幸せな人生を目指して

える

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第3章 魔法の世界

7 謎の少女

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街の探索を切り上げて荷物を預けた宿にユキと二人で戻ってきたときにはもう日が暮れようとしていた。

随分と長い時間探索に夢中になってしまっていたみたい。

でも凄く楽しかったな。それにちょうどルカ達にお土産も買うことが出来たし。

「あら、楽しそうね、エル」

「はい、楽しかったですよ。ユキは?」

「そうね、それなりには楽しめたかしらね」

「もう、素直じゃないんですから」

そんな会話をして宿に入ろうとしたその時だった。


……っ!

……えっ!?

一瞬耳を疑ったけど、今誰かの悲鳴のようなか細い声が聞こえたような……。

「今のは……、悲鳴?」

気のせいかと思って見るとユキも聞こえたようで、驚いた表情をしていた。

それを見てやっぱり勘違いではないと言う事に動揺してしまう。

それでも気が付いた時には足が動いていた。

「ちょっとエルっ!待ちなさい、一人では危険よっ!」

背中からユキの慌てた声が響き、それに振り返って私は叫んだ。

「何があったのか確かめてきます!ユキはこのことを知らせてくださいっ!」

「エルっ!」

呼び止める声が聞こえたけど今度こそ振り返らずに、目の前にうっそうと茂る不気味な森の中に足を踏み入れていった。



流石に一人では行こうとは思わないけど、今は心強い付き添いが居るからね。

それに誰かが助けを求めているかもしれないのにじっとなんてしてられない!

「エルちゃん、気を付けて。そろそろ近いわよ」

「はいっ」

走っている私と並行して宙を飛んでいるウルが真剣な面持ちでそう言った。

それに私も気を引き締めて前を見据え、無事であることを祈りながら先を急いで走った。




この辺りのはず……なんだけど……。

私は辺りに注意しながら誰かが助けを求めていただろう場所へと駆けつけた。

周りは木で覆われ、足元は草木が行く手を阻むように生え、日が落ちているのも相まって不気味なほど薄暗い。

寒気を感じながらも辺りを見回すとある場所に目が留まる。

そして……。

「あっ!」

目の先に不自然に開けた場所があり、いつの間にか夜になっていたのか月明かりがその場所だけ差し込んでいて明るい。
そこに樹齢百年は越えるだろうと思われる太く大きな樹木がそびえ立っていてその幹のところに人影があった。

ゆっくりと近づいて見ると真っ黒なマントの人物が蹲っているのが分かる。

マントを頭から被っているから顔は見えない。

でも見覚えがあるような……。



「あなた大丈夫?何があったの?」

そっと近づき驚かせないように優しく話し掛けてみる。

するとゆっくりと顔を上げると口を開いた。

「急に知らない男の人達が……」

未だに顔は見えないけど、声からして女の子ね。女の子は震えた声で呟き、ある方向を震えながら指さす。

指し示す先を見た瞬間――

「エルちゃんっ!」

ウルの叫び声がして、それと同時に数人の足音が聞こえてきて、音の感じからして走っているみたい。

その足音はどんどん私達に近づいてくる。


ここでは逃げ場がない……。もしこの女の子の言っていた男達だとしたら戦わないといけないかもしれない。

そう思い私は咄嗟に女の子を背中に隠し守りの体制をして、いつでも魔法を放てるように構えた。

それから程なくして足音がすぐそこまで来て、暗闇から数人の男達が現れる。

もう見た目で悪い人と言うのが分かる。男達はみんな何かしらの武器を持っていた。

悪者確定!そうと決まれば取る行動は決まっている。

「デバステート・ウィンドっ!」

すぐに魔法を展開させて威力強めの突風を放った。

二人の男がそれに吹き飛ばされ、しかし他の男達には寸でのところで攻撃をかわされてしまう。

「リストレイント」

次いで身動きが取れないようにする拘束の魔法を唱える。

さっき吹き飛ばされて伸びている男二人に魔法で作り出した拘束具を付け動けないようにしておく。

「アクア・カノン・アクティベートっ」

そしてすぐに次の魔法も展開させる。

今度は水属性の魔法。圧縮した水の玉で攻撃するもの。それが真っすぐに発射され、何人かに当たり倒れていく。

「エルちゃん後は私に任せて!」

そう言ったウルは光を纏いながら私の前に躍り出ていく。

「ウルっ」

「大丈夫よ。すぐに終わらせるわ」

そう言った瞬間、目の前が光だし、眩しさのあまり両目を手で覆って耐える。

これはウルと初めて会った時の……。あの時もこんな光を見た気がする。

暫くめをぎゅっと閉じていると地面が揺れだし、叫び声が聞こえてくる。

それは恐らく襲ってきた男達の声。

何が起こっているのかは分からないけどウルの攻撃にようやく倒れてくれたようね。


そう思っていたら眩しい光が消え、ゆっくりと目を開けて状況を確認した。

「終わったわよ」

「ウル、何をしたんですか?」

「内緒」

そう言って人差し指を口に当てる動作をしたウル。


目の前には目を疑う光景が広がっていた。地面がひび割れて、所々木々も倒れているし、まるで地震でもあったかのような惨状だった。

それに放心しているとウルから声が掛けられる。

「怪我はないようね。その後ろに居る子は大丈夫?」

その声で我に返った私は後ろで匿っていた女の子へ目を向けた。

「大丈夫ですか?怪我はない?」

言いながら女の子に手を差し伸べたとき、不意に強い風が吹き、顔を覆っていたフードが取れ驚いた表情をした女の子と目が合った。

……っ

容姿に私も驚いた。見覚えがあると思っていたけど、その子はさっき街で見たあのフードの女の子だった。

ぶつかったときに一瞬だけ見えた緑の髪と瞳。まさに目の前にいる女の子と同じ。

それにあの時は気が付かなかったけど、もう片方の瞳はオレンジ色をしていた。

右がオレンジ、左が緑のオッドアイと呼ばれる目。

その珍しい容姿に目が離せないでいると、女の子は私の視線から逃れるように俯いてしまった。

そんな女の子に対して、しゃがみこみ話し掛けようとした。


しかしその時急な殺気を感じ、慌てて振り返ると――

いつの間に居たのかさっきの男達の仲間なのか一人の男が短剣を持ち、私目掛けて振り下ろそうとしていた。

「エルちゃんっ!」

ウルの焦った声が聞こえたけど私は金縛りにあったようにその場から動けない。

咄嗟の不意打ちに成すすべがなく、その光景がスローモーションに見え、私死んじゃうのかなとそう思った次の瞬間――。


「サンダーボルト」

どこかから呪文を唱える声が響き、目の前を一筋の稲妻が勢いよく落ちてきた。

それは目の前の男に当たり、感電したように痙攣しているかと思ったら後ろに倒れた。

もしかして死んでしまったの……。

不安な気持ちで倒れている男を見てみるとちゃんと息があり、それに一先ずホッとした。

「それにしても、今のって……」

凄い威力、そして勢いに圧倒されたけど放たれた瞬間確かに感じた、感じたことのない魔力の感覚。

一瞬だったけど鳥肌が立った。

「一体何だったのでしょうか……、あの、ウル……。ウル?」

ウルなら何か分かるかなと思い話しかけるけど返事がなく、不思議に思い隣を見上げると、

「驚いたわ、まさか貴方だったなんてね」

遠くを見上げてそう呟いた。

「ウル?」

ウルと同じく私も見上げて見ると、そこには誰かの姿が月明かりに照らされて浮かび上がっていた。

気が付かなかったけど奥に大きな岩があり、その上にその誰かが立っている。


ツインテールの紅い髪と瞳をした少女が私達を見下ろし、口元には笑みを浮かべていた。


月明かりに照らされた紅い髪と瞳がまるで真っ赤に染まった血のようだった。
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