ダンジョン学園サブカル同好会の日常

くずもち

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第128話まだそこまで割り切れない

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 思ったよりも今回のダンジョンアタックは前準備が細々と必要だった。

 まず僕は桃山君に声を掛けて、海上での巨大足場を製作すべくジャングルフロアで斧片手に木材伐採に励むことにした。

「ごめんね桃山君。手伝わせちゃって」

「なんのなんの。今度の探索に必要ならもっと頼ってくれないと申し訳ないでござる」

 桃山君はばっさばっさと刀で大木を切る。

 僕も遅くはないつもりだが、桃山君の伐採スピードに比べてしまうと遅すぎるくらいで、彼の剣術は更に磨きがかかっているようだった。

 おかげで材料はすぐに集まり、今すぐにでも浮島を作れそうだ。

 僕はチェックしながら丸太をアイテムボックスに詰め込んで良しと頷く。

「うん。こんなもんでいいかな。あんまり広すぎてもまずいらしいから」

「そうでござるか。適量だというのならよかったでござる。次の探索は全員で行くんでござろう? ちょっとは修行の成果を見せたいでござるなぁ」

「そうだねぇ。とはいえ、最近はみんなサポートジョブにはまり始めてるからなぁ。探索中に成果を披露するのは難しいかもしれない。あれは……ある意味レベルアップ以上に深い沼だよ」

 僕だって軽い気持ちで大工なんて付けたら、あまりにもいろいろできて驚いたくらいだ。

 何となくネーミングで何ができるのか想像できても、言ってしまえばダンジョン仕様のマジカル大工だ。

 ニョキニョキ建物を建てられるスピード感は爽快だし、使えば使うほどに成長している手ごたえさえあるのだからやめられない。

 そういうのは僕らと素晴らしく相性が良くて、桃山君も思い当たる節はあるはずだった。

「で、ござるなぁ……拙者もサポートジョブの育成は順調でござるよ。一つ取ったら次々と派生のサポートが発生して、楽しくなってきたでござる」

「そうなんだ。やっぱ服飾系はスキル豊富?」

「そうでござるな。アクセサリーや小物が作れそうなものだったり、材料によってもレザーを扱えそうだとか、宝石を扱えそうだとか、そんな感じでござるなぁ」

「だよねぇ」

 僕がそうなんだから、そろそろ楽しさに気がついてのめり込み始めている頃だろうと思う。

 しかしいかに楽しくてもほどほどで切り上げて、今回の探索にはそれぞれ準備して欲しい物も存在した。

「だけど今度のレベルアップ行軍はみんな楽しみにしていると思うんだけど……あれだね、問題があってさ」

「問題というと?」

「木を切ってイカダを作ろうとしてるからわかると思うんだけど、次からは海のフロアらしいんだよね」

「ああ……90階から下がって話でござるな」

「そうそう、それで―――水着が……いると思うんだよね」

 できる限りサラッと言ったつもりだったが、声が震えていなかったか心配だ。

 そしてさすがは桃山君である。そんな一言で彼はすべてを察したようだった。

「なるほど? ……そうでござるなぁ」

「でも90階層なんて普通の水着で行ったら危ないから……まぁ普通じゃない水着がいるとは思わない?」

「…………まぁそうかもしれないでござるが、なにが言いたいんでござる?」

 わかっているくせに、あくまで僕に言わせようというのか。

 ならば仕方がないと僕は、端的に頼みごとを口にした。

「桃山君、作ってみる?」

「ハードル高くないでござるか!?」

 しかしこういう話の振られ方は想定していなかったようで素で驚く桃山君だった。

 いやいや、しかし僕に言わせれば君に頼まず誰に頼むんだという話だった。

「適役ではあるでしょ? 桃山君の海の最強装備に興味があるなぁ」

「……買って来た水着を錬金窯に入れるだけでいいでござろう!? というか……どうやって女性陣に水着を着てもらうかーみたいなアニメ的定番の話かと思ったら、レベルが三つくらい上でビックリしたでござる!」

「ああ、そういう感じ。……ホントに? 桃山君それで満足?」

 確かに一般的には桃山君の言うことは正しい。いや、むしろ女性水着を選べと言われるだけでもかなりハードルの高いミッションであるとは思う。

 でも僕は他ならぬスキルを身に着けた、職人気質の桃山君自身がそれでいいのかと純粋に気になって聞いてみた。

「……」

 ただ咄嗟のその沈黙がすべての答えだった。

「…………と、当然でござる。当然でござるよワタヌキ氏。拙者紳士でござるから。本人から依頼があればその時また考えるでござるが……」

「ほほう? 言ったね?」

 しかし桃山氏、その躊躇いのちょい足しは悪手だ。

 他の同世代の女子ならいざ知らず、サブカル研究部のコスプレ熱高めの女子達がこの提案を恥ずかしいからと断ると?

 残念ながらそれはない。

 僕はニッコリと笑って、それを桃山デザイナーに手渡した。

「では……この要望書に目を通してもらえるかな?」

「は、はい?」

 アイテムボックスから取り出したのはすでに揃った、三人分の要望書だった。

 ワナワナ震える桃山君は、わずかの葛藤の後結局その要望書を手に取った。

「もう! わかったでござるよ!」

「ゴメンね桃山氏。正直海の話をしたら飛びつく面子しかいなかったんだよ。申し訳ねぇ」

 あの面子に頼まれたら断れるわけないんだ。

 どうか穏便に引き受けて欲しいところだった。
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