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冷徹な公爵様は俺様なイケメンでした。
しおりを挟むがっくりと項垂れるように崩れるレミリア。
コーネリアス様は放心状態のまま、ただただ反射的に彼女を抱きとめた。
一気に魔力を放出して貧血状態みたいになったあたしも、ふらっと倒れそうになったところを。
背後から抱きとめてくれるあたたかい手。
「大丈夫か? セリーナ」
耳元でそう優しく聞こえるオルファリド様の低音ボイス。
それは、冷徹とか氷のようだとかそんなんじゃない、すごく気持ちのいい声で。
どき! どきどきどき!
心臓が早鐘のようになっているのがわかる。
「ええ。わたくしは大丈夫です。オルファリド様」
あたしは真っ赤になりながらそう答えるのが精一杯だった。
「よくやった、セリーナ。君のおかげでこの国は魔に侵されることなく護られた」
はう。
「しかし君があの世界を救った救世主、古の大聖女アマリリス様の生まれ変わりだったとはな。やはり興味深い」
え?
っていうか大聖女アマリリス様って言ったら、身を挺して厄災から世界を救ったというあの?
あたしがその生まれ変わりってそんなの嘘!
「ああ。君が欲しい。コーネリアスが正気に戻ったとしてももう返したくはないな。どうだ? セリーナ嬢。わたしと結婚してくれないか?」
「え、ちょっと待ってくださいオルファリド様。いきなりそんな!」
「わたしは本気だ。愛してるよセリーナ」
ああ。
背中から抱きしめられ、耳元でそんなふうに囁くオルファリド様に。
一瞬頷きそうになったけど、でも。
ああもう。
「揶揄わないでください!」
あたしは真っ赤になって涙目でそう答えるのが精一杯だった。
⭐︎⭐︎⭐︎
全てが片付いた後。
魔が払われ正気に戻ったレミリアからは全ての記憶が消えていた。
普通のおとなしい男爵令嬢に戻った彼女。
まあ彼女も犠牲者だってことがわかり、特に罪に問われるということはなかった。
あたしもそんなことは望んでいなかったしまあよかったよね。
ただ、彼女、王子との恋も記憶から消えちゃって、かなり困惑しているらしい。
しょうがないか。
コーネリアス殿下は起こった出来事の記憶はちゃんと残っていて、かなりの自己嫌悪に陥ったらしい。
王族の、それも王位継承者一位の身で、淫魔にたぶらかされたのだというのはやっぱりかなり精神的に堪えたらしいの。
ただ、こうなったからにはちゃんと責任取ってレミリアと結婚するのだって、あたしにそう謝ってくれた。
あたしたちの間には恋は無かった。
でも、あんなふうに辱めたのは事実で、それはもうどれだけ謝罪しても埋めることはできないから、と。
真摯に謝罪してくれたのだった。
あたしはそれを了承し。
改めてあたしと殿下の婚約は解消したのだった。
周囲の人たちも操られていただけなのがわかり、あたしの名誉は回復された。
お父様も納得してくれたけど。
でも。
あたしはそのまま魔法省で働くことになった。
っていうか、オルファリド公爵様があたしを離してくれなかった。
あたしは長官付きの秘書って立場に配属され、今も。
「愛してるよセリーナ」
と、そんなセリフが毎日の朝の挨拶となっている。
「はいはいわかりました。じゃぁお仕事しましょうね」
もうそんなふうに邪険にあしらうあたしに。
時々背中からふっと、
「だから、俺のものになれよ」
と囁く彼の低音ボイス。
もう!
冷徹公爵だなんて何かの間違いなんだ。
俺様公爵って言い換えた方がいいかも!
と、そう心の中で悪態をついて。
でもね、なぜか憎めない自分がいるのも感じてた。
それに。
あたしには貴族の深窓の令嬢でいるよりもこうして魔法省でオルファリド様と働いている方が性に合ってるかも。
そんなふうにも思うのです。
ふふ。
いつか根負けして彼の奥様って立場に収まる時が来るのかもだけど、それまではもう少しこんな生活を楽しみたい。
そんなふうに思いながら窓の外を眺めると。
真っ青なあおい空に、真っ白な綺麗な月がぽっかりと浮かんでいた。
FIN
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