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第127話海の気配
「懐かしいなぁ。昔ハマったんだよこういうの。……500円はちょっと高くない? いや……そうでもないか?」
ブツブツ言いながら、嬉々として500円を投入する松林君がハンドルを回すとカプセルが出てくる。
そしてカプセルの中から飛び出したのは、空に浮かぶどんぐりくらいの石のような精霊だった。
「…………なに?」
「なるほど」
下級精霊のようだが、相性がいい。うまくなじむ確率が高いのは十分当たりとも言える。
「……なんだこれ?」
「土の精霊だね。相性よさそうでよかった」
「精霊!? マジか!?……なにそれ?」
訳が分からんと首をかしげる松林君だが、彼の反応は当り前ではあった。
「仲間になってくれるかもしれないモンスターかな? 消えずにいてくれるなら名前を付けると力を貸してくれるよ」
「へー……そんなモンスターもいるんだなぁ。いやー……本当に面白かったよ。あんがとなー」
松林君はまるで本当におもちゃでも買ったような軽い感じだった。
その時の反応は今一だったが、まぁ最初はこんなものではないだろうか?
手を振り、別れた僕はフゥとため息を吐くと、新たに気合を入れ直した。
「さて……本格的に準備をするかな」
『そうだね。ではまず……』
「まず?」
『ホームセンターに行こうか』
「……なんか久しぶりだ! 安心感さえあるなぁ……」
『そうかな?』
僕としては、最初の一歩が安全なのは大歓迎。
ついでになにかおやつのストックも買いに行くとしよう。
僕はホームセンターに向かうとさっそく大型カートに次々に道具を入れてゆく。
『大量の洗濯ノリを忘れないでね。後で薬局でホウ砂って薬品を買って行こう。後は錬金窯をとにかく水に浮かせないといけない。ゴムボートじゃちょっと心もとないから足場になるくらいでっかいイカダを組もうか。これは、ダンジョンの方がいい木が沢山あるからそれでいいね。斧も買っていこうか。あとは固定具と浮力の高い素材でも補強用に買っておいてよ。ああ、あのでっかい発泡スチロールなんてどうだろう? いい感じに使えそうだ』
「はい」
本日の攻略君は非常に荒ぶっていた。
「イカダってことは……水があるのかな?」
イエスマンになっていた僕は手を不意に止めて尋ねると、攻略君はその通りと珍しく答えを教えてくれた。
『そりゃあそうだろう。守護者と水の中で戦ったなら次からは水系フロアだよ。しかも海だ。低層のなんちゃって水場とは規模が違う』
「広いんだ……それは中々難儀な攻略になりそうだなぁ。濡れるのってそれだけで疲れるから」
僕なんかは今から想像するだけで、全身に疲労感を感じてしまいそうだったが、攻略君は一押しだった。
『確かに水は危険だが非常に扱いやすくもある。ジャングルではとてもお世話になっただろう?』
「かなりお世話になったね……よくモンスターが沈んだよ」
『そうとも。だから今回も大いに活用させてもらう。90階層代でも最も水深の深い場所に泳げないモンスターを落として倒すよ』
水の一番危険なポイントを使ってこの攻略君はまた情け容赦ないレベル上げを決行する気みたいだった。
「うーん沈める系かぁ……。まぁ90階でまともに戦うよりは支持したい」
しかし階層を考えると、そうでもしないと勝てないのはわかる。
自然の大いなる力を利用するのはリスクもあるが、人類が最も多用してきた戦略の一つだとも言えた。
『ただ……恐ろしく効率のいい方法だが一つだけ問題がある』
「……攻略君のいう問題には興味があるなぁ」
今までの攻略でもどんなに問題があってもそれを認めようとしなかっただけに、注目したいポイントだった。
すると攻略君は非常に悩まし気に言った。
『うん、恐ろしく……もったいないんだ』
「もったいない?」
『そうなんだよ……すべて倒して素材を売りさばけば、すごく稼げることが予想できる。それを経験値の効率と天秤にかけてすべて海に捨てることになるんだよね……』
本来なら価値のある素材と大量の経験値が得られるところを、回転率を重視してレベルだけを上げるようなことをしたいわけだ。
確かに悩ましいが、おそらく普通に倒すとそれだけで時間がかかることは容易に想像がついた。
「……なるほど? ちなみにだけど、このレベルアップ方法に名前を仮に付けるとしたらなんて付ける?」
『そうだね……キング化オリハルコンスライム増殖バグ?』
「バグなんじゃないか」
そもそも何だいバグって。
さすがに聞き咎めると、攻略君はキメ声で語った。
『……バグのような仕様だよ。準備が大変だけど……君達の今までの旅路は無駄ではなかったんだ』
「そうやってまた雰囲気でごまかそうとするんだから。そんなことしなくてもちゃんと聞くから、正直に言いなさいよ」
『……別にごまかしたわけじゃない。分かりやすいからバグと表現したけど、おかしな挙動なだけの普通の反応だ』
とても嫌な予感しかしないが、極めて有効な経験値アップ法であることには自信があるみたいだ。
まぁ一押しならば問題ない。
僕はどんなにイカダの上で暴れても大丈夫なように、店で一番頑丈そうなロープを沢山買いながらふと思う。
おっと海ってことは、こいつは水着イベントってやつになるんじゃないかと。
もしそうなら前もって連絡が必要になるだろう。
僕はダンジョンについては考えるのは止めて、ブーメランパンツと赤と白の縞模様の入った全身水着。どっちがネタ的においしいか考え始めていた。
ブツブツ言いながら、嬉々として500円を投入する松林君がハンドルを回すとカプセルが出てくる。
そしてカプセルの中から飛び出したのは、空に浮かぶどんぐりくらいの石のような精霊だった。
「…………なに?」
「なるほど」
下級精霊のようだが、相性がいい。うまくなじむ確率が高いのは十分当たりとも言える。
「……なんだこれ?」
「土の精霊だね。相性よさそうでよかった」
「精霊!? マジか!?……なにそれ?」
訳が分からんと首をかしげる松林君だが、彼の反応は当り前ではあった。
「仲間になってくれるかもしれないモンスターかな? 消えずにいてくれるなら名前を付けると力を貸してくれるよ」
「へー……そんなモンスターもいるんだなぁ。いやー……本当に面白かったよ。あんがとなー」
松林君はまるで本当におもちゃでも買ったような軽い感じだった。
その時の反応は今一だったが、まぁ最初はこんなものではないだろうか?
手を振り、別れた僕はフゥとため息を吐くと、新たに気合を入れ直した。
「さて……本格的に準備をするかな」
『そうだね。ではまず……』
「まず?」
『ホームセンターに行こうか』
「……なんか久しぶりだ! 安心感さえあるなぁ……」
『そうかな?』
僕としては、最初の一歩が安全なのは大歓迎。
ついでになにかおやつのストックも買いに行くとしよう。
僕はホームセンターに向かうとさっそく大型カートに次々に道具を入れてゆく。
『大量の洗濯ノリを忘れないでね。後で薬局でホウ砂って薬品を買って行こう。後は錬金窯をとにかく水に浮かせないといけない。ゴムボートじゃちょっと心もとないから足場になるくらいでっかいイカダを組もうか。これは、ダンジョンの方がいい木が沢山あるからそれでいいね。斧も買っていこうか。あとは固定具と浮力の高い素材でも補強用に買っておいてよ。ああ、あのでっかい発泡スチロールなんてどうだろう? いい感じに使えそうだ』
「はい」
本日の攻略君は非常に荒ぶっていた。
「イカダってことは……水があるのかな?」
イエスマンになっていた僕は手を不意に止めて尋ねると、攻略君はその通りと珍しく答えを教えてくれた。
『そりゃあそうだろう。守護者と水の中で戦ったなら次からは水系フロアだよ。しかも海だ。低層のなんちゃって水場とは規模が違う』
「広いんだ……それは中々難儀な攻略になりそうだなぁ。濡れるのってそれだけで疲れるから」
僕なんかは今から想像するだけで、全身に疲労感を感じてしまいそうだったが、攻略君は一押しだった。
『確かに水は危険だが非常に扱いやすくもある。ジャングルではとてもお世話になっただろう?』
「かなりお世話になったね……よくモンスターが沈んだよ」
『そうとも。だから今回も大いに活用させてもらう。90階層代でも最も水深の深い場所に泳げないモンスターを落として倒すよ』
水の一番危険なポイントを使ってこの攻略君はまた情け容赦ないレベル上げを決行する気みたいだった。
「うーん沈める系かぁ……。まぁ90階でまともに戦うよりは支持したい」
しかし階層を考えると、そうでもしないと勝てないのはわかる。
自然の大いなる力を利用するのはリスクもあるが、人類が最も多用してきた戦略の一つだとも言えた。
『ただ……恐ろしく効率のいい方法だが一つだけ問題がある』
「……攻略君のいう問題には興味があるなぁ」
今までの攻略でもどんなに問題があってもそれを認めようとしなかっただけに、注目したいポイントだった。
すると攻略君は非常に悩まし気に言った。
『うん、恐ろしく……もったいないんだ』
「もったいない?」
『そうなんだよ……すべて倒して素材を売りさばけば、すごく稼げることが予想できる。それを経験値の効率と天秤にかけてすべて海に捨てることになるんだよね……』
本来なら価値のある素材と大量の経験値が得られるところを、回転率を重視してレベルだけを上げるようなことをしたいわけだ。
確かに悩ましいが、おそらく普通に倒すとそれだけで時間がかかることは容易に想像がついた。
「……なるほど? ちなみにだけど、このレベルアップ方法に名前を仮に付けるとしたらなんて付ける?」
『そうだね……キング化オリハルコンスライム増殖バグ?』
「バグなんじゃないか」
そもそも何だいバグって。
さすがに聞き咎めると、攻略君はキメ声で語った。
『……バグのような仕様だよ。準備が大変だけど……君達の今までの旅路は無駄ではなかったんだ』
「そうやってまた雰囲気でごまかそうとするんだから。そんなことしなくてもちゃんと聞くから、正直に言いなさいよ」
『……別にごまかしたわけじゃない。分かりやすいからバグと表現したけど、おかしな挙動なだけの普通の反応だ』
とても嫌な予感しかしないが、極めて有効な経験値アップ法であることには自信があるみたいだ。
まぁ一押しならば問題ない。
僕はどんなにイカダの上で暴れても大丈夫なように、店で一番頑丈そうなロープを沢山買いながらふと思う。
おっと海ってことは、こいつは水着イベントってやつになるんじゃないかと。
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