ダンジョン学園サブカル同好会の日常

くずもち

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第137話また一つ扉を開けよう

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 カフェでギター演奏を聞きながら、僕はパソコンを立ち上げる。

 そして順当に動き出し、セットアップが終わったパソコンを前にして僕はゴクリと息を呑んだ。

 僕の後ろには浦島先輩と桃山君。

 そして龍宮院先生が穴が開きそうなほどじっと見ていて視線の圧で押し潰されそうだ。

 だが問題ない。

 流れるようにダブルクリック!

 ネットワークに接続すると、いつもの挙動でウェブは―――開いた。

 僕はふぅと軽く息をついて、座っている背もたれに体重をかける。

 ああ、作業用BGMと言うには豪華すぎる生演奏を穏やかな心地で聞くことのなんと心地の良い事か……そして演奏が終わった瞬間、僕は拍手と共に宣言した。

「ブラボー! おっ疲れさまでした! 無事ネット開通です!」

「うおおおお!」

「やったでござるな!」

「……信じていましたマスターワタヌキ。アメージングです」

「……うぅ。この上ネットまで使えるようにしたって? 何世紀飛び越えてるんだ君達は」

 偉大なる進展に、僕らは思い切り歓声を上げた。

 世界の扉がまた一つ開かれた気分である。

 それは地上ではすでに通り過ぎた一歩だった。しかし原始時代に等しいここダンジョンの中ではタイムマシン並みのブレイクスルーが今起こったに違いない。

「これ、発表したらちょっとすごいんじゃありません? 第二のビルゲ〇ツ狙っちゃったり?」

 喜びのあまりそんなセリフを口走ると、全員のなんとも言えない視線が僕に突き刺さった。

 そして代表して言ったのは浦島先輩だった。

「……いや、冗談抜きであり得るから、情報は慎重に扱った方がいいと思うよ?」

「……そうですかね?」

 そして龍宮院先生は、先生として難しい声でアドバイスをくれた。

「この後の進路を君がどう望むかによって違ってくるとは思うが……あんまりすごいことをやられると、内密に処理するにも限度があるので、そのつもりで」

「自分で言っておいてなんですけど、そんなにすごいですか?」

 すると、みんな頷いた。

 あきれ顔の龍宮院先生は、適当な椅子を僕の隣に持ってきてちょっと聞いておきなさいと僕に促す。

 僕はなんとなく気まずくなって、襟元を正した。

「それで私も君達がずいぶんな情報を持っているのは察して来ているんだが、その……詳しく聞いてもいいのかな?」

 何がとは言わないが先生も漠然とした不安があるんだと思う。それは僕だってそうだった。

 しかしだからこそここは強気で主張した。

「前にも言ったかもしれないですが、僕らは基本隠してはいないんですよ。隠したいのは僕らの顔くらいのもので……卒業して探索者をやるなら、顔バレもいいかなって思ってます。むしろ今の段階でも、検証した知識は世に広めたい」

 何なら学生に適度に撒いてしまってもいいと思っているのは、結構具体的な計画だった。

「本気なのか?」

「もちろん。いります? ゲ〇ツ権? あげますよ?」

「いや、それは――――さすがに大丈夫なのか?」

 すさまじく微妙な表情で、困惑顔の龍宮院先生だが、大丈夫じゃないのは現状だと思う。

「今全然、大丈夫じゃないでしょう? 下まで降りたから思いますけど、学校で教えてもらった方法でダンジョンうろうろしてたら命がいくつあっても足りないなって思います」

「……それはそうかもしれないが」

 実際危険だと知っている探索者の先生としては耳の痛いところの様だ。

 だがそれは先生達が間違っているわけじゃない。

 それどころか、学校で教えてもらったことは最先端の知識であることは間違いないんだ。

 実際それは先人のダンジョン探索者達が命懸けで手に入れてきた情報を基にしていて、それを教えてくれているんだから本当に頭が下がる。

 しかし僕らはもう一歩深く進む方法を運よく検証できたというだけのことだった。

「ええっと……僕が思ってるだけなんですけど。今ってダンジョンへのアプローチが弱いなと」

 そう言うと、ハイっと手を上げた浦島先輩が補足してくれた。

「それはそう思う。モンスターのテイムとかできないと20階でもキツイよ」

 確かにモンスターをテイムして仲間にするのならした方がいい。

 かつて誰かが調教を試みたこともあるようだが諦めて、一般論はモンスターは極めて危険な猛獣で、決して人にはなつかないとされているし。

「そうでござるな。錬金釜一つ使うだけで、装備の質は格段に上がるでござる」

 装備についても浅い階層で鉱石を採掘できるダンジョンが限られているし、浅い層の鉱石だから大したものは作れていない。だからダンジョンの中のドロップ品で賄っているのが現状だ。

 しかしそんなことをしなくても、魔力を帯びた装備を作り出す方法は存在していて、学校で試行錯誤することすらもはや不可能な事じゃなかった。

「それ凄く思います! あと精霊! 精霊は一押しです! 力を貸してもらうだけでレベルが10は違う感覚です!」

 レイナさんがそう言うのなら、大抵の場所でダンジョン産の魔法的なアプローチは確立されていないのだろう。

 そして、今までの攻略具合を鑑みると、攻略はどうにもそういうものを利用すること前提の難易度だと思えて仕方がなかった。

「いや、しかし先生達が潜っていた時はもっとだね……」

「大変だったんでしょう? 卓越した戦闘センスとか、天才的な魔法の才能とかないと生き残れない感じで。そういうのは何か僕らも感じてましたよ?」

「むぐっ……」

 そしてそういう卓越した探索者を発掘することがこの竜桜学園の目的のはずだ。

 まぁ僕だって、世の中を変えてやろうだとかには興味はないし、自分達の事でやることはいっぱいだがサブカルチャー研究部の活動としてくらいなら、大盤振る舞いしてもいい。

 もしそうすることで少しは常識が更新されて、僕達のいるこの学園のこの世代に限った話でも、安全に力を蓄えることができたら上出来だ。

「というわけで……せっかくです。ここで上げる動画は、アレにしましょう」

 ニヤリと笑う僕は浦島先輩に視線を向けると、先輩はすぐに察した。

「アレって……この間のやつ?」

「そうです。鉄巨人お手軽攻略動画ですよ」

「! それはまずくないか? あいつは学生が無茶できないようにするストッパーでもあるんだ。あそこを容易く突破できるなんてことになれば……何が起こるかわからないぞ?」

 慌てたのは龍宮院先生だったが、しかしそれで振り分けたとしても卒業した後探索者になれば実力は嫌でも試される。

 そんな時センスに代わるモノがなければ、致命傷になりかねない。

 それに僕としては秘策もあった。

「それは分かりませんよ? うちの売店だってありますし」

「……あれって小遣い稼ぎじゃなかったんだ」

 浦島先輩がポツリと心外なことを言うが、もちろんそれだけじゃないよ?

「それで精霊500円で売ったりしませんよ」

 お小遣いを稼ぎつつ、ダンジョン探索者の皆さんの戦力を底上げしようという、小賢しい企みである。

「まぁ動画で上げたからって信じてもらえるかわからないですからね? 現に今上げてる動画の再生数はそんなに伸びちゃいないですし……」

 これは僕の動画編集テクニックがガッカリなせいだから、本当にションボリしてしまう。

「嘘か本当か見極める方法がないでござるか……、まぁでも鉄巨人ならすぐに確認できるでござるな」

「一組、積極的な奴らも攻略見てたからまぁ噂にくらいなるんじゃない?」

「それを見極めるのはそれこそ自己責任てやつですよ。流石にそこまで面倒見切れないです」

「というわけで……」

「ちょ!」

 では早速アップロードといこう。

 鉄巨人攻略戦の画像編集はもうやってある。

 今回はストッパーを解除することになりかねないのでかなり緊張していたが、僕はカチリとマウスをクリックした。
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