くすのき君は妖怪が見えるけどそれはともかく趣味の人である。

くずもち

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第53話何か裏があるやつだと僕はそう思う

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 あーちゃんこと、蘆屋 満月は見える人であり、極めて優秀な呪具師である。

 そして彼はちょっとだけ演出過剰なところがあった。

「クックックック。よく来たな。待っていたぞ楠よ」

「式神なんて飛ばしてくるから何事かと思ったよ」

「それは演出というやつだよ。重要な話をする前には前振りだって拘りたいものだろう?」

「そう言うもんかな?」

「そうとも……聞いているぞ? 貴様……封印を解いたそうじゃないか」

 知っているぞと雰囲気を作る蘆屋だが、僕の方には特に心当たりはない。

 だから特に返事をせずに待っていると、先にしびれを切らしたのは後ろにいた神木さんだった。

「……どういうこと?」

「いやわかんない」

「―――わからないの?」

 またなにかしたの? みたいな疑わしそうな神木さんだが、いや本当に、何のことを言っているのかわからない。

 そんな僕の反応を見て、おやおやと肩をすくめる蘆屋は神木さんに目を向けると腕を組んでニヤリと不敵に微笑んだ。

「ふむ。お前が噂の転入生か……悪くないな。転入生がミステリアスというのは実にポイントが高いぞ? なるほど……しかし、なおさら解せん」

「何か言いたいことがあるなら、はっきり言っちゃって構わないよ?」

 僕がとりあえず聞いてみようとそんな結論に達したわけだが、蘆屋はパチンと指を鳴らした。

「ならば言おうか。そこの彼女は一般人で「見える」のだろう? 妖怪から身を守る方法を探しているとも聞いている。ならばこの俺の呪具が役立つはずだ。そうじゃないか?」

「まぁそうだね」

「おいおい、水臭いな。俺とお前の仲だろう? 俺に相談すれば対策に役立つ道具の一つや二つ簡単に見繕える……どうだ?」

「いやいいよ別に」

「……ん? 今何と?」

 もう少し前ならありがたい申し出だったが、少々その情報は遅い。

「だからいいってば。それはもう解決したから」

 そんなに気を遣わなくてもいいよとそう言うつもりだったのだが、なぜだか予想以上に蘆屋は狼狽えていた。

「……なんでだ!」

「なんでと言われても、呪具の類は高いだろう? 高価なものだと知っているから、遠慮しているのだが?」

 それにこればかりは成り行きとしか言えなかった。

「安綱先輩にも手伝ってもらって、対策は間に合ってるんだよ」

「ぬぅ! 妖刀か……いやそれならなんで俺に頼らん!」

「いやしかし、結構取り扱いにも気を遣うだろう? プロじゃあるまいし」

 なんにせよ使うのは神木さんだ。

 その手の道具をいきなりポンと渡しても、ろくなことにはならないだろう。

「それはそうだが……いやそれにしたって妖刀も相当じゃないか?」

「まぁちょっと荒事っぽい感じもしたからね。譲ってもらったのは柄だけだし。妖刀の柄とハリセン組み合わせたら思いの外強力になっただけで」

 自分でも妙な事を口走っているなとは思ったが、それを聞いた蘆屋はピクリと片眉を上げて顎をさすっていた。

「なに? ハリセンって何だ?」

「うん。鬼の入った鬼ハリセンだけど」

 僕がそう答えると目を点にした蘆屋は、しばし唸って考える。

「フッ……意味が分からないがお前のトンチキは今に始まったことじゃないか」

「トンチキって」

 これでも頑張って用意したのだから、努力は評価してもらいたい。

 結果的にハリセンに落ち着いてしまったが、効果は相当なものだと自負していた。

 だが蘆屋は話を聞いて再びやる気を見せ始めた。

「ふむ……間に合わせというのなら付け入る隙はまだあるか? そういうことならば、見せてやろう! 俺の呪具の性能をな!」

 その前に何でそんな出血大サービスを大奮発するのか教えて欲しいのだけれども、頭に血が上った蘆屋が止まらないのは、長い付き合いで知っている。

 僕と蘆屋のやり取りをしばらく黙って見ていた神木さんは声を潜めて尋ねた。

「ねぇあの人、どんな人なの?」

「うーん。まぁ少し変わった人だよー。案外気が合う」

「……そうなんだなぁ」

「妙に納得してない?」

 改めて聞かれると、妙な縁だが確かに気は合う。

 そして彼は僕の数少ない、妖怪ではない人間方面の専門家の伝手でもあった。

「まぁ。それにその手の道具を作るのは確かに天才的なんだ……ちょっと偏りはあるけど(ボソリ)」

「なんか言わなかった?」

「いや別に?」

 何か言おうと思ったが、妙な先入観はよくあるまい。神木さんが何を気に入るかなんて言うのは好みの問題だ。

 それにしても蘆屋がなぜこんなにも一枚噛みたがるのか、そこが気になる。

 まあ、何か目論見があるんだろうけど、たぶん大したことではないんだろうなーと僕は確信していたが。
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