ダンジョン学園サブカル同好会の日常

くずもち

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第72話悪魔狩り

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「さぁ行くよ!」

 浦島先輩の鞭がバチンと地面を叩き、サキュバスはパチンと指を鳴らしてピンク色の炎を飛ばした。

 サキュバスの魔法はムーディな一見ふざけた色合いだが、熱は相当なもので飛んできた炎の塊は周囲の温度を一気に上げた。

「よっと!」

 だが浦島先輩が左手を勢いよく上に向かって突き上げると、同時に地面が壁になって炎を弾いた。

 おお、浦島先輩の方がよほど錬金術っぽいことをする。

 今の浦島先輩の魔力なら、相当大規模に土の魔法を操れそうだった。

「炎がメインウエポン? なら相性抜群だ!」

 更に連続で土の塊がサキュバスに襲い掛かるが、サキュバスは空を飛んだままヒラリヒラリと器用に回避して見せた。

 完全にかわし切ったサキュバスは勝ち誇る様に笑うが、その時フロアにギターの音が響いていた。

 かなりの音量で、他のモンスターを引き寄せるかもしれないと一瞬僕はそんな心配をした。

 そして確かに演奏はモンスターを呼び出しはしたが、しかし今までとは確実にその性質が変わっていることに僕も気がついた。

「なんか寒いような。……ゴースト系のモンスター? だけど敵対する気配がない……」

 僕の疑問に答えたのはもちろん攻略君だった。

『ああ、彼女の音が彼らを引き付けている。そして魅入られた彼らは彼女に力を貸さずにはいられない』

「攻略君……それってネクロマンサーだから?」

『ああ。ネクロマンサーのスキルだ。だが彼女のスタイルがスキルに影響を与えて面白い形になっているね。彼女の出す音が周囲の力を吸収して、結界の役割を果たしているようだ」

「……なんだか物騒なこと言ってない?」

『まぁ物騒だ。だが効果は分かりやすい。生きているモノは歌に近づきたがらない。逆に生きていないモノは吸い寄せられる。ネクロマンサーのステージ完成だね』

「生きてても吸い取られるのか……僕ら死なない?」

『敵味方の識別もやっているよ。いきなりでコレは天才的なセンスだ』

 何だかよくわからないが、大丈夫らしい。

 ただ、ステージで何が起こっているかは僕にも分かった。

 ゴースト達から、そして周辺からレイナさんに力が集まって行く。

 ここは半分は霊体のようなモンスターばかりの階層で相性もいいのだろう。

 確実にレベル以上の魔力を扱うレイナさんにサキュバスはひるんだ。

 すかさずそれを察知した浦島先輩は自分の手元を操作して、ヘルメットの青いLEDを点灯させた。

 とたん、ピタリと動きを止めるサキュバスの身体には、透明な極細の糸が幾重にも絡まっていた。

「……水ワイヤーの魔法で拘束完了! いいよ!」

「わっかりました!」

 ここでフィニッシュである。

 今日一番の激しさでギターがかき鳴らされると、溜まりに溜まった雷はサキュバスを一瞬で消滅させた。

 そしてそれでも残ったわずかな霞はフヨフヨ漂っていたが、すぐに浦島先輩のノートに吸収されてボンヤリ光り輝いていた。

「よっしゃー! これでいいんだよね!」

「はいOKです。テイム出来てますよ! おめでとうございます!」

 確かにノートに悪魔は封印され、浦島先輩は歓喜の勝鬨を上げ、レイナさんは絶望の悲鳴を上げる。

 これが今回の一連の悪魔テイムの流れだった。

 だがまだ戦いは始まったばかりだ。

 彼女達は十分にこの階層でも戦えそうで、そうなると捕獲をためらう理由など
一つもない。

「よし! じゃあ次行こう次!」

「そうですね! 次お願いします!」

「心得ました……じゃあ次っすね」

 まぁどんな奴かはモザイクでわかんないんだけど、僕は次の獲物を探しに行った。



 結局浦島先輩とレイナさんはすさまじく頑張ったが、レイナさんが仲間に出来たのは1体。

 浦島先輩は3体と、ジョブの有利を完全にひっくり返した結果となった。

 他はノートに入った瞬間ノートが燃え上がって、灰である。

「ふぅ……まぁざっとこんなもんよ。情熱の勝利かしら?」

「ぐっ! ネクロマンサーの名折れです!」

 何かそこには負けられない戦いがあったようだ。

 むなしい戦いだが、しかしおそらくは世界で初めて悪魔のテイマーが誕生した瞬間でもある。

 新しい仲間も増え、状況が一段落したことを見計らって、僕はそう言えばと作っておいた冊子を二人にも渡すことにしたわけだ。

「テイムお疲れさまでした。じゃあ、晴れてデーモンテイマーになった二人に僕から贈り物があります」

「贈り物? 何だろう?」

「本当ですか! それは期待してしまいますね!」

 だが二人は取り出した雑な冊子でいったん身構え、そして手に取った冊子の内容を確認した二人は一気に表情が険しくなった。

「こ、これは……」

「まさか……モンスターの分布ですか?」

「そう。これから僕らはどんどんダンジョンの中を自由に歩けるようになってくるから、どの層にどんなモンスターがいるか、知ってた方がいいでしょう?」
 
 これから先、レベルが高くなってくれば自由にダンジョンを歩きたくなることは、予想出来た。

 実際に、その実力が付いて来ていると実感した今、なおさらだろう。

 僕だって、これは値千金の価値のある情報だとわかっている。

 だがこの先テイマーとしてダンジョンを廻る浦島先輩にこの情報は、きっと彼女の生存率をぐっと高めてくれるはずだった。

「ありがとう……大事にするよ」

「いえいえ。まぁ活用してください」

 修学旅行の旅のしおりみたいにホチキスでパチパチ止めたやつだから大事にするにも限度はあると思うから、メモくらいの感覚で気軽に活用してもらいたい。

 そして浦島先輩はしっかりとそれがおそらく真実だと認識した上でページをめくり、とあるページで手を止めていた。

「……ねえねぇ、ワタヌキ君? 君の用意した冊子のさ、ここなんだけど……」

「はい、なんです?」

「精霊のいる階層にさ、妖精のモンスター多い辺りあるじゃん?」

「はい。ありますね」

「ケットシーって書いてあるんだけど…………どういうこと?」

「え? ……あー、いますね」

 確認すると、確かに僕が打ち込んだ文字列の中にケットシーの文字があった。

「……えーと」

 浦島先輩の顔がめっちゃ近い。

 そして腹の底というか地獄の底から絞り出したような声で、浦島先輩は僕の耳元で囁いた。

「……言えよ」

「……すんません!」

 別に意地悪じゃないんですよ!? 本当に詳細は知らなかっただけなんです!

 浦島先輩は信じてくれたが、今度はケットシー狩りに連れていかれるのは確定になりそうだった。
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