求婚の捧げものにしよう」
セドリックはレスター王子をはっとしたように眺めたあと、急に表情を引き締めて一堂を見渡した。
「レスターとカエイン、他の方々も聞いて欲しい。
僕は王位を奪還しだい、ここにいるアレイシア・バーンを王妃に迎えるつもりだ。
そして二人で力を合わせてアスティリアを治め、平和を守ってゆこうと思う」
思いやり深いセドリックらしくない、完全に私の気持ちを無視したその公言は、これまでとは違う確固たる意志の表れのようだった。
皆が驚いたように言葉を失うなか、バーモント公が最初に賛意を示す。
「戦女神の申し子たる伝説の剣の持ち主ならば、聖王セドリック様の妻に相応しいかと」
「王の結婚祝いムードで、内乱後の暗い空気も一気に払拭されましょう」
サックス伯が追従したところで、どうにもいたたまれなくなった私は、退席するために立ち上がり挨拶する。
「申し訳ありませんが、お先に失礼させて頂きます」
テントに戻って中に入ると同時に横から腕を掴まれた。
「まさか本気で王妃の座を受け入れる気ではないよな?」
首だけ回してカエインの顔を見ると、ばっと腕を振りほどく。
「単に大事な会戦前に、人前でセドリックに恥をかかせて最高司令官としての威信に傷をつけたくなかっただけよ。
私は誰の求婚も受けないし、復讐を果たしたあとはアスティリアを出ようと思ってるわ」
離れがたい思いはあっても、セドリックに私は相応しくない。
その純粋な輝きが曇らないよう、戦いが終わったあとは速やかに離れなくては――
切ない溜め息をつき、敷物の上に腰を下ろすと、カエインも私に並んで長い脚を崩して座りこむ。
「もしも復讐を達成できなかった場合は?」
私は愚問だとばかりに鼻で笑う。
「どうもこうも、そうなったら死ぬだけだわ。
討ち死にできれば本望。もしもデリアンが他の者に殺された場合は急いで後追いするまでよ。
どちらにしてもカエイン、私が死ぬのをもう絶対に邪魔しないでね?」
語尾を強めて言うと、カエインはまるで針を飲み込んだような表情になった。
「分かっている。冥府で俺は、愛にかけてシアの意志を尊重すると誓ったからな。
でもくれぐれも忘れないでくれ。それはあくまでも『傍にいたいなら』という条件つきだったことを。
代わりに俺はこの先も永遠にシアと一緒にいるからな」
「死んでもってこと?」
「そうだ。また生まれ変わってもだ」
悪夢のようにうんざりする話だが、カエインの真顔から判断して、頷かないと死ぬことは許されないらしい。
「仕方ないわね。ただし、何度生まれ変わろうとも、永遠にあなたを愛することはないわよ?
自分を愛さない相手と一緒に居ても虚しいだけだし、だいいち賢者の珠を継承させることができないんじゃないの?」
カエインは静かにかぶりを振った。
「虚しくなどない。俺がシアを愛していれば充分だ。
愛する者の傍にいられるなら、賢者の珠のことなどどうでもいい。
――その境地に至るのに、300年以上もかかってしまったがな」
そう言って苦笑したカエインの金色の瞳には、滲むような温かな光が浮かんでいた――
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