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第10章 アマビリスの乙女
25 戦いの果て
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なんてタイミング!
この土壇場でウルが登場となれば一気に形勢逆転出来る…!
「ウル!」
「ええ、分かっているわ、エルちゃん!」
この場に彼女がいるのなら、やる事は一つ。
私のやろうとしている事にウルも気づいている様子だし、今度こそ一気に方を付ける。
「全く…。俺がサポートする。気にせず行け」
「レヴィ君……。ありがとうございます!」
その声に振り返ると、ニヤリと悪戯な笑みを浮かべるレヴィ君がいて。
でもサポートをレヴィ君が担ってくれるなんて、何て頼もしい事だろうか。
これで彼の言う通り、本当に周りを気にせずに戦いに集中出来ると言うもの。
役者は揃った。もうこの争いも幕引きの時間。
「姉様、フランさん!一度下がって下さい。
それと私が合図を送ったら、もう一度先程の魔法で攻撃をお願いします!」
私は前方にいる二人に駆け寄りながらも出来るだけ簡潔に指示、もといお願いをした。
「分かったわ」
「了解した」
二人は不思議そうな顔をするが、それでも何も言わずに直ぐに了承してくれて。
状況が状況なだけに、詳しく説明をしている暇もない為、二人の判断の速さ聡明さにはいつも助けられていた。
…今回も助かりました。いつも説明もなしに無茶ばかり言ってごめんなさい…。
『では行きますよ、ウル』
『ええ。準備万端いつでも大丈夫よ、エルちゃん』
ウルは精霊だ。
レヴィ君の時とは変わり姉様達、特にフランさんに配慮して、今その輝かしい姿はなりを潜め、彼に気づかれないよう気を遣ってくれている。
この際役立つのが、今行った周りには聞こえないように会話ができる念話のようなもの。
…今更ながらこの念話でお互いに会話が出来るのは本当に便利だよね。合図も出来るし。
思わずウルとの念話の便利性に感心していると、その彼女が静かに告げる。
『――鎮まりなさい、人々に仇をなす者よ』
ウルは小さな両手を天に掲げる。
するとまるで天からの恵みと言わんばかりの眩い光が、宙に留まっていた瘴気目掛けて、さんさんと降り注いでいく。
あれは浄化の光。瘴気とは反する力。瘴気に対抗するのに一番効果のある浄化の力だ。
何度も言うがウルは光の上位精霊なのだ。
その幼い容姿でついその事を忘れそうになるが、秘めた力は強大であり、通常の精霊よりも力の強い精霊だ。
…しかしこの威力、もしかして今までずっと力を溜めに溜め、温存してくれていたのかも?
凄い力という事は分かるが眩し過ぎて直視出来ない。それはこの場にいる全員も同じようで。
フランさんに至ってはいきなりの事過ぎて、一体何が起こっているのかも理解出来ていないだろうし。
…更に混乱させてしまって申し訳ない。
説明する暇がなかったとは言え、そう思わずにはいられなかった。
時間が経つにつれ、徐々に浄化の光が淡く、そして最後には空気に解けて消えて行く。
そうして残ったものは、先程の瘴気の塊の半分程の大きさになってしまった弱々しい瘴気だけ。
ウルの浄化を受けても尚、その形を保っている事には驚いたが、しかしそれ程にこの瘴気も恨みや怒りと言った、負のオーラが凝縮されたものなのだろうという事は察しがつく。
ただもう瘴気にはこちらを攻撃するだけの力は残っていないはずだ。
「姉様、フランさん、今です!」
打ち合わせ通り私は二人に合図を送った。それを受け取り二人が一歩前に踊り出る。
その後は怒涛の展開だった。
先程と同じくフランさんが炎での先制攻撃をし、次いで姉様が氷結魔法を繰り出し、今度こそ瘴気の塊を全て凍らせる事に成功。凍り付いた瘴気は力を失いそのまま地面に落下し、周囲に散っていた小さな瘴気までもが空気中に分散して行き、やがては影も形もなく消失していったのだった。
瘴気の力が尽き、その場には待ち焦がれた静寂が訪れる。
「やった…、やりましたよ!姉様!フランさん!レヴィ君!」
漸く我に返った私は衝動のままに叫ぶ。色々な感情が入り乱れながら。
「終わった、のね。漸く……」
「そのようだね…」
安堵からか、ふっと力が抜けてしまった姉様と、それを支えるように肩を抱くフランさん。
「はあ、やっと終わったな。まあ最後は俺の力がなくても何とかなったようだが」
レヴィ君だけは相変わらず平常運転のようで。
『ウルも、来てくれて、力を貸してくれて、本当にありがとうございました』
皆に聞こえないように心の中でひっそりと、今回の功労者でもある彼女にも感謝の意を惜しみなく告げる。
『うふふ。エルちゃんの役に立てて光栄だわ』
未だ姿は見えないものの楽し気な、しかし大人びたような返事が返ってきて、その時緊張していた肩の力がふっと抜けるのをふと感じたのだった。
この土壇場でウルが登場となれば一気に形勢逆転出来る…!
「ウル!」
「ええ、分かっているわ、エルちゃん!」
この場に彼女がいるのなら、やる事は一つ。
私のやろうとしている事にウルも気づいている様子だし、今度こそ一気に方を付ける。
「全く…。俺がサポートする。気にせず行け」
「レヴィ君……。ありがとうございます!」
その声に振り返ると、ニヤリと悪戯な笑みを浮かべるレヴィ君がいて。
でもサポートをレヴィ君が担ってくれるなんて、何て頼もしい事だろうか。
これで彼の言う通り、本当に周りを気にせずに戦いに集中出来ると言うもの。
役者は揃った。もうこの争いも幕引きの時間。
「姉様、フランさん!一度下がって下さい。
それと私が合図を送ったら、もう一度先程の魔法で攻撃をお願いします!」
私は前方にいる二人に駆け寄りながらも出来るだけ簡潔に指示、もといお願いをした。
「分かったわ」
「了解した」
二人は不思議そうな顔をするが、それでも何も言わずに直ぐに了承してくれて。
状況が状況なだけに、詳しく説明をしている暇もない為、二人の判断の速さ聡明さにはいつも助けられていた。
…今回も助かりました。いつも説明もなしに無茶ばかり言ってごめんなさい…。
『では行きますよ、ウル』
『ええ。準備万端いつでも大丈夫よ、エルちゃん』
ウルは精霊だ。
レヴィ君の時とは変わり姉様達、特にフランさんに配慮して、今その輝かしい姿はなりを潜め、彼に気づかれないよう気を遣ってくれている。
この際役立つのが、今行った周りには聞こえないように会話ができる念話のようなもの。
…今更ながらこの念話でお互いに会話が出来るのは本当に便利だよね。合図も出来るし。
思わずウルとの念話の便利性に感心していると、その彼女が静かに告げる。
『――鎮まりなさい、人々に仇をなす者よ』
ウルは小さな両手を天に掲げる。
するとまるで天からの恵みと言わんばかりの眩い光が、宙に留まっていた瘴気目掛けて、さんさんと降り注いでいく。
あれは浄化の光。瘴気とは反する力。瘴気に対抗するのに一番効果のある浄化の力だ。
何度も言うがウルは光の上位精霊なのだ。
その幼い容姿でついその事を忘れそうになるが、秘めた力は強大であり、通常の精霊よりも力の強い精霊だ。
…しかしこの威力、もしかして今までずっと力を溜めに溜め、温存してくれていたのかも?
凄い力という事は分かるが眩し過ぎて直視出来ない。それはこの場にいる全員も同じようで。
フランさんに至ってはいきなりの事過ぎて、一体何が起こっているのかも理解出来ていないだろうし。
…更に混乱させてしまって申し訳ない。
説明する暇がなかったとは言え、そう思わずにはいられなかった。
時間が経つにつれ、徐々に浄化の光が淡く、そして最後には空気に解けて消えて行く。
そうして残ったものは、先程の瘴気の塊の半分程の大きさになってしまった弱々しい瘴気だけ。
ウルの浄化を受けても尚、その形を保っている事には驚いたが、しかしそれ程にこの瘴気も恨みや怒りと言った、負のオーラが凝縮されたものなのだろうという事は察しがつく。
ただもう瘴気にはこちらを攻撃するだけの力は残っていないはずだ。
「姉様、フランさん、今です!」
打ち合わせ通り私は二人に合図を送った。それを受け取り二人が一歩前に踊り出る。
その後は怒涛の展開だった。
先程と同じくフランさんが炎での先制攻撃をし、次いで姉様が氷結魔法を繰り出し、今度こそ瘴気の塊を全て凍らせる事に成功。凍り付いた瘴気は力を失いそのまま地面に落下し、周囲に散っていた小さな瘴気までもが空気中に分散して行き、やがては影も形もなく消失していったのだった。
瘴気の力が尽き、その場には待ち焦がれた静寂が訪れる。
「やった…、やりましたよ!姉様!フランさん!レヴィ君!」
漸く我に返った私は衝動のままに叫ぶ。色々な感情が入り乱れながら。
「終わった、のね。漸く……」
「そのようだね…」
安堵からか、ふっと力が抜けてしまった姉様と、それを支えるように肩を抱くフランさん。
「はあ、やっと終わったな。まあ最後は俺の力がなくても何とかなったようだが」
レヴィ君だけは相変わらず平常運転のようで。
『ウルも、来てくれて、力を貸してくれて、本当にありがとうございました』
皆に聞こえないように心の中でひっそりと、今回の功労者でもある彼女にも感謝の意を惜しみなく告げる。
『うふふ。エルちゃんの役に立てて光栄だわ』
未だ姿は見えないものの楽し気な、しかし大人びたような返事が返ってきて、その時緊張していた肩の力がふっと抜けるのをふと感じたのだった。
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