くすのき君は妖怪が見えるけどそれはともかく趣味の人である。

くずもち

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第42話大失敗

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 ズドンとすごい音がして、鬼がひっくり返る。

「グアアアア!」

 鬼は慌てて起き上がって暴れるが、その拳はやはり何かに阻まれて硬質な音を立てていた。

 閉じ込められている鬼以上に困惑している神木さんは、鬼の様子に必死に周囲に目を凝らしていた。

「え? なに?」

 いい反応をする神木さんだが、僕は何も言わない。

 自慢の作品を語るのは、もちろん作者の安綱先輩である。

「妖刀の力だよ。ありゃあヌリカベって妖怪の能力でな、見えない壁を作り出すんだよ。これであいつは逃げられない」

「さすが先輩。で、僕の出番だ」

 僕は立ち上がり壁を殴っている鬼に持って来たものを投げつけた。

 それはこの日のために作り上げた特別製のキーホルダーだ。

 閉じ込める系のイメージを付加し、土から焼いた鬼瓦ストラップにはちょっとしたギミックを仕込ませてもらった。

 ストラップは鬼めがけてまっすぐ飛んで行き、バラリと中から光の帯が飛び出す。

 帯はすぐさま鬼に絡みついて鬼の体を縛り上げると、どんどん吸収しストラップの中に閉じ込めてしまった。

「よし! そのまま! そのままで!」

 そして完全に中に鬼が収まるとピョンピョンとストラップは地面を跳ねまわる。

 抵抗は激しく、僕は祈る様に手を合わせた。

「よしよしよし!……捕まってくれよー」

 神木さんと安綱先輩も固唾を飲んで跳ねるストラップを注視していたが、一際ストラップが高く跳ね―――。

 地面に落ちた瞬間、ストラップにバキリと罅が入ったのを僕は見てしまった。

「げっ!」

 途端に瘴気が溢れ出る。

 再び姿を現した鬼は、確実に僕らを睨んでいた。

「ガぁあああああ!」

 鬼が吼え、その体から禍々しいオーラが迸る。

 するとヌリカベの結界も鬼の発する圧力に負けて罅が入り、形勢が逆転した。

「「げげっ!」」

 僕と先輩の声が揃った。

 いや、形勢が逆転したというか、僕達の作戦はあっさり終了したらしい。

「グルルルル……」

 僕達は顔を見合わせた。

「ど、どうするの?」

 動揺する神木さんはまだ僕達が何かするつもりだと思っているようだが……残念ながらそんなことはない。

 命大事にが今回の基本方針である。

「よし、逃げよう」

「了解です。先輩追加の足止めの結界よろしくです」

「おうよ。ありゃダメだな!」

「大失敗でしたね!」

 メインの作戦の終了を宣言した僕と先輩はすぐさま撤退準備である。

 神木さんの服を思い切り掴んで、僕と綱安先輩は全力でダッシュした。

「ええ! あれどうにかしないの!?」

 叫ぶ神木さんに説明したいところだが、正直そんなことをしている暇はない。

 チラリと背後を確認すると罅の入った結界の中では、鬼がその辺に生えている大木を片腕でもぎ取って、こちらに向かって投げつけてくるところだった。

「逃げろ逃げろ!」

「うお!」

 僕らは慌てて飛び退く。

 丸太が地面と水平に飛んでいく光景は迫力満点で、軽く死ぬところだった。

 そしてここでトラブルは続いた。

「あっ!」

 避けた拍子に神木さんの腕の中から、ハニワがコロリと転がり落ちた。

 神木さんは目を見開き、ハニワを見ていた。

 よりにもよってよく転がるハニワは鬼にまっすぐ向かってゆく。

「待って!」

 そして何を思ったのか、神木さんは咄嗟に安綱先輩に飛びついてその腰にある刀を奪ったのである。

「先輩……この妖刀お借りします!」

「はぁ! おい!」

「いや! 神木さん? 何やってんの!?」

 スラリと刀を抜いた神木さんは驚きの運動神経で駆け出し、ハニワを掴み上げて僕の方に投げてよこす。

 だがバランスを崩した神木さんの目の前には、もうすぐそこに結界を破った鬼が迫っていた。
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