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第21話その時背筋が凍り付く
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「あーやれやれ……僕としたことが、財布を忘れるとは」
僕、楠 太平は自分で自分にツッコミを入れつつ玄関の扉を開ける。
「……ただいまー。ってなんか人の気配がしないな? 玄関に靴はあったよね?」
直感的になんとなく嫌な予感がして、僕は速足でリビングに戻った。
扉を開けるとそこにいたはずの、神木さんの姿がない。
まさかもう帰ってしまったのだろうか?
必要な話は大まかに終わっていたし、その可能性もなくはないだろうが、それならやはり玄関に靴があるのが気にかかる。
だがその時、唐突に嫌な想像が脳裏をよぎった。
「まさか……!」
僕は二階の自分の部屋に駆け上がり、部屋に飛び込むと、机の引き出しが開いていることに気が付いて蒼白になった。
そこにはあるべきものがない。
なにが起こったのか察し、僕は震える拳を握りこんだ。
「この手口……白か。あんのやろう……やってはならないことをやっちまったな」
ここまでの暴挙は、残念ながら大らかな僕でも許しがたい。
僕は激しい怒りに身を震わせて、別の引き出しから親指サイズの人形を引っ張り出す。
そして庭に飛び出すと、それを地面に並べていった。
一時期はまって製作したストラップ用の狼人形だ。
準備を整えてから、ピーっと指笛を吹き鳴らすと、彼らはすぐにやって来る。
風のように、影のように彼らは飛んできて僕の前に整列した。
「よく来てくれた……」
白銀の毛皮を持った三匹の狼は、見上げるような高さから僕を見下ろしている。
彼らは縁のある狼の妖怪で、僕を慕ってくれる友人だった。
「頼みたいことがあるんだ。白とここにさっきまでいた女の子を探してもらいたい。報酬はこの人形で」
三匹の狼型は頷き、交渉は成立である。
そして人形に狼達が煙のようになって入り込み、その姿をポコンと変えた。
短い手足のわりに大きな頭が特徴的な彼らは、まるでストラップがそのまま大きくなったマスコットキャラのようだ。
可愛さに全振りしたその姿はものすごく和む……だが今はなごんでいる時間はなかった。
「居場所を見つけたら知らせてくれ」
「マフ!」
僕がそう頼むとカラフルなチビ狼は吠えて、散開する。
その速度は目にも止まらず、シュバっと影も残さない。
一見して弱くなっているようにも見えるが、中に入っている彼らは少なくともそうは感じていないはずだった。
数分して、一匹のマスコット狼がコロンと僕のところに戻って来た。
「マフ!」
「よし! 学校だな! 引き続き、先行して身柄の確保! 」
「マフ!」
ビシっと敬礼した狼は、再び掻き消える。
かわいくの頼もしい奴らだと僕は敬礼で返した。
出ていった先が学校だというのなら少なくとも神木さんが安心して妖怪と話せる場所など限られているはず。
僕は愛車のロードサイクルに飛び乗る。
正直死ぬ程焦っていたが、僕の速度ばかりはどうしようもない。
「くっ!」
それでもアレを見られるわけにはいかないのだ。
いや……見られて困ることはないのかもしれないが、僕がまだその領域に達していない。
焦りのままにがむしゃらにペダルを漕ぎ、僕はこれまでの人生で出したことがないスピードで山道を下った。
僕、楠 太平は自分で自分にツッコミを入れつつ玄関の扉を開ける。
「……ただいまー。ってなんか人の気配がしないな? 玄関に靴はあったよね?」
直感的になんとなく嫌な予感がして、僕は速足でリビングに戻った。
扉を開けるとそこにいたはずの、神木さんの姿がない。
まさかもう帰ってしまったのだろうか?
必要な話は大まかに終わっていたし、その可能性もなくはないだろうが、それならやはり玄関に靴があるのが気にかかる。
だがその時、唐突に嫌な想像が脳裏をよぎった。
「まさか……!」
僕は二階の自分の部屋に駆け上がり、部屋に飛び込むと、机の引き出しが開いていることに気が付いて蒼白になった。
そこにはあるべきものがない。
なにが起こったのか察し、僕は震える拳を握りこんだ。
「この手口……白か。あんのやろう……やってはならないことをやっちまったな」
ここまでの暴挙は、残念ながら大らかな僕でも許しがたい。
僕は激しい怒りに身を震わせて、別の引き出しから親指サイズの人形を引っ張り出す。
そして庭に飛び出すと、それを地面に並べていった。
一時期はまって製作したストラップ用の狼人形だ。
準備を整えてから、ピーっと指笛を吹き鳴らすと、彼らはすぐにやって来る。
風のように、影のように彼らは飛んできて僕の前に整列した。
「よく来てくれた……」
白銀の毛皮を持った三匹の狼は、見上げるような高さから僕を見下ろしている。
彼らは縁のある狼の妖怪で、僕を慕ってくれる友人だった。
「頼みたいことがあるんだ。白とここにさっきまでいた女の子を探してもらいたい。報酬はこの人形で」
三匹の狼型は頷き、交渉は成立である。
そして人形に狼達が煙のようになって入り込み、その姿をポコンと変えた。
短い手足のわりに大きな頭が特徴的な彼らは、まるでストラップがそのまま大きくなったマスコットキャラのようだ。
可愛さに全振りしたその姿はものすごく和む……だが今はなごんでいる時間はなかった。
「居場所を見つけたら知らせてくれ」
「マフ!」
僕がそう頼むとカラフルなチビ狼は吠えて、散開する。
その速度は目にも止まらず、シュバっと影も残さない。
一見して弱くなっているようにも見えるが、中に入っている彼らは少なくともそうは感じていないはずだった。
数分して、一匹のマスコット狼がコロンと僕のところに戻って来た。
「マフ!」
「よし! 学校だな! 引き続き、先行して身柄の確保! 」
「マフ!」
ビシっと敬礼した狼は、再び掻き消える。
かわいくの頼もしい奴らだと僕は敬礼で返した。
出ていった先が学校だというのなら少なくとも神木さんが安心して妖怪と話せる場所など限られているはず。
僕は愛車のロードサイクルに飛び乗る。
正直死ぬ程焦っていたが、僕の速度ばかりはどうしようもない。
「くっ!」
それでもアレを見られるわけにはいかないのだ。
いや……見られて困ることはないのかもしれないが、僕がまだその領域に達していない。
焦りのままにがむしゃらにペダルを漕ぎ、僕はこれまでの人生で出したことがないスピードで山道を下った。
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