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第7章「騎士籍、復活!」
第72話「『うるわしのアデム』親衛隊、登場」
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(UnsplashのRock'n Roll Monkeyが撮影)
クルティカが『聖なる森』で嵐に遭遇していたころ。
もと蒼天騎士、ロウ=レイはようやくホツェル街道のアデムのもとへたどり着いた。
「……アデムさまっ! ご無事ですかっ!??」
ロウ=レイは栗色の髪を振り乱して、街道沿いの建物へ駆け寄る。
その肩には蒼天騎士団の守護魔獣、大ガラスが乗っていた。巨大な姿を小さく変えていた。
ロウは、深夜にもかかわらず建物の扉をガンガンとたたき、大声で叫んだ。
「アデム様っ、いらっしゃいますか!? 夜遅くにごめんなさい!
予想以上に遅くなったのは、
大ガラス様が、場所を覚えていなかったからで……っ」
「……何事も、人のせいにするのは感心せぬのう、ロウ=レイよ」
「だって、本当でしょう? 大ガラス様が目的地を4回も間違えるから……」
「そのような些細な事は、忘れてしまうものです」
「瀕死のアデム様をひとりで残していった場所は『些細』じゃないでしょうがっ!」
「……そう、瀕死でもなかったが……」
漆黒の大ガラスがうそぶくのを聞きながら、ロウ=レイは必死に扉を叩いた。
「すいません、すいません!! 開けてください―!!
あの、蒼天騎士です……あ、もと騎士です……
騎士団長のアデム様のもと……およ? これも『もと』騎士団長よね……」
「いう事はまとめておきなさい、ロウ=レイ」
「はあ、でもややこしいんですよ。廃騎士が、元騎士団長を助けに来たっていうの」
「助けが必要かどうか、アデムに確かめた方がいい」
「なんでそう冷たいんですか、大ガラス様は!
騎士団長と守護魔獣は、つねに一心同体でしょう!?」
「……それほどの関係には見えなかったがのう、あの連中も……」
「あの連中? 大ガラス様、大変な時にワケわかんないことを言わないでくださいよ!」
ロウ=レイが大ガラスに怒鳴った時、ぎいいい……と、扉が開いた。
覗き込むと、内部には鈍く光る武器がずらりと並べられている。
「……街道の、武具屋?」
ロウがつぶやく。肩にとまった大ガラスも赤い目をぎょろぎょろさせ、
「ほお、武具屋に拾われるとは、さすがアデム」
「拾われる……? まさか大ガラス様、瀕死のアデム団長を
街道沿いに放り出していったんじゃないでしょうね?」
「そっと、置いておいたのです」
「どこが違うんです?? もー! これだから魔獣は信用できない!」
「守護魔獣に対して何という口の利き方をするのだ、ロウ=レイよ。
若いもんはこれだから……」
「……しゅごまじゅう? 若いもん……? あんたら、いったい何者だ?」
がしゃっ、と重い金属がこすれあう音がした。
ロウ=レイがとっさに戦闘態勢に入る。
「何者か……と問う前に、名乗るのが礼儀よ」
がしゃり、がしゃりと重低音を響かせて、男が近づいてくる音がする。
ロウ=レイはシャツの隙間に隠してあったレイピアをつかみだした。
「……とまれ。それ以上近づくと、あたしの間合いに入るわよ……」
しゃっ、とロウの手から雷光のようなレイピアがさや走り、構えられた。
だが次の瞬間、するどい声が、
「ロウ=レイ! わが恩人たちに対して、何という無礼を働くか!」
「……おんじん、たち? そして……アデム団長、いったいどうしてそんな恰好に……!?」
そこには、純白の布でぐるぐる巻きにされたアデムが、見事な黒髪を揺らめかせて立っていた。
……無事である、見た感じは。
だが、無事ではない、とロウ=レイは思った。
純白に包まれ……いや、包まれすぎて身動きもできなくなっているアデムは、
まるで伝説の『聖なる森の処女』だ。
やや布に包まれすぎて、孵化直前のサナギか、イモムシに似ているが……。
そして白いサナギの周りには、十人ばかりの男たちが黒光りする武器を手に並んでいた。
槍、斧、短剣、重こんぼう、弓矢……。
いずれも騎士が持つにはやや小さい気がするが、立派な武器だ。
武器だけではない、金属や革の鎧も身に着けている。外見は騎士のようだ。
ただ、武器も鎧もバラバラで統一感がない。
さらに言えば、アデムの周りにいる全員がバラバラなかんじだ。
まるで昨日まで、街道沿いで肉を焼いたり酒を作ったり、宿を営む男たちのように見える……。
多種多様な、つまりバラッバラの武装男たちに囲まれたアデムは、
真っ白なイモムシに似た姿でうなずいた。
「詳細は、あとから説明する、ロウ=レイ。
大ガラス様、しばらく、そのお姿にてご辛抱ください」
ばさり、とロウの肩で守護魔獣の羽根音が鳴った。
「不便じゃのう……で、アデム。この連中は、なにものだ?」
「……わが、騎士団にございます」
アデムの言葉に、周囲にいた男たちが一斉に膝をついた。
「我ら『うるわしのアデム』親衛隊! 以後、お見知りおきを!」
「はあ???」
ロウ=レイが、事態を把握しきれずに口を開ける。
大ガラスは丁寧に毛づくろいをはじめながら言った。
「またまた、めんどうなものをこしらえたのう、アデムよ……」
クルティカが『聖なる森』で嵐に遭遇していたころ。
もと蒼天騎士、ロウ=レイはようやくホツェル街道のアデムのもとへたどり着いた。
「……アデムさまっ! ご無事ですかっ!??」
ロウ=レイは栗色の髪を振り乱して、街道沿いの建物へ駆け寄る。
その肩には蒼天騎士団の守護魔獣、大ガラスが乗っていた。巨大な姿を小さく変えていた。
ロウは、深夜にもかかわらず建物の扉をガンガンとたたき、大声で叫んだ。
「アデム様っ、いらっしゃいますか!? 夜遅くにごめんなさい!
予想以上に遅くなったのは、
大ガラス様が、場所を覚えていなかったからで……っ」
「……何事も、人のせいにするのは感心せぬのう、ロウ=レイよ」
「だって、本当でしょう? 大ガラス様が目的地を4回も間違えるから……」
「そのような些細な事は、忘れてしまうものです」
「瀕死のアデム様をひとりで残していった場所は『些細』じゃないでしょうがっ!」
「……そう、瀕死でもなかったが……」
漆黒の大ガラスがうそぶくのを聞きながら、ロウ=レイは必死に扉を叩いた。
「すいません、すいません!! 開けてください―!!
あの、蒼天騎士です……あ、もと騎士です……
騎士団長のアデム様のもと……およ? これも『もと』騎士団長よね……」
「いう事はまとめておきなさい、ロウ=レイ」
「はあ、でもややこしいんですよ。廃騎士が、元騎士団長を助けに来たっていうの」
「助けが必要かどうか、アデムに確かめた方がいい」
「なんでそう冷たいんですか、大ガラス様は!
騎士団長と守護魔獣は、つねに一心同体でしょう!?」
「……それほどの関係には見えなかったがのう、あの連中も……」
「あの連中? 大ガラス様、大変な時にワケわかんないことを言わないでくださいよ!」
ロウ=レイが大ガラスに怒鳴った時、ぎいいい……と、扉が開いた。
覗き込むと、内部には鈍く光る武器がずらりと並べられている。
「……街道の、武具屋?」
ロウがつぶやく。肩にとまった大ガラスも赤い目をぎょろぎょろさせ、
「ほお、武具屋に拾われるとは、さすがアデム」
「拾われる……? まさか大ガラス様、瀕死のアデム団長を
街道沿いに放り出していったんじゃないでしょうね?」
「そっと、置いておいたのです」
「どこが違うんです?? もー! これだから魔獣は信用できない!」
「守護魔獣に対して何という口の利き方をするのだ、ロウ=レイよ。
若いもんはこれだから……」
「……しゅごまじゅう? 若いもん……? あんたら、いったい何者だ?」
がしゃっ、と重い金属がこすれあう音がした。
ロウ=レイがとっさに戦闘態勢に入る。
「何者か……と問う前に、名乗るのが礼儀よ」
がしゃり、がしゃりと重低音を響かせて、男が近づいてくる音がする。
ロウ=レイはシャツの隙間に隠してあったレイピアをつかみだした。
「……とまれ。それ以上近づくと、あたしの間合いに入るわよ……」
しゃっ、とロウの手から雷光のようなレイピアがさや走り、構えられた。
だが次の瞬間、するどい声が、
「ロウ=レイ! わが恩人たちに対して、何という無礼を働くか!」
「……おんじん、たち? そして……アデム団長、いったいどうしてそんな恰好に……!?」
そこには、純白の布でぐるぐる巻きにされたアデムが、見事な黒髪を揺らめかせて立っていた。
……無事である、見た感じは。
だが、無事ではない、とロウ=レイは思った。
純白に包まれ……いや、包まれすぎて身動きもできなくなっているアデムは、
まるで伝説の『聖なる森の処女』だ。
やや布に包まれすぎて、孵化直前のサナギか、イモムシに似ているが……。
そして白いサナギの周りには、十人ばかりの男たちが黒光りする武器を手に並んでいた。
槍、斧、短剣、重こんぼう、弓矢……。
いずれも騎士が持つにはやや小さい気がするが、立派な武器だ。
武器だけではない、金属や革の鎧も身に着けている。外見は騎士のようだ。
ただ、武器も鎧もバラバラで統一感がない。
さらに言えば、アデムの周りにいる全員がバラバラなかんじだ。
まるで昨日まで、街道沿いで肉を焼いたり酒を作ったり、宿を営む男たちのように見える……。
多種多様な、つまりバラッバラの武装男たちに囲まれたアデムは、
真っ白なイモムシに似た姿でうなずいた。
「詳細は、あとから説明する、ロウ=レイ。
大ガラス様、しばらく、そのお姿にてご辛抱ください」
ばさり、とロウの肩で守護魔獣の羽根音が鳴った。
「不便じゃのう……で、アデム。この連中は、なにものだ?」
「……わが、騎士団にございます」
アデムの言葉に、周囲にいた男たちが一斉に膝をついた。
「我ら『うるわしのアデム』親衛隊! 以後、お見知りおきを!」
「はあ???」
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