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⑶
しおりを挟むここ、蜜月の館にきて二週間…俺は本当にお疲れだ…。はぁー。今日は誰が来るんだったかな?毎回、朝までコースだ。寝かせてもらえない時もある…。はぁー。休みはいつだったかな…。
「ルイちゃん!!お客さんよ!!」
雇い人から威勢の良い声がかかる。客ー?!まだお店開店してないじゃん!!あの人来るのが早いよ!!
「まだ準備してません!開店まで待ってもらって下さい!!」
ガチャ
言ってる側からドアが開く音がした。
「何の準備だ?」
えっ、えっ、えぇぇええ──────?!
オッ、オーランド様──────?!
まさかのオーランド様ご登場…えっ何で…驚きと会えた嬉しさでしっぽが少し震える。やばい!!バレたかな…。
「どっ、どうして…ここにぃ…?」
「街の者に聞いた…俺が身請けする」
「えっ…身請け?」
やめてよー!!今度はしっぽがピーンっと立ってしまう。俺のしっぽの馬鹿野郎!!
「そうだ。もう一度、食堂を開けばいい」
あぁ…ほんとにオーランド様は…だから好きなんですよ。格好良すぎる!!自分のしっぽを握り、気持ちを悟られないようにする。
「ありがとうございます。ですが、その話…お断りさせていただきます」
俺は深々と頭を下げた。
「騎士団長ともあろうお方が、俺の様な者を身請けしたとあっては、名に傷がつきます。お気持ちだけいただきます。俺の事は…忘れてください」
俺はオーランド様に背を向け、もう話すことは無いと無言を貫く。勿論しっぽも見えないように胸に抱く。もう会える事はないと思ってた。でも俺なんかの為に来てくれて…身請けの話まで…それだけで充分だ。
「ここを出れるんだぞ?!何故断る?!」
オーランド様が珍しく声を荒らげている。チラッと顔を盗み見る。顔中に毛が立ち、鼻に皺も出来ている。怖ッ!!けど、俺の為にそんな顔をしてくれていると思うと嬉しい!!でもね…ダメなんだ…ダメなんだよ…
「オーランド様…。俺には借金があります。たとえ身請けして下さっても、借金は残ります。普通の仕事では返せる額ではありません。ご理解いただけましたか?」
「では、借金も俺が引き受ける」
えっ、即答ですか?!結構な金額だよ?!
「オーランド様は何故そこまで俺に?誰にでもそんなに優しくしていたら無一文になっちゃいますよ?ふふっ。オーランド様…俺の体は汚いです…。意味わかりますよね?」
コンコンッ
「ルイちゃん!!お客様よー!!」
時間通りに来たな…
「仕事の時間ですので…お引き取りいただけますか?」
それとなくお帰りをお願いする。が、オーランド様は部屋から動こうとはしない。一体どうしろと…この重い空気に耐えられないんですけど…
「今日はお迎えもないのかい?」
部屋の空気を打ち破る様に、呑気な声が外から掛けられる。あっ、鉢合わせだ…最悪だ…怒られる…
「おや?今日は私がルイの相手のはずだが?」
「メンル様!!申し訳ございません。俺の知人なのです。お客ではありませんので…」
俺は青ざめた顔で必死に言い訳をする。
「そうかい?では、ご退室いただけるかな?」
「オーランド様。今日はありがとうございました」
オーランド様は、しばらく俺を見つめていたが、渋々と部屋から出て行った。すれ違いざまにメンル様を殺さんばかりに睨んで…。
「ルイ」
「はい」
平然と応えるが、全身から血の気が引いていくのがわかる。
「わかっているな?」
メンル様の怒気を含んだ声。はぁ──────。最悪のタイミング…。今日は朝まで寝れないな…。
しかし、オーランド様の私服似合ってたなー。初めて見たけど素敵だった!!かっこいいー!!さすが俺が惚れただけあるな!!
はぁ──────。痛い。心が苦しい。
さよなら
┈┈┈┈オーランド様…
さよなら
┈┈┈┈┈俺の恋心…
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