ダンジョン学園サブカル同好会の日常

くずもち

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第73話サポートジョブの可能性

 ここのところは、嵐のような日々だった。

 しかしそのかいあって僕らは新たなメンバーを正式にパーティメンバーとして迎え入れることが出来たのではないだろうか?

 僕はそれなりの達成感に浸りながら、授業中やっぱり1階層をうろうろしていた。

 そしてやっているのはトイレの施工である。

「うーん……だんだん速度が上がって来たなぁ。一時間で二つはいけるんじゃないか?」

『いいのかい? また1階作業で? 別のジョブを育てるって選択肢もあるんだよ?』

 攻略君は強くなるのに効率的だとは言えないのでは? と警告を発していたが、僕は思った。

「いや……考えてみると、これ以上強くなることって必要かなって?」

『なんてこったい。どうして君はそういう結論に走るかな?』

「だってぇ……60階まで行ったんだよ? 現状レベルは目標よりも高すぎるんだ」

 僕の元の目標は精々鉄巨人の手前くらいに卒業までに行ければいいんじゃないかな? くらいのものだった。

 そういう意味では正直やりすぎとも言える状況だった。

『まぁそうだね。当初の目標が低すぎる気はするけど』

「それに聖騎士って……かなり強いでしょう? 他にあれこれ手を出して、器用に使える自信がない」

『うーん。期待に応えすぎてしまったかな?』

「そうかもね。感謝してるよ」

 これは本当に心からそう思っている。

 僕の感謝の念はさすが一心同体だけあって伝わったようだった。

『それならいいんだが。それでも1階で生真面目にトイレを作り続けるのはさすがにどうかと思うんだよ』

 しかし攻略君は、この地味な現状に納得はしていないみたいで、まったく僕と違って派手好きな奴だなと僕は笑った。

「いや、行きがかり上、仕方なくってのもあるにはあるよ? でも他にもちょっとした理由はあるんだ。なぁ攻略君? 正直に答えて欲しいんだけど、サポートジョブって熟練度の上昇に戦闘や僕自身のレベルってあんまり関係ないんじゃないか?」

 そう尋ねてみると攻略君はあっさり肯定した。

『よくわかったね。その通りだよ。そこはやはり実際に術を使うことで最も効率的に熟練度が上がる。……まさか君の狙いは、サポートジョブの熟練度なのか?』

「そうだよ。メインジョブを手当たり次第に齧るよりも、可能性が開けそうじゃないか?」

 メインジョブと言われているものはやはりダンジョンを踏破するための戦闘技能スキルに覚醒することが多い。

 しかしそんなメインジョブを育てるためには格上との戦闘が最も効率がいいのは、体感済みだ。

 だが現在、格上のモンスターと戦おうと思うと授業時間じゃどうあっても時間が足りないだろう。

 じゃあこの授業という限られた時間で最もロマンがあるのは、サポートジョブの方だと僕は考えたわけだ。

「錬金術やら大工やらクラフト系が面白すぎる。何ならこのスキル、戦闘にも十分応用出来るだろう?」

『そうだね。なるほど……しかしなぜトイレを?』

「それはまぁ、今のところ思いつかないから手慰みで?」

 役に立つことは確実にわかっているからやりがいはあるし。

 それでもそろそろ相談した方がいいかと考えていたくらいだったが、攻略君は僕の方針に理解を示した。

『なるほど、とても良い方針だ。ならば私もそのつもりで攻略を組もうじゃないか』

「お? レベル上げメインじゃなくてもいいんだ」

 ここまでが、鬼のようなスピード感だっただけに何だか意外に思っていると、攻略君は当然だと答えた。

『君が最短で力を求めたから、今までのようになっていただけさ。何かを思いつき、方針が変わったのなら、しっかり合わせるとも。攻略は何もレベル上げだけではない。私はやりこみだって立派な攻略だと思っているよ』

「……なるほど。それは頼もしい」

『しかし懸念はある』

「なんだろう?」

『どうあっても地味だから女の子にモテ……いや、何でもない』

 だが聞き捨てならないことを言い出した攻略君はさすがに見過ごせず、僕は思わず声のトーンが一つ下がった。

「攻略君……反省がないのはどうかと思う。そもそもだ、なんでいつかは湯沸かしなんていかにも時間がかかる方法にした? 林間学校じゃないんだぞ? 散水機やら、高圧洗浄機やら、水をかけるだけなら方法はいくらでも……」

『わかった! 悪かった! 良かれと思ってやったんだよ! 戦闘経験にもなるかなって!』

「なったけれどもね……まぁいいよ。今はサポジョブの話をしよう。最初はカーペンターのスキルでもいいかなって思ったんだけど」

 武士の情けでお話はここまでにしておくと、攻略君はどこかホッとして積極的にアイディアを出してきた。

『ふむ。ではそろそろトイレだけでなく他の物を作ってみたらいいんじゃないかな?』

「他の物ねぇ……思いつかないから保留にしてたけど、まぁ確かに1階にそもそもトイレが必要かっていうとそうでもないんだよな」

『だろう?』

 トイレが必要だとしたら、もっと深い階だ。

 具体的に言うなら3階から10階の間にあれば、助かる人間は多そうだと僕もそう思う。

『そもそもこれからジョブが育てば、一度作った物の複製なんてジャンジャン出来るが、それじゃあ熟練度が溜まらない』

「そうなんだ。……じゃあどうする? 僕だってそんなにアイディアは続かないぞ?」

 最悪コツコツと10階までトイレを作り続けるのもありだと思っていたが、思わぬ落とし穴だった。

『だからどうだろう? 思い切ってここはショップを作ってみてはどうかな?』

「ショップ? 何かアイテムを売れってこと? それはちょっと。……店員やるのも大変だし」

 これはまた浦島先輩が言いそうなことを言い出したなと思ったが、攻略君は続けた。

『いやいやそこが本質ではないよ。無人販売所でもなんでも、形式は何でもいい。作った物が売れてくれれば次が作れるだろう? アイテムボックスが無限だとしても、管理が行き届いていなければ意味がない。これから先、仲間とダンジョンを巡るだけでもアイテムはどんどん増えてゆくよ」

「まぁそうかも?」

『そうだよ。なにせ私がいる。その上サポートジョブを重点的に鍛えるというのなら、あっという間にアイテムが溢れるだろう。そうなった時、アイテムをさばける場所は便利だ。その辺に捨てていたらダンジョンが消してしまうからもったいないしね』

 僕は攻略君の提案になるほどと手を打つ。

「いいじゃないそれ」

 現状でも素材もアイテムも溢れつつある今、それは確かにとてもいい案だと僕には思えた。
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