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第41話妖刀の力
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「……あれだな」
安綱先輩はタオルを頭に巻きながら、それを睨む。
僕も吐き気を感じながら、タタリと化した鬼神を見ていた。
最初人間の女性のような影だと思ったが、間違いなく人じゃない。
そいつは、森の闇に溶け込むような黒い瘴気を体に纏っている影のような人型だった。
頭の2本の角だけが赤く輝き、体の大きさは人のそれを軽く凌駕している。
そんな鬼の黒い部分は鬼自身から溢れ出ているよくないものだ。
触れるものすべてを穢し、腐らせるそれは行きつくところまで行ってしまったのだと、はたから見ていても察せられた。
「アレが……鬼」
神木さんにも緊張が走る。
「ありゃやべぇな……どこから出て来たのか知らねぇが、とにかくやべぇ」
「やばいですね。じゃあさっそく―――始めましょうか」
だが、まさしく目的の相手を発見したことで僕はリュックに手を突っ込んだ。
まずは小手調べだ。
僕は飽きてリュックの中で寝ていたお調子者の白い塊を引っ張り出した。
「お? 私様の出番だな!」
「白……大丈夫なの?」
タタリと白を見比べて心配そうに言う神木さんに白は力強く自分の胸を叩いた。
「おうとも! 杏樹! 修行の果てにパワーアップした私様の力……見せてくれるわ!」
白は鼻をピクピク揺らして自信満々だった。
「実際見てどうだ? 軽く偵察してくれればいいんだけどさ?」
一応僕も確認すると白からビックリするほど馬鹿じゃないかという視線をもらってしまった。
「はぁ? 誰に物を言ってるんだ太平よ? 私様は助っ人だぞ? あんな奴、私様がサクッと弱らせてしんぜよう!」
「お、おう。そこまで言うなら頼もしいけど」
胸を張って鼻息を荒くしている白はなんかおかしい気はする。
神木さんもどこか不安げに僕の肩を叩いた。
「な、なんであんなに自信満々?」
「いやあ、たぶん修行して一皮むけた気分なんじゃないかなぁ?」
「でも……一日二日で強くなれるもの?」
「ど、どうかなぁ。他ならぬ山神様の所業だしな。……そういうことがないとも言い切れない?」
「そ、そっか」
白蓮様がよこしてくれた白が、ほんの数日の修行の成果を全身から迸らせている。
確かに若干力強い―――気がする。
白は修行明けのテンションのまま、黒い鬼へと突っ込んでいった。
「うぉら! 往生せいや!」
白の気迫の飛び蹴りに鬼は反応し、動いた。
僕は僕より少しは戦いに通じている安綱先輩に意見を求める。
「先輩はどう見ます? 白、いけますかね?」
「ん? いや、ありゃ無理だろ? 」
「……」
「グルアアアアアア!」
口を開き、鬼は叫んだ。それは気迫はしっかり込められていた。
それだけのことで叩きつけられる衝撃波は木々を砕き、白をぶっ飛ばした。
「あー!」
「ハクー!?」
「……まぁダメっぽかったけどなぁ」
いや……悪いとは思うけど、もう飛び出し方がね。
白は無事のようだがおそらく戦闘不能。しかし白が弱いわけではない。
やはりあの鬼が思ったよりも強いのだ。
僕はぶっ飛ばされた白を見送って、今回の判断が間違っていなかったことに確信を得ていた。
「こりゃぁ。助っ人正解ですね。安綱先輩お願いします」
「どうかね? ちっと俺の手にも余るかも知んねぇぞ?」
安綱先輩は担いで来た釣り竿ケースから鞘に入った短刀を取り出す。
その手にある短刀は禍々しいオーラをまき散らしていて、鬼の視線はすかさず安綱先輩にピタリと固定された。
鬼の視線の中心は間違いなく先輩の持っている妖刀にあった。
「さすがですね。妖刀に興味津々だ」
「お前にゃ負けるよ。楠は妖怪連中に好かれるからいいよなぁ。おらぁどうにも嫌われていけねぇ」
「素材を見る目で見るからですよ先輩」
「そう言うなよ、職業病だ。まぁ向こうさんの気持ちもわからなくはないけどな。妖刀ってのはそもそもそういうもんだ」
僕は先輩の言葉に苦笑いした。
確かに妖刀が嫌われる理由はわかる。
妖刀は妖怪の素材を使って作り出す武器だ。
神木さんは息を飲んで、ソワソワしながら安綱先輩の刀を見て言った。
「そ、それで刺すの?」
深刻な表情の神木さんは、声が強張っていた。
突然そんな質問を投げかけられた僕と安綱先輩は―――困惑を浮かべて神木さんを見た。
「えぇ? いや……おっかないなぁ」
「え!? そう言う反応!? いやでもだから刀で他にどうするのかなって……」
「おらぁ刀鍛冶だもんよ。戦いは専門じゃねえよ? まぁ振って戦えねぇことはないだろうが三流さ。武者と一緒にされるのはちと厳しいな」
「じゃ、じゃあ……どうするんです?」
「そりゃあ……動きを止めるんだろう?」
そう言った安綱先輩は小刀を鞘の半ばほどまで抜く。
「動きを止めろ―――漆喰・ヌリカベ」
そしてカチンと音を立てて納刀すると、音が森の中に木霊し響き渡った。
「!」
とたんこちらに走ってこようとした鬼が何もない場所で何かにぶつかったように動きを止めた。
安綱先輩はタオルを頭に巻きながら、それを睨む。
僕も吐き気を感じながら、タタリと化した鬼神を見ていた。
最初人間の女性のような影だと思ったが、間違いなく人じゃない。
そいつは、森の闇に溶け込むような黒い瘴気を体に纏っている影のような人型だった。
頭の2本の角だけが赤く輝き、体の大きさは人のそれを軽く凌駕している。
そんな鬼の黒い部分は鬼自身から溢れ出ているよくないものだ。
触れるものすべてを穢し、腐らせるそれは行きつくところまで行ってしまったのだと、はたから見ていても察せられた。
「アレが……鬼」
神木さんにも緊張が走る。
「ありゃやべぇな……どこから出て来たのか知らねぇが、とにかくやべぇ」
「やばいですね。じゃあさっそく―――始めましょうか」
だが、まさしく目的の相手を発見したことで僕はリュックに手を突っ込んだ。
まずは小手調べだ。
僕は飽きてリュックの中で寝ていたお調子者の白い塊を引っ張り出した。
「お? 私様の出番だな!」
「白……大丈夫なの?」
タタリと白を見比べて心配そうに言う神木さんに白は力強く自分の胸を叩いた。
「おうとも! 杏樹! 修行の果てにパワーアップした私様の力……見せてくれるわ!」
白は鼻をピクピク揺らして自信満々だった。
「実際見てどうだ? 軽く偵察してくれればいいんだけどさ?」
一応僕も確認すると白からビックリするほど馬鹿じゃないかという視線をもらってしまった。
「はぁ? 誰に物を言ってるんだ太平よ? 私様は助っ人だぞ? あんな奴、私様がサクッと弱らせてしんぜよう!」
「お、おう。そこまで言うなら頼もしいけど」
胸を張って鼻息を荒くしている白はなんかおかしい気はする。
神木さんもどこか不安げに僕の肩を叩いた。
「な、なんであんなに自信満々?」
「いやあ、たぶん修行して一皮むけた気分なんじゃないかなぁ?」
「でも……一日二日で強くなれるもの?」
「ど、どうかなぁ。他ならぬ山神様の所業だしな。……そういうことがないとも言い切れない?」
「そ、そっか」
白蓮様がよこしてくれた白が、ほんの数日の修行の成果を全身から迸らせている。
確かに若干力強い―――気がする。
白は修行明けのテンションのまま、黒い鬼へと突っ込んでいった。
「うぉら! 往生せいや!」
白の気迫の飛び蹴りに鬼は反応し、動いた。
僕は僕より少しは戦いに通じている安綱先輩に意見を求める。
「先輩はどう見ます? 白、いけますかね?」
「ん? いや、ありゃ無理だろ? 」
「……」
「グルアアアアアア!」
口を開き、鬼は叫んだ。それは気迫はしっかり込められていた。
それだけのことで叩きつけられる衝撃波は木々を砕き、白をぶっ飛ばした。
「あー!」
「ハクー!?」
「……まぁダメっぽかったけどなぁ」
いや……悪いとは思うけど、もう飛び出し方がね。
白は無事のようだがおそらく戦闘不能。しかし白が弱いわけではない。
やはりあの鬼が思ったよりも強いのだ。
僕はぶっ飛ばされた白を見送って、今回の判断が間違っていなかったことに確信を得ていた。
「こりゃぁ。助っ人正解ですね。安綱先輩お願いします」
「どうかね? ちっと俺の手にも余るかも知んねぇぞ?」
安綱先輩は担いで来た釣り竿ケースから鞘に入った短刀を取り出す。
その手にある短刀は禍々しいオーラをまき散らしていて、鬼の視線はすかさず安綱先輩にピタリと固定された。
鬼の視線の中心は間違いなく先輩の持っている妖刀にあった。
「さすがですね。妖刀に興味津々だ」
「お前にゃ負けるよ。楠は妖怪連中に好かれるからいいよなぁ。おらぁどうにも嫌われていけねぇ」
「素材を見る目で見るからですよ先輩」
「そう言うなよ、職業病だ。まぁ向こうさんの気持ちもわからなくはないけどな。妖刀ってのはそもそもそういうもんだ」
僕は先輩の言葉に苦笑いした。
確かに妖刀が嫌われる理由はわかる。
妖刀は妖怪の素材を使って作り出す武器だ。
神木さんは息を飲んで、ソワソワしながら安綱先輩の刀を見て言った。
「そ、それで刺すの?」
深刻な表情の神木さんは、声が強張っていた。
突然そんな質問を投げかけられた僕と安綱先輩は―――困惑を浮かべて神木さんを見た。
「えぇ? いや……おっかないなぁ」
「え!? そう言う反応!? いやでもだから刀で他にどうするのかなって……」
「おらぁ刀鍛冶だもんよ。戦いは専門じゃねえよ? まぁ振って戦えねぇことはないだろうが三流さ。武者と一緒にされるのはちと厳しいな」
「じゃ、じゃあ……どうするんです?」
「そりゃあ……動きを止めるんだろう?」
そう言った安綱先輩は小刀を鞘の半ばほどまで抜く。
「動きを止めろ―――漆喰・ヌリカベ」
そしてカチンと音を立てて納刀すると、音が森の中に木霊し響き渡った。
「!」
とたんこちらに走ってこようとした鬼が何もない場所で何かにぶつかったように動きを止めた。
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