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第22話洞窟の龍
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冷たい雫が頬を伝う感触で、杏樹は目を覚ました。
「―――っ」
意識を取り戻すとそこは、全く心当たりのない場所だった。
薄暗い洞窟の中の様で地面の岩肌がヒンヤリと冷たい。
そしてぼんやりとした青い光に満たされた空間には巨大なモノの気配を感じた。
「……!」
どうなっているのか、状況がわからない。
だが人外の気配は大きく、恐怖が増す。
杏樹はしかし恐怖を堪えて黙ったまま、状況の把握に努めた。
手足は縛られていない。だけど手も足も出ずにこうして連れてこられたことを考えると逃げ出すことが簡単にできるとは思えない。
だから静かに、洞窟の中に響く声に杏樹は耳を澄ました。
「わざわざ連れて来たのか? この娘は別に関係ないように思えるが? 本当にこの娘が妖怪を撃つ機械を操る人間の事を知っているのか?」
「はい……そうでございますとも!」
ストーカーの媚を売るような声と、威厳に溢れた声が話をしているのが聞こえる。
杏樹は声を追って視線を上に持っていくと、その存在を目にして鳥肌が立った。
青い鱗の龍がとぐろを巻いて、洞窟の天井に陣取っている。
そいつはゆっくりとこちらに首を伸ばして杏樹を覗き込んできた。
「……起きているのだろう? 娘。わかっているぞ? 答えよ。妖怪を撃つ機械に乗った人間を、お前は知っているのか?」
どうやら目を覚ましたことがばれていたらしい。
杏樹は、隠しても無駄だと悟って目を開いて立ち上がる。
「……」
だが質問の意味はまるで分からない。
妖怪を撃つ機械?
杏樹が首をかしげていると龍は訝しみながらも言葉を続けた。
「……何日か前の話だ。我が領域に毒がまかれた。頭に来て一暴れしてやろうとしたら、我は妙な人間に攻撃されて撃ち落とされたのだ。心当たりはないか?」
だが言葉をそこまで聞いて、杏樹は頭に一つの顔が浮かんでいた。
「……あ」
楠君じゃないかこれ?
顔には出さなかったつもりなのに、杏樹の気づきは龍に丸わかりだったようだ。
「知っているのだな? ……ならば話せ娘。ここ数百年であれほどの屈辱は記憶にない」
本当にポーカーフェイスの練習をやった方がいいかもしれない。
杏樹は言葉に詰まり、ちょっと泣きそうになった。
「……えっと」
これはどうしたものかと杏樹は乾いた喉を引きつらせる。
もちろん先日、河川敷で目撃した犯人と思われる模型部部長に心当たりもある。
この龍。あの川から出てきたやつだ。
まさか告げ口するわけにもいかないのが困りどころだった。
「ヒヒヒ。言った通りでしょう? こいつを囮に使えば敵をおびき出すことができるでしょう!」
「!!」
ここぞとばかりに自分の手柄を主張するストーカーを杏樹は睨みつける。
助けるどころか、下手をすると楠君をもっと危険な状態に引っ張りこんでしまうかもしれないと思うと、汗が冷たくなっていくのを感じた。
だが、ストーカーの言葉を聞いて不快感を示したのは杏樹だけではなかった。
「……もうよい」
龍は眉間にしわを寄せ、ストーカーに告げたのだ。
「へ? いえいえ、確実に勝利を収めるためには必要なことでございましょう? この娘を人質にすれば赤子の手を捻るように殺せますよ!」
しかし空気を読まないストーカーの言葉は続く。
どうやらこの龍はストーカーのやり方に不快感を覚えているらしい。
ピリリと肌で感じるほどのプレッシャーを発し、龍は限界寸前だった。
だが―――先に限界を迎えたのは杏樹の方だった。
「―――ちょっと! いい加減にしてよ!」
「へ? キヒィ!!!!」
拳からバチリと稲妻が飛び出たと感じるほどのクリーンヒット。
フルスイングの拳はストーカーに命中して、ボールのように跳ね飛ばした。
「……ホントだ。殴るだけでも効果があったんだ」
やった後に自分でビックリした。
杏樹の拳は思ったより威力は抜群で、そのままストーカーは地面にめり込んでいて、相当効いた感じだった。
「―――っ」
意識を取り戻すとそこは、全く心当たりのない場所だった。
薄暗い洞窟の中の様で地面の岩肌がヒンヤリと冷たい。
そしてぼんやりとした青い光に満たされた空間には巨大なモノの気配を感じた。
「……!」
どうなっているのか、状況がわからない。
だが人外の気配は大きく、恐怖が増す。
杏樹はしかし恐怖を堪えて黙ったまま、状況の把握に努めた。
手足は縛られていない。だけど手も足も出ずにこうして連れてこられたことを考えると逃げ出すことが簡単にできるとは思えない。
だから静かに、洞窟の中に響く声に杏樹は耳を澄ました。
「わざわざ連れて来たのか? この娘は別に関係ないように思えるが? 本当にこの娘が妖怪を撃つ機械を操る人間の事を知っているのか?」
「はい……そうでございますとも!」
ストーカーの媚を売るような声と、威厳に溢れた声が話をしているのが聞こえる。
杏樹は声を追って視線を上に持っていくと、その存在を目にして鳥肌が立った。
青い鱗の龍がとぐろを巻いて、洞窟の天井に陣取っている。
そいつはゆっくりとこちらに首を伸ばして杏樹を覗き込んできた。
「……起きているのだろう? 娘。わかっているぞ? 答えよ。妖怪を撃つ機械に乗った人間を、お前は知っているのか?」
どうやら目を覚ましたことがばれていたらしい。
杏樹は、隠しても無駄だと悟って目を開いて立ち上がる。
「……」
だが質問の意味はまるで分からない。
妖怪を撃つ機械?
杏樹が首をかしげていると龍は訝しみながらも言葉を続けた。
「……何日か前の話だ。我が領域に毒がまかれた。頭に来て一暴れしてやろうとしたら、我は妙な人間に攻撃されて撃ち落とされたのだ。心当たりはないか?」
だが言葉をそこまで聞いて、杏樹は頭に一つの顔が浮かんでいた。
「……あ」
楠君じゃないかこれ?
顔には出さなかったつもりなのに、杏樹の気づきは龍に丸わかりだったようだ。
「知っているのだな? ……ならば話せ娘。ここ数百年であれほどの屈辱は記憶にない」
本当にポーカーフェイスの練習をやった方がいいかもしれない。
杏樹は言葉に詰まり、ちょっと泣きそうになった。
「……えっと」
これはどうしたものかと杏樹は乾いた喉を引きつらせる。
もちろん先日、河川敷で目撃した犯人と思われる模型部部長に心当たりもある。
この龍。あの川から出てきたやつだ。
まさか告げ口するわけにもいかないのが困りどころだった。
「ヒヒヒ。言った通りでしょう? こいつを囮に使えば敵をおびき出すことができるでしょう!」
「!!」
ここぞとばかりに自分の手柄を主張するストーカーを杏樹は睨みつける。
助けるどころか、下手をすると楠君をもっと危険な状態に引っ張りこんでしまうかもしれないと思うと、汗が冷たくなっていくのを感じた。
だが、ストーカーの言葉を聞いて不快感を示したのは杏樹だけではなかった。
「……もうよい」
龍は眉間にしわを寄せ、ストーカーに告げたのだ。
「へ? いえいえ、確実に勝利を収めるためには必要なことでございましょう? この娘を人質にすれば赤子の手を捻るように殺せますよ!」
しかし空気を読まないストーカーの言葉は続く。
どうやらこの龍はストーカーのやり方に不快感を覚えているらしい。
ピリリと肌で感じるほどのプレッシャーを発し、龍は限界寸前だった。
だが―――先に限界を迎えたのは杏樹の方だった。
「―――ちょっと! いい加減にしてよ!」
「へ? キヒィ!!!!」
拳からバチリと稲妻が飛び出たと感じるほどのクリーンヒット。
フルスイングの拳はストーカーに命中して、ボールのように跳ね飛ばした。
「……ホントだ。殴るだけでも効果があったんだ」
やった後に自分でビックリした。
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