ダンジョン学園サブカル同好会の日常

くずもち

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第47話クラスの女子に誘われた

「ねぇ。少しいいかしら? 今日の授業、私と一緒にパーティを組まない?」

「…………え?」

 なんか同級生の女子から突然話しかけられて誘われた。おかしい。

 一体何が起こっているのかわからないが、僕は学生的にすごいイベントが発生している気配を感じた。

 しかし見覚えのある顔はおそらくガチ勢。

 今自分が授業中に回っているフロアではどう考えてもレベルが釣り合ってはいなかった。

「え、えっとー。でも僕は精々2階層だよ? さすがに物足りないんじゃ?」

 正直にそう伝えると、分かっていると彼女は頷いた。

「……少し気になることがあって。もちろん私が誘ったんだから、貴方の都合に合わせるわ。どうかしら?」

 この状況。まず断るのがベターな選択だろう。

 ただし周囲から集まる視線が、妙なプレッシャーを放っていなければという話だが。

 何か目的があってこうして声をかけてきているのだから、無下にするのはすこぶる印象が悪い。

 昔、男子の誘いを断った時とはまた一つ違った印象の悪さがあることは疑いなかった。

「……そうだねぇ」

 ニッコリと笑って、そう考えるまでほんの数秒。

 結果を言うと、僕は様々なものに屈した。

「それでいいならいいです……よ? でも今日はかなり変わったことをするから……ホント申し訳ないよ?」

「いいよ。よろしくね」

 だがやるべきことを譲るつもりはない。それが僕、ワタヌキ 鐘太郎である。

 何ならここで嫌な顔の一つでもされると思ったが、まさかの二つ返事でOKだった。

 本当にわけがわからない。

 だが彼女の思惑が何であれ、きっと授業が終わる頃には失望に変わると思うと心が痛んだ。

「じゃあよろしく。ええっと……」

「……私の名前は月読 カノン。変わった名前でしょ?」

「いい名前だと思うよ? 僕は、ワタヌキ 鐘太郎。古風な名前だねってよく言われるよ」

 そのレベルの美少女の名前覚えてないってマジか!? みたいな視線がちょっとうるさいよ。

 覚えてるわけないだろ? 話す機会なんて卒業までないと思ってたんだから。

 しかしせっかく自己紹介をしてくれたが、本当に今日で話すことすら最後になるかもしれない。

 なぜなら今日僕は……1階でトイレを作るつもりだからだ。



「ああ、よかったねぇ。授業の時間にパーティを組めるなんて。君はすごく頑張ってるから心配してたんですよ」

 受付のお姉さんに喜ばれつつ、受付を済ませる。

 いや、経緯を考えると決して誇れない臨時パーティで申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

「あ、ありがとうございます?」

「貴方、よくダンジョンに来てるの?」

 月読さんは尋ねてくるが、ダンジョンに入り浸っている時間は相当なものだと自負していた。

「……ええまぁ。せっかくダンジョンに入り放題なので」

「なのに、2階には行かないの?」

「まぁ……中々?」

 いつも基本的に頭がおかしいほど深い所に行っているとは言えない。

 あの活動を早々に漏らしたら、先生方あたりからダンジョン出入り禁止を喰らいそうだった。

「……よし」

 しかし今日は楽しみにしていた挑戦の日。

 今日この日のために買ったばかりの巨大リュックに入っているのは、様々な工具の類だ。

 今にもモンスターを狩りに行こうとしていた月読さんは今更ながらそれに気がついて、ついに質問してきた。

「……一体何をするつもりでそんな大荷物を?」

「いや、今日はいい感じの場所にトイレを作ろうと思って」

「それじゃあ、モンスターと戦う時に無用な危険に―――トイレ?」

 ノリツッコミからの驚き顔は素直にかわいいと思う。

 ただ、彼女の聞き違いでも何でもなく、本日の予定はトイレ作りである。

「……何でそんなことを?」

 月読さんは疑問を持ったようだが、逆に僕は聞いてみたかった。

「いや……不便じゃない? ダンジョンにトイレがないの?」

「……不便ね。女の子は特に」

「そうだと思うんだよ。だから実験」

 同意は得られたが、困惑の表情を浮かべた月読さんはたぶん無理だと思うと、その根拠を語った。

「……知っていると思うけど。昔ダンジョンに仮設住宅を作った人はいたそうよ。でも、次の日には綺麗になくなっていたんですって」

「それは聞いたことがあるけど……試してみようと思うのは……これだ」

 ジャラリと僕が月読さんに見せたのは、大荷物の中に入っている石畳を剥がす機材一式だった。

「……なんなのそれ?」

「いや、ダンジョンの床ひっぺがして積んでみようかと……」

 まぁ1階で一番大量に目につく素材だよねと言うと、正気を疑われた気がした。
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