ダンジョン学園サブカル同好会の日常

くずもち

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第48話これできっと大丈夫

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 ダンジョンで生まれた素材は、地上の素材とは違う。

 その最も大きな差異は魔力成分の有無である。

 だからそこをクリアするために現地調達すれば、ダンジョンに小部屋と一時的にでも認識される様だ。

「ホントになんでそこまで?」

「いや……欲しいでしょトイレ?」

 月読さんの困惑の視線は強烈だった。

 トイレは確かに欲しいが、まぁその本当の理由はカーペンターの解放条件がダンジョン内部の素材を作って建築を行う事だったりする。

 だから僕としては、この条件を満たすために授業時間を活用しようという算段だった。

 だがなんにせよ用意した機材が重い。

 何度もやりたくはないから、今日中にやってやろうと思っていたらパーティに誘われるイベントが発生したわけだ。

 正直どうしようかと思ったが……今回はそのまま決行させてもらった。

「ああ、月読さんはその辺のモンスター狩ってもらっていい? 何か作ると壊しにくるって聞くから」

「……わかったわ。暇だし」

 本当に申し訳ない。

 さて、1階で物を作ろうと思うと資材は限られる。

 建物と判定される素材は何だろうと考えた僕が目を付けたのは、ダンジョン床の石畳だった。

 そもそも引っぺがせるものなのかとも思ったが、テコの原理を使って……グイっとやったら、今の僕なら有り余るパワーで一発だった。

「おお! これはいけそう!」

「……この床剥がせたんだ」

「いやぁ、驚きだよね」

 ひとまず建設予定地に剥がした床板を積んでゆく。

 スキルを解放するための最低床面積は決まっているみたいなのでそこはメジャーで計測し、僕は地道に一個一個積んでいった。

 その間モンスターが何度か突っ込んできたが、スレッジハンマーで脳天を一撃して撃退。

 腕は鈍っていないな。うん。

 カニなら可食部だけ残して、ハンマーでも綺麗に締められます。

 ちなみに1階のカニはヤドカリに近いのでミソは気にしない。あんまりおいしくなかったんだ。

「あ、月読さん。カニと豚はこっちに流してもらっていいよ」

「……すごく手際がいいわね」

「まぁ馴れかな? ずっと1階で狩りをしているから」

「……」

 豚とカニは少し確保しておいて、部活のみんなで食べる予定である。

 セーフエリアならバーベキューくらいしても誰にも文句は言われまい。

 モンスターの素材を集めつつ、石材をどんどん積んでゆく。

 幸いレベルが上がったパワーのおかげで、目的の小部屋くらいは簡単に完成することが出来た。

「ふぅ。……これでトイレっぽくなったかな?……いや、便器もないし、これじゃタダの小部屋か」

『いや。便器は重要じゃないだろう? 建築に認められた。サポートジョブカーペンターが解放されたようだ』

「お、じゃあ使ってみようか」

 攻略君の知らせで、僕は手のひらを握り締めた。

 カーペンターとやらは、メインのジョブとは別にサポートジョブとして付けられるようだ。

 戦闘というよりもダンジョンの中での活動を助けてくれるという事なのだろうが、かなり応用の幅が広い。

『物質を加工する魔法が使える。今なら、便座を作れるかもしれない』

「……それは出来たら革命だね」

 言われるがままに適当な大きさの石に手を当てる。

 そして魔力を流し、ひとまずトイレを思い浮かべると、便器と同じ形の石が出来上がった。

「おう……表面ツルツルだ。めちゃくちゃ簡単に出来そう」

 そして思ったよりも精度が高い。これなら色々と工程をすっ飛ばせるあたり、さすがはスキルと言ったところか。

 建築のこれも一種の魔法だと僕は再認識した。

『エンチャントも出来るから、かなり使い勝手はいいよ』

「エンチャント?」

『そう。道具に半永久的に魔法を掛けるスキルだ。ダンジョンの魔力を使って水や火を出せると言えば分かりやすいか』

「……なるほど」

 そいつは完全版トイレが出来上がりそうだ。

 授業の終了時間も近い。これはタイムアタックだった。

『最後に出来上がった建物をスキルで固定だ。これをやっておかないとダンジョンが組み替えられる時になくなってしまうから忘れないように』

「それが出来るから大工なわけだ。何気に一番重要な魔法っぽい……よしできた!」

 魔力と技術のすべてを使い、僕はやり遂げた。

 喜んでトイレの外に飛び出ると、ジト目の月読さんと目が合う。

 ……しまった。もう完全に一人でやってる気分だった。

「……終わったの?」

「お、おかげさまで……」

「そう。見せてもらってもいい?」

「もちろんどうぞ?」

 月読さんそんなにトイレが見たいの?

 意外にも興味を示した月読さんは、しかしそれでも呆れ半分に小部屋に入った。

 だけど飛び出してきた彼女は、やけに驚いた顔で僕に詰め寄って来た。

「……どういうことなの! ト、トイレがあるんだけど?」

「そりゃあトイレを作ったからね」

「……便座にタンクがついてて、蛇口で水が流せたわ。手も洗えたんだけど?」

「……必要でしょ? 現代人には? ああ、でも基本はポットンだけどね。ダンジョンの自浄作用に最後は任せるよ」

「……」

 チョット得意げなのは許してやって欲しい。つまるところ会心の出来栄えのトイレを自慢である。

 そして何で隠さないかと言えば、考えてみたら隠す意味があんまりない。

 彼女は僕がやったことを話すかもしれない。

 しかし信じられなかったら今まで通りだし、信じられたら他にもトイレが増える。

 僕としてはカーペンターはもっと数がいてもいいなと思った。

「なるほど……あなたが1階に拘っていた意味がわかったわ。……あなたは一つの階層を熟知したかったのね。モンスターの特性を完全に見極めて、階層の素材まで調べていたなんて……確かにこの技術は需要がありそう」

「そ、そうでしょう?」

 なんか月読さんもいい感じに勘違いしてくれたようだ。

 すごく感心されてしまったが、彼女が見た今日の成果は結局トイレの完成である。

 まぁこれでもう今後一緒にパーティを組みたいなんて言われることもないだろう。

 この日はこれで解散になったが、僕には一つ疑問があった。

「……結局月読さん何がしたかったんだろう?」

 本当に1日トイレ作るのを手伝ってくれただけだった月読さんに、僕は特大のクエスチョンマークを浮かべた。


 ちなみにトイレは無事ダンジョン1階に建築物として認識された。

 マップが変わってもランダムで1階層のどこかに現れるようになったトイレはたまに目撃されているらしい。
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