52 / 77
第52話友人はちょっとうっかりしていることがある
しおりを挟む
校舎の奥まった場所にある第四パソコン室は、導線からズレていてあまり人通りはない。
ただ場所だけが、人がいない原因ではなかった。
大丈夫だとは思うけど、僕は念には念を入れることにした。
「ハク」
ポンと音を立てて出てくるのは白い毛皮の狐、ハクである。
ハクは狐だけあって鼻が利く。例えそこに何があっても、嗅ぎ分けられるはずだ。
「はい。なんだろう?」
「手伝ってくれない?」
「油揚げは何枚までOKかね?」
「一袋は大丈夫」
「よしきた! まかせろ!」
二つ返事でOKすると、ハクはトントンと跳ねるように廊下を進む。
一方で後ろから付いてきている神木さんは、僕らが何をしているのかわかっていないらしかった。
「何してるのこれ?」
「ハクは鼻が利くからさ。念のため探ってもらってる」
「何を?」
「たぶんここの廊下にはトラップが仕掛けてあるから」
「え!」
驚く神木さんも、薄々違和感くらいは感じているはずである。
設置されていた人避けの結界は一般人にすら影響を及ぼす、なかなか強力なやつだ。
そしてさらに近づいてくるようならば、罠はより悪辣なものになっていく。
あーちゃんの特技はまさにこういうギミックに特化したものなのだ。
「こういうことが得意な奴なんだよ。あいつ呪具師だから」
「呪具師?」
聞き覚えのない単語に神木さんは首をかしげていたが、かなり特殊な技能持ちだということは間違いなかった。
「ええっと……妖怪やらと戦う専門職に道具を作ってあげる人。だから、小道具やら、仕込みやらの使い方がうまいんだよね」
とはいえ向こうから招いた以上は入れるようにしてあるはずなのだが、なんとなーく完全に信用できない僕がいた。
「でも……案外抜けてるとこあるからなぁ」
「ギャアアア!」
「ハク!」
やはりうっかりしていたか。プスプス煙を出してひっくり返ったハクは指を一つ立てて言った。
「……やっぱり稲荷寿司で頼む」
「そういう取りこぼし対策でお願いしたんだけどなぁ。まぁ稲荷寿司な」
「よろしくぅ」
火災報知機は作動しないあたり流石である。
瞬時に謎の雷でこんがり焦げたハクはそうとだけ言い残して煙を吐いて気絶した。
まぁ……知ってた。
すまんハクよ。稲荷寿司は奮発するとしよう。
ひとまずハクを回収して、神木さんにも注意を促した。
「というように、用事がある時は十分注意するといいよ」
「わ、わかった」
恐々うなずく神木さんに念を押しはしたものの、それ以降はさすがにトラップは解除されていて、僕らは目的の部屋にやって来た。
「ここ?」
「そうだね。第四パソコン室。あいつはだいたいここにいる」
「そうなの?」
「うん。だってパソコン部だし」
「学校案内にパソコン部なんてなかったけど?」
「ああ、うん。模型部同様、学校に認知されていない部活動だし」
「だからそれって、部活動って言わなくない?」
「そんなことはないさ。知ってる人は知ってる」
「それでいいのかなぁ」
言いたいことはわかるが、一応曲がりなりにも成立しているのだから問題ない。
というか問題があっても困るのは僕も同じである。
僕はガラリと扉を開ける。
ヒヤリと冷気が漂う薄暗い部屋には、いくつものディスプレイの明かりが灯り、そして男子生徒が一人、椅子を回転させてこちらを振り返った。
「よく来たな楠―――待ちかねたぞ」
メガネをかけた小柄な少年は鋭い視線で僕を見る。
僕は特に気にせず、暗すぎる室内を見回した。
「あーちゃん……この暗さはさすがに目に悪いんじゃない?」
「クックック……楠。あーちゃんは止めないか? 俺の名は蘆屋 満月……この名は気に入っているんだよ」
それは知っているけど、フルネームはちと長い。
それに今更変えるのも照れくさいのだけれども?
僕が「あーちゃん」と呼ぶ彼の名は蘆屋 満月。陰陽師の名家の中でも、天才と呼び声の高い僕の友人だった。
ただ場所だけが、人がいない原因ではなかった。
大丈夫だとは思うけど、僕は念には念を入れることにした。
「ハク」
ポンと音を立てて出てくるのは白い毛皮の狐、ハクである。
ハクは狐だけあって鼻が利く。例えそこに何があっても、嗅ぎ分けられるはずだ。
「はい。なんだろう?」
「手伝ってくれない?」
「油揚げは何枚までOKかね?」
「一袋は大丈夫」
「よしきた! まかせろ!」
二つ返事でOKすると、ハクはトントンと跳ねるように廊下を進む。
一方で後ろから付いてきている神木さんは、僕らが何をしているのかわかっていないらしかった。
「何してるのこれ?」
「ハクは鼻が利くからさ。念のため探ってもらってる」
「何を?」
「たぶんここの廊下にはトラップが仕掛けてあるから」
「え!」
驚く神木さんも、薄々違和感くらいは感じているはずである。
設置されていた人避けの結界は一般人にすら影響を及ぼす、なかなか強力なやつだ。
そしてさらに近づいてくるようならば、罠はより悪辣なものになっていく。
あーちゃんの特技はまさにこういうギミックに特化したものなのだ。
「こういうことが得意な奴なんだよ。あいつ呪具師だから」
「呪具師?」
聞き覚えのない単語に神木さんは首をかしげていたが、かなり特殊な技能持ちだということは間違いなかった。
「ええっと……妖怪やらと戦う専門職に道具を作ってあげる人。だから、小道具やら、仕込みやらの使い方がうまいんだよね」
とはいえ向こうから招いた以上は入れるようにしてあるはずなのだが、なんとなーく完全に信用できない僕がいた。
「でも……案外抜けてるとこあるからなぁ」
「ギャアアア!」
「ハク!」
やはりうっかりしていたか。プスプス煙を出してひっくり返ったハクは指を一つ立てて言った。
「……やっぱり稲荷寿司で頼む」
「そういう取りこぼし対策でお願いしたんだけどなぁ。まぁ稲荷寿司な」
「よろしくぅ」
火災報知機は作動しないあたり流石である。
瞬時に謎の雷でこんがり焦げたハクはそうとだけ言い残して煙を吐いて気絶した。
まぁ……知ってた。
すまんハクよ。稲荷寿司は奮発するとしよう。
ひとまずハクを回収して、神木さんにも注意を促した。
「というように、用事がある時は十分注意するといいよ」
「わ、わかった」
恐々うなずく神木さんに念を押しはしたものの、それ以降はさすがにトラップは解除されていて、僕らは目的の部屋にやって来た。
「ここ?」
「そうだね。第四パソコン室。あいつはだいたいここにいる」
「そうなの?」
「うん。だってパソコン部だし」
「学校案内にパソコン部なんてなかったけど?」
「ああ、うん。模型部同様、学校に認知されていない部活動だし」
「だからそれって、部活動って言わなくない?」
「そんなことはないさ。知ってる人は知ってる」
「それでいいのかなぁ」
言いたいことはわかるが、一応曲がりなりにも成立しているのだから問題ない。
というか問題があっても困るのは僕も同じである。
僕はガラリと扉を開ける。
ヒヤリと冷気が漂う薄暗い部屋には、いくつものディスプレイの明かりが灯り、そして男子生徒が一人、椅子を回転させてこちらを振り返った。
「よく来たな楠―――待ちかねたぞ」
メガネをかけた小柄な少年は鋭い視線で僕を見る。
僕は特に気にせず、暗すぎる室内を見回した。
「あーちゃん……この暗さはさすがに目に悪いんじゃない?」
「クックック……楠。あーちゃんは止めないか? 俺の名は蘆屋 満月……この名は気に入っているんだよ」
それは知っているけど、フルネームはちと長い。
それに今更変えるのも照れくさいのだけれども?
僕が「あーちゃん」と呼ぶ彼の名は蘆屋 満月。陰陽師の名家の中でも、天才と呼び声の高い僕の友人だった。
0
あなたにおすすめの小説
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
現代文学
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ママはヤンママ女子高生! ラン&ジュリー!!
オズ研究所《横須賀ストーリー紅白へ》
キャラ文芸
神崎ランの父親の再婚相手は幼馴染みで女子高生の高原ジュリーだった。
ジュリーは金髪美少女だが、地元では『ワイルドビーナス』の異名を取る有名なヤンキーだった。
学校ではジュリーは、ランを使いっ走りにしていた。
当然のようにアゴで使われたが、ジュリーは十八歳になったら結婚する事を告白した。
同級生のジュリーが結婚するなんて信じられない。
ランは密かにジュリーの事を憧れていたので、失恋した気分だ。
そう言えば、昨夜、ランの父親も再婚すると言っていた。
まさかとは思ったが、ランはジュリーに結婚相手を聞くと、ランの父親だと判明した。
その夜、改めて父親とジュリーのふたりは結婚すると報告された。
こうしてジュリーとの同居が決まった。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる